コロナ禍の遊び、どう付き合う? 危機的状況における遊びのガイドを保育士が読み解いてみた
休校・休園・外出自粛によって子どもたちが家にいる日々が続きます。必然的に遊びに付き合う時間も増えてきますね。コロナ禍では「何をしてどうやって遊べばいいの?」という問いに答えたガイドブックを、絶賛乳幼児子育て中、保育士でもある筆者が読み解いてみました。
相原 里紗
保育士・のあそびっこプロジェクト 主宰
早稲田大学国際教養学部卒。(株)オールアバウトを経て国家試験で保育士に。親子×のあそび×地域を軸とした「のあそびっこプロジェクト」他、親子向けイベントを多数企画・運営している。0歳、2歳の男子育児に奮闘中。
毎日必死に子どもと過ごすコロナ禍24時!
新型コロナウィルスによって自宅での生活が続いています。
保育園にいた子ども達がずっと家にいる。
三食おやつに増える家事。
さらに、正解がわかりにくい「命を守る行動」を日々選択し続ける生活。
これに仕事が絡んできてカオスな毎日です。修行でしょうか。
緊急事態宣言が解除されても当分は「with コロナ」。
まだまだ日常に戻るには時間がかかりそうです。
一緒にいる時間が増える中で、ふとした瞬間に子どもの「遊び」について迷うことが増えてきました。
周りの父・母からも「遊んでばかりで宿題が進まない」「公園で遊ぶのってどうなの?」
「在宅ワークでYouTube漬けにするしかないけど、気になる…」という声がちらほら聞こえてきます。
そんな中「コロナ中の遊び」の指針になるガイドが発行されました。
「IPA 危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のためのガイド」は救世主になるか
画像引用:IPA Japan「危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のためのガイド」
その名も『危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のためのガイド』
発行しているのは「IPA(International Play Association:子どもの遊ぶ権利のための国際協会)」
子どもの権利条約にも明記されている、子どもの「遊ぶ権利」を保証するために活動をしている国際機関です。
専門家を中心にした資料なので、そのままの順序で読むには少し難しいので、
並べ替えて勝手にサブタイトルをつけてみました。番号は元の記事の順番です。
《はじめに》
(1)危機的状況における遊ぶことの重要性
《遊びの「困った」へのアドバイス》
(9)スクリーンタイムと遊び…よりよいバランスを見つけるには
(5)家でのうるさい、または破壊的に見える遊びに対応する
(4)喪失、病気、そして死といったつらいテーマを含む遊び
《遊び方のガイド》
(10)家の外で遊べないときの遊び
(6)家での「はちゃめちゃ遊び」
(7)家まわりで見つかる遊びの素材
(8)外で過ごす時間を最大限に活かそう
《子どもの遊びのサポートの仕方》
(2)危機的状況の間の子どもの遊びをサポートする
(3)子どもの遊びについて考えてみよう
保育士モードで読むと進めるけど、母モードだとつらい…
子どもたちのいる平日の日中に読むのはなおさら難しいのですが、大切なことがぎっしり詰まっています。
そこで、IPA日本支部のみなさんにご快諾いただき、
独断と偏見に満ち溢れた「ここが好き!役に立ちそう!」と思った項目をベスト5にまとめてみました。
参考:IPA Japan「危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のためのガイド」
5位:スクリーンタイムと遊び…よりよいバランスを見つけるには
ゲーム・パソコン・スマホなどでの「スクリーンタイム」は、気軽に外に出られない状況下で待ったなしの課題ではないでしょうか。特に在宅ワークをしている家庭では、仕事に集中する時間を確保すべく必然的に増えているはずです。
ガイドでは、スクリーンだからできることとして“笑ったり、楽しんだりする”“すべての集中力を使って、ゲームに夢中になる”といったことをメリットとしてあげています。「大人も一緒にゲームするのもよいかも」とも。
もちろんバランスをとることも大事ですが、この機会にいい付き合い方を見つけられそうな気がしてきます。
4位:外で過ごす時間を最大限に活かそう
休校・休園が始まった頃に公園で遊ぶことへの賛否が出たり公園の遊具が閉鎖されたり、「不要不急の外出自粛」と言われてしまうと外遊びにも気を使う風潮がありますよね。
そうは言っても、我が家のようにじっとしていられない乳幼児がいたり、子どもの運動不足を考えると外で遊ばないわけにはいきません。
外で過ごすことは“こころとからだの健康によいもの”とガイドで言い切ってくれています。
判断に迷うことが多いですが、国際機関に「屋外に出よう」と言及してもらえることで、外遊びがぐっとしやすい気分になるのは、私だけでしょうか。地域の情報とあわせながら、散歩などをしていけたらと思います。
3位:喪失、病気、そして死といったつらいテーマを含む遊び
東日本大震災のとき、被災地を中心に津波ごっこをしたり遊びの中で近親者の死をふと思い出して口に出したりするなど、震災をテーマにした遊びが多く見られました。
今回のコロナパンデミックでも、鬼ごっこの鬼がコロナになったり、砂場の砂で「消毒」したり、「密です」と歌ったりと、子どもたちはそれぞれの方法でコロナを「遊んで」いるようです。
ガイドによると“遊びは、子どもたちが困難や恐怖、混乱に対処する力を発達させる重要な方法”で、一見不謹慎だったりつらいテーマが含まれる遊びだったりしてもそれは必要で自然なこと。
遊びを観察することで、子ども自身が危機的状況とどう向き合っているのか、どう認識しているのかを知るヒントにもなるそうです。
台風・大雨・洪水・土砂災害・地震・津波・火山噴火。
「緊急事態」になると、子どもの遊ぶ環境が制限されて見落とされがちですが、子どもにとっては遊びが治癒的な役割をもっていることを覚えておきたいですね。
たとえ遊びすぎて宿題が滞っていたとしても、それは今の状況を整理するため…かも、しれません!
2位:家の外で遊べないときの遊び
“子どもは、みなさんがいつもパーフェクトな親であることを必要とはしていません。子どもたちが必要としているのは、みなさんが愛してくれて、見守ってくれていると感じることです。”
家で子どもがつまらなさそうにしていてもいい。親がリラックスしているときでも、機嫌良く遊んでいたらそのまま遊ばせておいていい。“いっぱい遊んだからちょっと休憩するね”と言ってもいいそうです。
遊びのガイドに「遊ばなくてもいい」って言ってもらえるなんて!
「ステイホーム」と言われて久しく毎日必死でがんばっているわけですが、誰がこんな優しい言葉をかけてくれたでしょうか。大手をふるって、遊びを「見守る」ことを心がけようと思います。
1位:子どもの遊びについて考えてみよう
栄えある第一位は「子どもの遊びについて考えてみよう」です。
“子どもの遊び方を理解するよい機会になります。それが結果的には、お互いにうまくいく日常生活を送ることにつながります。”というのは、私自身子どもが生まれてからの日々の中で強く感じていることです。
「どういう遊びが好きかな?」「何に興味があるかな?」「どういう道具やスペースを準備したらいいかな?」と観察することで子どもの遊びが充実し、親がやらなければならないことが減るんですよね。
意外と難しい遊びへの参加の仕方や注意点も書かれています。
コロナに限らず、子どもとの生活を楽しくラクにするために大切な考え方がぎゅっと詰まっているこの項目。一緒にいる時間が長い今だからこそ、読んで実践してみてほしいと思うのは、母としてというよりは“保育士として”かもしれません。
資料はこちらからダウンロードできます。
危機的状況における遊び:子どものくらしに関わる人のガイド
10項目あるので、それぞれ「ここが好き!」「このページは面白かった」「どういうことだろう?」と思うページがあるはず!
お気に入りのページを見つけてくださいね。
いかがでしたか?「遊ぶことは、子どもが自分のこころとうまく付き合い、すべてのことは心配することなく、大丈夫になっていくという感覚を保つことにつながります。」まずは読みやすいページを開いてみてください。遊びを理解することで、私たち大人も少し気持ちがラクになるかもしれませんよ。
『IPA 危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のためのガイド』(C)IPA April, 2020
文:テレサ‧キャシー、デザイン:ヴォテペドロ
日本語版発行:IPA 日本支部、翻訳:嶋村 仁志 堀田 奈都希、レイアウト:矢野 真利那