【小児科医リレーエッセイ 11】 小児科は医師もスタッフも身近な相談役。なんでも相談をしてみて。
小児科には診察室や待合室、また電話などでお母さん・お父さんからいろいろな声が届くそうです。「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から子育てに向き合っているお母さん・お父さんへのメッセージをお届けしている連載の第11回は、千葉県・おおた小児科で看護師長を務める太田まり子先生のエッセイです。
小児科受診の際には、医師だけでなく小児科スタッフとも話してみませんか
診察室で医師の診察の時にすべてを伝えることができ、心配事もすべて答えてもらってお帰りになるお母さん・お父さん、患者さんはあまり多くありません。
とくに、混んでいて待っている人がたくさんいたり、体調が悪いお子さんが機嫌悪くて大泣きしたり、反対にはしゃいでじっとしていられなかったり、連れてきた兄弟姉妹がけんかし始めたり・・・などのことがあると、ゆっくり医師の説明が聞けないことも多いと思います。
そんな時にはぜひクリニックの看護師や事務スタッフなどに聞いてみてください。医師の説明ではわからなかったことや困ったこと、日ごろ気になっていることや心配事をちょっと話してみてください。スタッフがお力になれることがあるかもしれません。
また、お話いただいた中にはいろいろなヒントがあることもあり、その後の正確な診断や個別の対応、よりわかりやすい説明につなげることができます。
困ったときや心配なときは、追い詰められる前に相談してください
うちのクリニックで、スタッフへの質問や相談事でよく聞かれることがあります。そんな話題をいくつか紹介します。
【その1】この症状で受診したほうがいいですか?
これは新型コロナ感染症が流行してからさらに増えている質問ですが、実はそれ以前から電話でのお問い合わせの中でもかなり多いものです。
これに対する答えはほとんどが「ご心配でしたら受診してください」となります。
そして、その受診先と受診のタイミングの相談にのっています。患者さんの月齢・年齢、症状、経緯、緊急性、家庭環境、保護者の様子、住んでいる地域の医療事情、等を総合してお伝えしています。
たとえば、2カ月の乳児と2才の幼児の発熱に対しての危機感はまったく違います。うちの小児科で対応可能な症状や処置についてもそれぞれ違いますし、小児科ではなく先にほかの科を受診したほうがいい症状や日時もあります。相談がきた時間によっては夜間救急や休日診療の紹介がいい場合もあります。
これらはすべてケース・バイ・ケースで、判断するための知識と情報を多めに持っているのが小児科であり、生活に密着して相談にのれるのがスタッフです。
困った時やどうしても心配な時は、あまり追い詰められないうちに相談してほしいと思います。
【その2】ワクチンのスケジュールは? このワクチンは打ったほうがいいですか?など
ワクチン関連の質問も多く寄せられます。ここ数年で日本のワクチン状況はとてもよくなり、(多少の混乱があっても)ほかの先進国と同じぐらいになりました。
生後2カ月になったらすぐに開始し、複数のワクチンを同時に接種するというスケジュールも浸透してきていると感じます。2020年10月からはロタワクチンも定期接種になる予定です。子どものワクチンは小児科で最新のスケジュールを組み、最適な時期に接種していただきたいと思います。
現在就学前くらいのお子さんは比較的きちんと接種してあることが多いのですが、それよりも大きなお子さんや中学生、高校生、大学生、成人は、情報の不足や混乱により接種しそびれている場合があります。また、ワクチンによっては近年になってから国内認可されたり安定供給できるようになったために接種可能となったものもあります。よくみられる接種がもれている例を紹介します。
・B型肝炎ワクチンの場合/未接種
・おたふくワクチン・水ぼうそうワクチンなどの場合/未接種もしくは1回のみで終了
・日本脳炎ワクチンの場合/年齢相応の回数が終了していない
・子宮頸がんワクチンの場合/接種にふみきれない
などです。また、定期接種以外での追加接種が推奨されている、三種混合(DTP)・不活化ポリオワクチンの未接種や、留学や寮生活をする場合に推奨されている髄膜炎菌ワクチンについては情報を知らない保護者も多いようです。お父さん世代には麻疹風疹混合ワクチンの接種歴の不明が目立ちます。
これらのワクチンについて紹介、説明しスケジューリングすることも小児科スタッフの仕事です。
赤ちゃんの鼻水で受診したときに、小学生のお兄ちゃんも、お父さんのワクチンも相談してみてください。家族、地域、社会が“ワクチンで防げる病気(VPD)はワクチンで防ぐ!”ことが大切です。小児科はそのお手伝いをします。
ネット検索では、あなたやあなたのお子さんにフィットする情報は見つけにくい
長く続く少子化の現代、身近に小さな子どもがいないまま親になり、祖父母や曾祖父母の世代ですら自らの子育て経験は2人程度が多くなり、まわりに頼りになる相談相手もいないことがほとんどです。
わからない事はネットで探せますが、大量の情報のなかどれが正解か指し示すものもなく、どうしても自分が見たいもの、あってほしい方向性、の情報ばかり拾ってしまいがちなようです。
それはポジティブで元気が出る方向だけでなく、ネガティブな方向にも傾きます。ネットや書物、テレビなどの情報はマスに向けた情報であり、あなたのお子さんやあなた個人に向けたものではなく、膨大な情報の中から必要なものを自身で選ぶのはとても大変です。
小児科医、小児科スタッフは子どもの健康を軸に、‟個別”で‟現実的”な子育て全般のお手伝いができるところです。あなたのお子さん自身を診て、抱っこして、あなたの心配や相談にのり、楽しい子育てをサポートしたいと思っています。
あなたのお子さんの小児科を目いっぱい活用してみませんか。
文/太田まり子先生
(おおた小児科 看護師長)
東京女子医科大学看護短期大学卒業。東京女子医科大学付属心臓血圧研究所小児科勤務
子育て期間を経て、2000年に現職。2003年 病児保育室ミルキー併設。外来小児科学会会員。「専業主婦(と呼ばれる立場で)として過ごした10年以上の年月は、現在、仕事にも人間関係にもいきています」。