子どもを叩いたら、どんな影響があるの?
子どもを叱るとき、「つい手が出て叩いてしまった」という経験はありますか?
日本では、「親権者からの体罰禁止」をもりこんだ児童福祉法等の一部を改正する法律により、2020年4月から「親は子どものしつけに際して体罰を加えてはならない」とされました。「子どもを叩く」ことは、いけないこと? 子どもにどんな影響があるのでしょうか?
子育てアドバイザーの長島ともこさんと、共に考えてみましょう。
子どもを叩いたら、どんな影響があるの?
「何度注意しても言うことを聞かないので、お尻を叩いた」
「3歳になったのに子どもの手づかみ食べがひどく、『この、おててがいけないの!』と、手の甲をパチンと叩いた」
「イヤイヤがひどく、カッとなってつい『まったくもう! あなたなんか大嫌い!』とどなってしまった」など…。
子どもを叱るとき、手をあげたり、どなったりしたことはありますか?
「叩くことやどなることは、しつけの一貫である」
「子どもの成長のために、叩くことや大きな声で叱ることは、時と場合に応じて必要である」と思っている人は少なくないでしょう。しかし、親が子どもに対して日常的に叩いたりどなったりすることは、子どもの育ちに有害であることが、脳科学や心理学分野のさまざまな研究により、実証されています。
小児神経科医の友田明美先生の著書『実は危ない! その育児が子どもの脳を変形させる』
(PHP研究所)によると、過度な体罰や叱責は、脳の中で感情や思考のコントロールを司る「前頭前野(ぜんとうぜんや)」、集中力、意思決定などと関係の深い「前帯状回(ぜんたいじょうかい)」の萎縮を引き起こすとされています。
また、東京医科歯科大学の藤原武男教授他の研究によると、親から日常的に体罰を受けていた子どもは、全く受けていなかった子どもに比べ、「落ち着いて話ができない」「がまんができない」「感情をうまく表せない」などの問題行動をおこすリスクが高まるという結果が出ています。
子どもを日常的に叩く、どなる子育ては、子どものすこやかな成長をさまたげてしまうことが多いのです。
「子どもを叩かない」「どならない」と自分で決めることから始めよう
では、叩かない、どならない子育てをするには、どのようなことを心がければよいのでしょう。NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事で、「叩かない子育て」「感情的にならない子育て」をテーマに全国で講演を行う高祖常子さんは、
「まずご自身で、『子どもを叩かない』『どならない』と決めるだけでも、子どもとの向き合い方がグンと変わってきます」といいます。
「子どもを叩くこと、どなることは、子どもに恐怖心や不安感を抱かせてコントロールすることと同じ。100%叩かないというのが難しくても、自分で決めることで少しずつ、叩いたりどなったりせずに子どもと向き合える時間を増やしていきましょう」(高祖さん)。
その上で心に余裕があるときは、以下4つのうちからできることを実践していきましょう。
1 子どもの感じ方や考え方を受け止める
2「叩く」「どなる」のではなく、「ママはあなたが○○○だから悲しいな」など、自分の気持ちを「具体的な言葉」で伝えるよう心がける
3 子どもに方法を考えさせる、アドバイスする
4 子どもが自分で決めて動くのを待つ
自分自身も大切に。失敗はひきずらない
子育て、家事、仕事と大忙しの毎日。どんなに子どもがかわいくても、自分が疲れていたり
体調が悪かったりするとイライラしやすくなり、ついカッとなってどなったり、ときに叩いてしまったりしがちです。
私たち親も、完ぺきではありません。子どもに対し「やっちゃた!」「言いすぎた!」と思ったら変な意地をはらず「さっきは言いすぎたね。ごめんね」と、すぐに謝りましょう。子どもは親にこのように言ってもらえると安心し、許してくれるでしょう。
自分自身がストレスをためすぎず、心が日々ニュートラルな状態でいられるようにするにはどうしたらよいか、改めて考えてみることも大切です。
・パートナーと話し合い、子育てや家事を分担する
・友達にグチを聞いてもらう
・読書や手芸など、自分の好きなことに集中する
・ファミリーサポートや家事代行サービスを利用しその時間を自分の時間にあてる
など、リラックスできる時間を意識して作りましょう。
子どもは、親とは別人格の一人の人間です。幼いながらにプライドもあります。家族の一員としての尊重を忘れず、子どもを上からおさえつけるのでなく、「○○ちゃんはどう思う?」と子どもの気持ちを受け止め、自立への道を応援していきましょう。