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【小児科医リレーエッセイ 12】 忘れないで。小児科医・スタッフは「チーム育児」の一員です

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アジアの両親は両方の頬に彼らの小さな娘にキス。家族の肖像画。
pondsaksit/gettyimages

「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から子育てに向き合っているお母さん・お父さんへお届けしている連載。第12回は、千葉県・つばきこどもクリニックの看護師で、小児アレルギーエデュケーターの資格を持つ宮島環さんです。「感染症とともに生活を送っているママ・パパとすべての子どもたちへ。小児科医・スタッフは皆さんと一緒にお子さんの健康と成長を見守っています」とのメッセージです。

新型コロナは「100年に1度の災害」。災害の歴史は復興の歴史です

ここ数年、日本の各地で地震や台風・豪雨等の災害が起こっています。その度 に、これまで何の疑いもせずにできていたことが突然できなくなり、日常の生活が一瞬にして変わってしまうことを多くの方々が経験されたと思います。
だれが悪いわけでもなく、泣いても怒っても状況は変わらない。かといって、だれにも頼らず(頼れず)個人や家族だけで次々に出てくる不安や孤独と向き合い、解決していくには限界があります。
今回の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行については、「100 年に 1 度の災害」ともいわれています。日本だけでなく世界中の方々が、今まさにこの災害の中で生きています。世界中が連日の報道で、感染症の発生から流行・拡大防止への対策・今後の対応など、用語と共に一から学んでいます。あわせて、過去に起こった感染症の流行や対応について振り返り、得られた教訓や課題を共有しながら、みんなで乗り越えていこうと歩みを進めています。
私たちは(災害や災いのカタチは違っても)これまでにも同じような経験を幾度となく経験しながら、その都度手の中にある貴重な日常の一コマ・ささやかな自由や幸せを手放さず、ゆっくりと日常を取り戻すべく復旧・復興を進めてきています。急いでも道のりは長そうなので、多くの方たちと一緒に知恵を出し合い、助け合いながら笑顔を忘れずに過ごしていきませんか。

感染症への対応で、変わる日常・変わらない生活

この春、新型コロナウイルス感染症の流行と共に、これまでの日常や社会生活が一変しました。企業は休業(リモートでの出勤体制)となり、学校や幼稚園・保育所が相次いで休校・一時閉鎖となり、感染拡大防止のため行動が制限(自粛要請)されることとなりました。町から人の姿は消え、楽しかったお買い物も回数を減らしメモを片手に急いで済ませ、家族はほぼ自宅の中で、息をひそめるようにして過ごす毎日。
報道では、連日増えていく新型コロナウイルス感染者数、この感染症に罹患された方の症状や対応する医療現場のたいへんさ、いかにして感染症から自身やお子さんの安全を守るか、また各自に求められる対応として「不要・不急の外出を避ける」、「密接・密集・密閉(3 密)を避ける」、「マスク・手洗い・うがいの励行」など、いま必要な情報を繰り返し伝えてくれました。
多くの人々の理解と協力のもと、幸いにも現時点では医療崩壊には至らず、感染症の拡大を防ぐ対応を継続しながら、社会生活を維持していけるよう新たな生活様式を模索し始めています。

ママ・パパの「すみません」に、「お役に立てず、すみません」

小児科医やスタッフたちは、風邪や水痘などの急性期・流行性の疾患や、アレルギー疾患・夜尿症など慢性疾患などの病気の診断・治療、予防接種や乳幼児健診などお子さんの健康や命を守る事、さらにお子さんが成長しきょうだいが増え家族になっていく中で、気になることや心配なことの相談など、かかわるすべての職種がそれぞれ「チーム育児」のメンバーとして日々取り組んできました。
しかし、新型コロナウイルス感染流行に伴い、地域の小児科(医療機関)も保護者の方にもさまざまな対応や変化が求められて来ました。たとえば、医療者側にはスタッフの日々の健康・体調の管理はもちろん、加えて(診断方法も基準も十分にわかっていない中で)「医療者が感染せず、医療者によりほかの方を感染させないよう」マスクや消毒薬・防護具の準備、感染した方との接触の有無の聞き取りや、発熱者の受診方法(時間)など。保護者の方にとっては、日々の生活の中でご自身はもちろんお子さんを新型コロナウイルス感染症から守るため、ご家族でリスク回避の方法を考えて継続していく事などです。
このような日々が続き、小児科を受診するお子さんが日を追って激減しました。
私も最初のうちは、「集団生活も休止され、外に出る機会も少なくなったので、風邪や流行性の病気にかかる事も減ったのかなあ」、「感染症のこともあり、来院せずに済むのならそれがいいのかも」などと考えておりました。
そんな折、何名ものママやパパか、不安そうに「生まれた子どもがもうすぐ2カ月ですが、予防接種はどうしたらいでしょうか?」「乳児健診を予約していたのですが、見合わせたほうがいいですか?」と、お問い合わせの電話を頂きました。またある日は、感冒症状で受診されたお子さんと保護者の方が、「受診しようか迷いましたが、心配で…こんな(軽い症状で来てしまい)すみません」と謝られてしまい、スタッフ一同「こちらこそ、心配な時にお役に立てず、さらにお気づかいいただいてすみません」というのが精いっぱいでした。
新型コロナウイルスも怖いけれど、それ以外にも子どもたちの健康や生命を脅かす感染症はたくさんあります。ただし、必要な時期にワクチン接種を開始し、接種を進めることで防げる病気もたくさんあります。また、乳幼児健診は身長や体重の推移だけでなく、目や耳の発育・運動面・歯と食事(離乳食)・情緒面やきょうだい家族との関係性や、隠れている病気がないか(早期診断から治療へとつなげる)など、月齢に応じてさまざまな角度からお子さんの成長・発達を見ていく上でとても大切なものです。

どうぞ、必要な時にはいつでも小児科に来てください。私たちは、いつもの場所(小児科)で待っています。


文/宮島 環さん
(つばきこどもクリニック・看護師)

金沢大学医療技術短期大学部卒業。 国立小児病院(現国立成育医療研究センター)、千葉県こども病院 経て現職。小児アレルギーエデュケーターの資格をもつ。日本外来小児科学会、日本小児臨床アレルギー学会、日本小児看護学会所属。

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