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激痛で暴れる3歳の娘を夫と2人がかりで押さえつけた日々「小児慢性機能性便秘症」の怖さ・ママの声

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彼女のベッドで少女が腹痛。
写真はイメージです
ka2shka/gettyimages

「小児慢性機能性便秘症」という病気を知っていますか。乳幼児ならではの理由で便秘が慢性化し、重症化してしまう怖い病気です。現在5才の長女が3才のときに「小児慢性機能性便秘症」と診断された秋山ゆかりさんに自身の経験について話を聞きました。

4カ月ごろから「便秘かも」と感じ始めていました

小児慢性機能性便秘症は、排便のない状態が慢性化して重症化した病気といえます。「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」によれば「週に2回以下しか排便がない日が1カ月以上続く状態」です。しかし、この状態ではすでに腸はたまった便で拡張し、腸の動きや反応も鈍くなってしまっているといいます。

経営コンサルタント・秋山ゆかりさんはさまざまな企業の事業開発などを手がける、スーパーキャリアママ。多忙な毎日の中、便秘に悩む親子のため情報発信を続けています。
長女が3才のとき、小児慢性機能性便秘症に。しかし、その予兆は4カ月ごろから感じていたといいます。

「4カ月ごろからうんちが少なくかたい日が目立つようになり、便秘かも、と思い始めました。ベビーシッターさんや栄養士さんからは食物繊維を多めにとアドバイスされ試していましたが、とくに改善しませんでした」(秋山さん)。

3才のとき事態が急変。床を転げ回るほどの腹痛、その後便失禁も

その後も便秘気味だな、とは感じながらも1日1回は排便があったので様子を見ていたといいます。
状況が大きく変化したのは娘さんが3才のときです。

「排便が3日おきになり、便がかたいため出すときに肛門が切れてしまい、ひどく痛がっていました。
このころ、危篤状態にあった夫の父を見舞う日が続き、娘の食事が偏食気味になっていました。また、その少し前には娘自身がカンピロバクターの胃腸炎にかかって入院していたんです。胃腸炎による下痢で腸が水分を吸収しやすくなるため便秘を悪化させることがあるとあとで知りました」(秋山さん)。

偏食が続いたことで便秘が悪化してしまったと感じていたところに、今度は下着をうんちで汚すようになったのです。

「うんちをもらすのが怖くて、保育園に行くのも渋るようになってしまいました。そこで近所の総合病院の小児科を受診したところ、『小児慢性機能性便秘症』と診断されました。
酸化マグネシウム(下剤)を1日3回とピコスルファート(下剤)1日1回、15~20滴を処方され、飲ませていました(のちに、その量は成人量以上ということがわかりました)。
それから1週間くらいたったころ突然、床の上を転げまわるほど苦しみはじめたんです。おなかが痛いといいながら…。暴れる娘を夫と2人がかりで押さえつけて浣腸してもうまくいかず、泣き叫ぶ、吐く、時には体が震えて話せなくなる、ということが毎日のように続きました」(秋山さん)

苦労の末、専門医を受診。娘の腸の写真を見てショック

秋山さんは娘の尋常ではない様子を見て、「このやり方は違う」と感じたと言います。それから、秋山さんの小児慢性機能性便秘症についての情報収集が始まりました。

「小児慢性機能性便秘症に関する情報はとても少ないです。ネットや本、論文などあらゆる資料を検索し、専門医を探しました。一刻も早く診せなければ、という思いで本来は紹介状が必要な専門医に、診察してもらえないかメールを送り続けました」(秋山さん)

秋山さんの思いが伝わり、ようやく東京都立小児総合医療センターの消化器科・村越孝次先生のもとにお子さんを連れて行きました。そこで、秋山さんは衝撃の事実を知らされます。

「娘の腸のエックス線写真を見ました。大量のうんちのかたまりが腸に詰まり、腸が太く広がっていました。肛門の手前は便塞栓という状態で、いくら下剤を飲んでうんちをやわらかくしても、出口がふさがっているため出すことができなかったのです。便失禁は、ゆるいうんちがかたまりのうんちと粘膜とのわずかなすきまからもれ出すものだと知って…。とてもショックでした」(秋山さん)。

そして、さらに追い打ちをかけるような言葉を告げられます。

「小児慢性機能性便秘症は3才までに治療を完了させないと、長期戦になると言われました。広がった腸をもとに戻すには時間がかかると…。
でも、小児慢性機能性便秘症とはどういう病気なのかを説明され、それまでしていたことが間違っていたことが理解できました。やっと適切な治療ができるとほっとしました。娘も、これでようやくよくなるんだ、と安心した様子でした」(秋山さん)

乳幼児の便秘が重症化しやすいのには、子どもならではの排便のしくみが影響しています。
便秘のときの便はかたくて排便が大変です。排便が痛いと、乳児期には泣き叫ぶようになります。さらに幼児期には排便が怖くなり、排便を我慢する、という子ども特有のメカニズムでどんどん腸に便がたまってしまうのです。ためこみすぎた便をなんとか出しても腸は鈍く拡張してしまいます。その状態になると、数日ためないと便意がわからなくなり、便意があっても自力では出せない便をためこんでしまう、という悪循環が起きてしまうのです。

「毎日出す」ことを大切に、今も治療を続けています

やるべきことがしっかりわかった秋山さん。そこから、長い長い治療が始まりました。治療は今も続いています。治療の中心は浣腸です。

「自力で出せないときは自分から浣腸する、と言ってくるようになりました。毎日の生活の中で、出たら浣腸なし、出なければ浣腸。『毎日出す』ことを大切にした暮らしを続けています。
私は、とにかく専門医を探すことがとても大変でした。お子さんが便秘かな、と思ったらできるだけ早く、専門医を受診することをおすすめしたいです」。


お話/秋山ゆかりさん 監修/村越孝次先生 取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部

小児科の中でも正しい便秘治療を行える医師は数が少なく、専門医を探すのが難しいのが現状です。日本トイレ研究所のホームページには「排便に悩む子供たちのための病院リスト」があります。村越孝次先生もおすすめしています。気になる方はチェックしてみてください。

●排便に悩む子どもたちのための病院リスト

村越孝次先生(むらこしたかつぐ)
Profile
東京都立小児総合医療センター消化器科部長。東京都立八王子小児病院外科勤務を経て現職。「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」の作成に協力。

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