【コロナ禍】開設40年以上の「赤ちゃん相談室」の利用者が増加「お母さんを孤立させない」、相談員の思い
新型コロナウイルスの影響で、子どもと気軽に外出できない日々が続いています。そんな中、授乳、離乳食など赤ちゃんの栄養について電話で相談できる「明治 赤ちゃん相談室」の相談数が増加しています。なぜ今多くのママ・パパたちから支持を受けているのかを探りました。
「赤ちゃん相談室」という名称に込められたのは育児支援への思い
1976年開設から40年以上の歴史があるのが食品メーカー明治の「明治 赤ちゃん相談室」です。赤ちゃん相談室を担当されている管理栄養士の高橋美香さんに聞きます。
「1970年代中ごろから当社の商品の使用方法や保存方法へのお問い合わせをお客様相談室で受けていましたが、相談を受けるうちに、商品のことだけでなく、栄養全般の育児支援をする必要性を感じたことから、『明治 赤ちゃん相談室』が併設されることになりました。
相談員は全員管理栄養士・栄養士の資格を持つ栄養の専門家です。今、育児をされているお母さんやお父さんと同世代から、孫もいるベテランまでいろいろなキャリアを持つ相談員がいます。
専門家がそろっていますが、一方的な『指導室』ではなく『相談室』として、悩んでいるお母さんやお父さんと一緒によりよい解決方法を見つける、という寄り添う姿勢をなによりも大切にしています」(高橋さん)。
相談事例としては授乳に関することがトップ、次に離乳食などの食事関連が続きます。授乳についても、ミルクだけでなく母乳の質問も多いといいます。
「低月齢の赤ちゃんのママからは、母乳がたりないようだけれど、ミルクはどれくらいたせばいいかなど、母乳に関する質問がもともと多かったんです。でもコロナ禍で母乳外来が休みになり、困って電話をしたという方が多くいらっしゃいました」(高橋さん)。
専門家にマンツーマンで子どもの様子の相談ができる安心感
新型コロナウイルスの影響で、「明治 赤ちゃん相談室」にも変化がありました。緊急事態宣言が発令された2020年4月には同月前年比で132.8%、前月比で144.9%も問い合わせ件数が増えたそう。
その背景について高橋さんはこう言います。
「悩みがあっても健診が新型コロナウイルスの影響で延期になり店頭相談なども休み、ママ友など友人や知人にも会えないという状況の中、外出することなく、自宅でゆっくり相談できる安心感が受け入れられたのではないかと思います。コロナ禍の中で相談業務を続けることに議論はありましたが、悩みがあっても赤ちゃんを外に連れ出したくない、というお母さん、お父さんの不安を解決しお役に立ちたい、今こそ必要な業務である、という使命感から、人員体制を調整し、相談員の感染予防対策も行いながら続けました」(高橋さん)。
それと同時に、相談件数が増えたのはほかにも理由があるといいます。
「現在は情報があふれる時代で、どの情報が自分にとって正解なのか、見えにくくなっているように感じます。とくに今の時代はスマホからの情報に頼ることも増え、入ってくる情報から、自身がどうすればいいか迷う場合もあるのではないでしょうか。そんな中、専門家にマンツーマンで、自宅で気軽に相談できる機会は貴重なのではないかと考えています。
実際、離乳食の目安量はこれくらいと書いてあるけれど食べない、大丈夫なのか、など情報を調べたうえで相談される方が増えています。『モヤモヤしていましたがスッキリしました!』と言っていただけたこともあり、とてもうれしかったという相談員もいます。
またこの4月からフリーダイヤル化したことで、気軽に相談ができるようになったようです」(高橋さん)。
ひとりで悩みを抱え込まないで。話すだけでスッキリすることも
しかし、お気軽に、と言われてもこんな小さな悩みで……とためらう人もいるのではないでしょうか。
「子どもにとっていちばんうれしいのは、お母さんの笑顔だと思います。外へ出かけられず家の中ばかりにいるとだれでもストレスが増えますし、悩みを一人で抱え込んでいては顔も険しくなってしまいます。
こんな悩みなんか、と思わず気軽にご利用いただき、ママも赤ちゃんも笑顔になっていただきたいと思います。
相談員はお話を聴きながら、どんな悩みがあるのか、その悩みを解決するためにはどうすればいいのかを一緒に考えていきます。そして、電話を切ったあとにすぐに行動にうつせるよう、具体的なアドバイスを提案するようにしています。
お手元に母子健康手帳や育児日記があればよりスムーズですが、無くても大丈夫です。あまり気負わず、ありのままの気持ちでお電話ください」(高橋さん)。
最後に、コロナ禍の中運営を続けた「明治 赤ちゃん相談室」を利用したママたち声を紹介します。
●このような状況になっても変わらず応対してくださり本当に感謝している。(市町村の健診や店頭相談など)休んでいるところも多く、さすがに無理かと思ったら電話がつながり、ゆっくり話ができて本当に助かった。本当に不安な毎日。このような状況下でも相談に乗ってくださるその姿勢に感動してどうしても感謝の気持ちを伝えたかった。
●コロナ流行以来、家で過ごすことが多い、イベントや子育て広場なども閉鎖、公園にも出にくい。子どもの相手も限界があり、怒鳴ったり、怖い顔や声を出してしまい自己嫌悪。我慢できず、誰かと話したくて電話した。
コロナ禍といっても授乳や子どもの食事は毎日のことですから、悩みはつきません。
栄養の専門家に相談できたということは、ママにとって、とても心強かったのではないでしょうか。
取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部
「明治 赤ちゃん相談室」は1976年に「お客様相談室」とともに全国各支店に2種類の相談室が開設されたのが始まりです。その後1997年には明治本社に「明治 赤ちゃん相談室」として一元化され、2020年4月にはフリーダイヤル化されました。
管理栄養士・栄養士の資格を相談員が日々お母さん・お父さんの相談に向き合っています。