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大企業から転身。ひとり親、不登校、困窮家庭の子どもたちの拠点をつくる VOL2

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仙台でアスイクが運営する児童館のこどもたち(写真提供:大橋さん)

新型コロナ感染拡大の影響で、経済的に困窮する家庭が増えています。「親の困窮は時間差で子どもに影響する」。そう語るのは、仙台で子どもの貧困問題に取り組む活動をする大橋雄介さん。東日本大震災をきっかけにNPO法人アスイクを立ち上げ、生活保護、ひとり親家庭などの子どもたちを対象に、学習支援や職業体験など、さまざまな場を提供してきました。そんな大橋さんに聞いたコロナ禍で子どもたちに起こったこと、活動を通して見えてきたことを2回にわたりお送りします。

子どもが信頼してくれる瞬間が喜び

コロナで学校行事が次々と中止になるなか対策をしてキャンプを開催。雨模様ながら笑顔がいっぱい(写真提供:大橋さん)

休校、学校行事の中止が相次いだ今年の夏。なんとか楽しい夏休みを過ごしてほしいと、子どもたちをキャンプに連れて行ったときのことです。帰りのバスである子どもがふと「幸せだなぁ」とつぶやいたそうです。普通の状況なら、キャンプに行ったくらいで「幸せだなぁ」と言う子はあまりいないと思うのですが、その子はきっと「いろいろな人と過ごせて幸せだ」と思えたのでしょうね。それを聞いたスタッフは「感染対策などは大変だったが、こういう場を作って良かった」と話していました。これまでも毎年福島のキャンプ場で1泊2日のプログラムを実施してきましたが、活動のなかで、「子どもが信頼してくれた」とわかる瞬間にスタッフはやりがいを感じているようです。

とはいえ、困難を抱える子どもたちをサポートするのは、ハードなこともあるので、スタッフやボランティアが「ひとりで抱え込まない」状況を作ることが重要だと思います。例えば、ボランティアが子どもから得た情報や不安、疑問などは、毎回の振り返りのなかで本部スタッフが吸い上げています。また、本部スタッフはミーティングのなかで、困っていることや情報を共有しながらお互いをサポートし合っています。常に組織全体で情報を共有、対応する。さらに、僕たちだけでなく、行政も含めた地域のさまざまな専門機関と連携を取りながら、それぞれの家庭、子どもにチームで関わり、サポートしていくことを大切にしています。

支える側にもセルフケアが必要

社会人2年目に、仙台の地域活性化という事業理念を掲げた会社に勤めていたこともあって、29歳で東京から仙台に戻って来ました。学生時代から人や社会の役に立つことが自分の存在意義につながるのではないかと考えていたので、漠然と世の中の役に立つような事業を作りたいと思ったんです。当初は、特に子どもや福祉の分野を考えていたわけではなく、たまたま震災があって、学校が再開できるかどうかわからないという状況下で、子どもに関する課題が次々と出てきて、活動しているうちに気付いたら9年経っていたという感じです。

僕自身は、特別なことをしているという感覚はありません。例えば、目の前の川でおぼれている子どもがいて、近くに棒や丸太があったから投げているという感覚でしょうか。今、自分にできることをやっているだけです。しかしそうやって丸太を投げても、なぜか子どもがたくさん流れてくるので、上流を見ると穴が開いている。だからその穴をふさごうと考えるのは特別なことではないと思います。耳をふさぎたくなるような話ばかり聞こえてきてくること多いので、良くも悪くも慣れることは大切かもしれません。

僕は決してメンタルが強い方ではありません。だからこそセルフケアをしっかりやっていこうとスタッフにも話しています。お寺で瞑想していた時期もありましたし、今は睡眠や食事など規則正しい生活をするほかに、意識的に筋トレやランニングなどで体を動かすようにしています。

また、ある意味、終わりのない仕事なので、時間で管理することがとても大切です。際限なくやってしまうと自分のなかのエネルギーがなくなって、気づいたときには倒れてしまっているという状況が起こる可能性も出てきます。だから仕事の時間はきっちり決めて、それ以上はやらないということも重要になりますね。

震災のときもそうでしたが、家庭の中の問題や保護者の不安やストレスなどが、子どもなど弱い立場の人に向かいやすいという構造があると思っているので、コロナでも同様のケースが生まれてくることを想定しながらその準備することが大事だと思って活動しています。

外から見えにくい虐待や貧困。日ごろから気にかけてほしい

アスイクが主催するこども食堂。コロナの影響で開催のカタチを変えざるを得ませんでした(写真提供:大橋さん)

親と子は、近い関係であるがゆえに、お互いに本音が言えなかったり、ぶつかりやすかったりする存在なのだと思います。だからこそ、第三者、外の人とつながりながら、親と子の関係だけで閉じない状況を作ることが精神的にも大切なのですが、今はそれがなかなかしづらい状況でもあります。

困っている人が僕たちのところにたどり着いてくることは本当に難しいです。そのために、ありとあらゆるところからつないでもらう、ネットワークを張り巡らせていくなどを大切にしています。自分で動けない人は、信頼している人に背中を押されることで僕らにつながってくるということはあると思います。民生委員や行政の窓口などだけでなく、みんながこういうことに関心をもって、日頃から身近に困っている人がいないかなという意識をもってもらうことも重要ですね。そのために、講演会を始めとするさまざまな場で、こんな支援の道があるということを、話し続けています。

虐待や貧困などの問題が難しいと思うのは、見て見ぬふりをするつもりがなくても、外から見えにくく、気づいたとしてもどう関わっていいかわからない人も多いのかもしれません。その場合は、自治体や僕らのような活動をしている団体を探してつないでもらえたらと思います。最近は、メールやラインなど、相談する手段もさまざまです。もし、自分が出向いて行って相談することのハードルが高いと感じるなら、自分が使いやすい手段を探してみるのもいいかもしれません。

<大橋雄介さんプロフィール>
NPO法人 アスイク代表理事。NPO 法人せんだい・みやぎ NPO センター理事。
公益財団法人子どもの貧困対策センターあすのばアドバイザー。一般社団法人全国子どもの貧困教育支援団体協議会理事。1980年生まれ。筑波大学卒業。リクルートのグループ企業で組織開発・人材開発のコンサルティングに携わった後、独立。2011年の震災直後にアスイクを立ち上げる。著書に「3・11被災地子ども白書」等。仙台市協働まちづくり推進委員会副委員長などを歴任。日本青年会議所「人間力大賞」会頭特別賞受賞。

取材・文 米谷美恵

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