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コロナ禍、迷うママたちが聞きたがる「全米最優秀女子高生の母」の明るすぎる子育て論

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コロナ禍にあっても講演会、ワークショップ、インスタライブと引っ張りだこのボークさん (写真提供:ボークさん)

留学時代に知り合ったアメリカ人男性との結婚を機に生活の場をアメリカに移したボーク重子さん。文化も違う、知り合いもいないアメリカで、一人娘のスカイさんを育てながら、経済的にもひとりの女性としても自立することをめざしました。2017年には、スカイさんがアジア系の学生として 3番目、日本人として初めて「全米最優秀女子高生」となり、その母であるボークさんも注目を浴びました。現在は、ライフコーチとして、アメリカ、日本における子育て中のママから絶大なる信頼を集めています。

前編の「『全米最優秀女子高生』を育てたボーク重子さん。ママの仕事は子どもの笑顔を作ること」に続き、後編ではライフコーチであるボーク重子さんから子育てに効果的なスキルを教えていただきます。

大切なのは反省することではなく、自分を許すこと

——— 子どもを叱って自己嫌悪に陥ったり、いけないとわかっていても人と比べたり、子育て中のママならみんな経験したことがあると思います。

ボークさん(以下敬称略) 私も苦い経験がありますよ。娘がまだ小さかったとき、地下鉄の中でひどく叱ったことがあるんです。そのとき、見ず知らずの人に「ずっと見ていたけど、あなたの子どもは何も悪いことしていないわよ。いったい何をしているの?」って叱られたんです。

そう言われたことはすごく恥ずかしかったし、自分のメンツを失ったようにも感じました。でも本当に恥ずかしく思うべきは、子どもにひどい扱いをした自分なんです。あのときの娘の顔は一生忘れません。それからは、声を荒げて叱りたくなったり、自分のイライラを吐き出したくなったりしたときは、あの日の娘の顔を思い出すようにしています。娘には申し訳ないと思うけど、あの日の出来事は、私の強烈なブレーキとなっています。私は子どもにあんな悲しい顔をさせるために親になったんじゃありませんから。

——— 今ではコーチングの資格もとり、ママたちから絶大な人気を誇るボークさん。子どもを叱ってしまったとき、ボークさんのご専門であるコーチングを使った効果的なスキルはありますか?

ボーク まずやってしまったことはやってしまったこととして受け入れること。

多くの人は、「なんてダメなママなんだろう」と自分を追い込んでしまいがちです。そうではなくて、やってしまった自分を許すことが大切なので、そうすることでオープンになれて、「同じことをやらないためにはどうしたいいか」と考えられるようになってくるんです。

——— 「自分を許す」ですか?

ボーク そう、自分を許せないと、「あの子がうるさかったから仕方ない」とか、「私が育った環境のせいだ」とか、自分は間違っていなかったみたいに思いがちです。そして、そのあとそんな風に思ってしまう自分を責め反省してしまう……。私もそうでしたし、日本のママはこう考えがち。とてもまじめなんです。

でも反省するのではなくて、許すことが重要なんです。そのときに忘れないでほしいのは、自分が自分を許しているだけじゃなくて、そういう行動をした自分であっても子どもからはすでに許されているということ。子どもは親の全てを受け入れてくれているんです。

時間をかけて自分を成長させ経済的に自立する

——— ボークさんは、「ママであっても女性が経済的に自立する」ことの大切さを説いています。

ボーク 私は、お金にはお金の役割があると思っています。お金で幸せを買えるわけではないけれど、ある程度の安心と安定はもたらしてくれます。自分でお金を稼ぐことができれば、何かをしたいと思ったときに、誰かの許可を得なくてもいいわけです。自分で決定権をもてるということです。私も、万が一、何かあったときに娘を守れる母であるために、お金持ちでなくていいから食べていけるだけのお金を稼ぎたいと思っていました。

——— 専業主婦だったボークさんが経済的に自立することは大変ではなかったですか?

ボーク 3年間の留学、2年間は専業主婦と5年間のブランクがありましたからね。だから働こうと思っても、当時は私の市場価値を認めてくれる人はいませんでした。大学院では現代アートが専門で修士号ももっていましたから、どこかに就職できるだろうという自信もあったけれど、学校を出ただけで経験はゼロ、知識を使ったことがないのですから、雇っても使えないと思われても仕方ありません。

——— そこからどうやってお仕事を始めたのですか?

ボーク まずは週1回のボランティアから始めて、アートの企画展や資金集めのイベントを手伝いました。でも実はボランティアって大変で、だからこそやることはいっぱいあり、いろいろな人をまとめたり連絡係をしたりと、少しずつ輪が広がっていきました。その輪がきっかけでそれから3年間で、少しずつクライアントがついて、おかげさまで自分のギャラリーを開けるようになりました。自分の稼ぎで娘のベビーシッター代を支払えたときは、本当にうれしかったですね。時間をかけてちゃんと自分を育てていけば、経済的に自立することは難しいことではないと信じています。

自分の人生は自分でデザインしていくもの

——— コロナという見えない敵に怯え、戦いながら、一生懸命毎日を過ごしているママたちから、ボーグさんは絶大なる信頼を集めています。

ボーク:前例のない今の状況では、ロールモデルとなる人はいません。そんななかでも自分で選んでいかなければならないことはたくさんあります。そういう意味で、これまでの女性たちと比べ物にならないような悩みもあって、本当にいま、小さい子を育てているママたちは大変だなと感じています。

でもね。私たちは、幸せになるために生きているんです。だからそのときそのときに選ぶことは、自分が幸せになるための選択です。どういう人生であろうと、誰かがではなく、自分の人生は自分でデザインしていかなくてはならないのですから。

そして、もがいたり、悩んだりする姿を、どんどんお子さんに見せて、「大変だけど、自分らしい人生があるんだよ」ということを伝えてください。女性の進出が盛んになってきたとはいえ、まだまだ古い考えも根強く残っているなかで、皆さんたちがロールモデルになっていく時代です。大変だけれど、自分のために、子どもたちのために、次世代のために、がんばり過ぎず、でもがんばっていただきたいなと思います。

大学卒業を目前に控えた娘にも、「こんな風に挑戦状を突きつけられた世代は過去にもないのだから、あなたたちの世代から何かすごいことが生み出されるってことよ」と言っています。

文/米谷美恵

ボーク重子さん
Profile
Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチ連盟)会員ライフコーチ 。
英国の大学院で現代美術史の修士号を取得後、1998年ワシントンDC移住、出産。移住後、2年間の専業主婦を経て2004年ワシントンDC初のアジア現代アート専門ギャラリーをオープン。アートを通じての社会貢献により、オバマ大統領(当時上院議員)らと共に「ワシントンの美しい25人」に選出。現在は、アメリカ、日本に顧客をもつライフコーチでもある。近著は『子育て後に「何もない私」にならない30のルール (文春e-book)』がある。

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