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子どもの「レジリエンス」をはぐくむために大人ができることは?【臨床心理士/公認心理師 】

更新

男の子とママの叫び
maroke/gettyimages

つらいことがあって落ち込んでも立ち直ることができる。こういう力を心理学では「レジリエンス」と言います。子どもの「レジリエンス」をはぐくむために、ママやパパにできることはあるでしょうか。レジリエンスの研究をされている東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科講師の平野真理先生に聞きました。

ネガティブな感情を「なかったもの」にするのではなく、共感することが大切

生きていれば、つらいことや悲しいことに遭遇するのは避けられませんが、心が傷ついたり、落ち込んだりしても、いつしか心の傷が癒え、立ち直ることができます。それは、心の回復力、適応力であるレジリエンスが、生まれながらに備わっているからです。
でも、レジリエンスがうまく機能するかどうかは、その人が置かれた環境に影響を受けます。とくに子どものレジリエンスは、周囲の大人のかかわり方が大きく左右するのだそうです。

「レジリエンスは、『自分のことを助けてくれる他者がいる』と感じられるからこそ発揮できる力です。そのため、乳幼児の場合は、最も身近にいていちばん信頼しているママやパパの対応が非常に重要になります。
子どもがつらい目にあったとき、親としてはそれを“なかったこと”にしてあげたいと思うもの。たとえば、子どもが怖い思いをしたときは、『怖くないよ~』となぐさめることが多いでしょう。でも、レジリエンスをはぐくむことを考えると、『怖かったね』と気持ちを共有することが大切なんです。
ネガティブな感情を持ったとき、それをママやパパが共感し、受け入れてくれたとわかると、『怖いと思ってもいいんだ』と自分の感情を肯定できるからです。
そのうえで『ママが一緒にいるから大丈夫よ』と安心させてあげると、『きっと助けてもらえる』という安心感や、『自分は大切にされている存在だ』という自己肯定感が持てるようになります。その結果、『もっと頑張ってみよう』とチャレンジする力もわいてくるようになります。この積み重ねで、心が傷ついたときの回復力(=レジリエンス)が高まっていくのです。」(平野先生)

子どもの心の育ちに適した声かけと、“助け方”をしよう

子どものレジリエンスをはぐくむには、“きっと助けてもらえる”という安心感を子どもに与えるかかわり方が大事、ということのようです。
でも、助け方は子どもの心の育ちによって変わってきます。年代別のかかわり方のヒントを、平野先生に教えてもらいました。

【0~1才代】「ママやパパがいれば安心」という信頼関係を築く

「0~1才代は『きっと助けてもらえる』という安心感・信頼感を子どもが持てるようにすることが大切です。子どもが泣いたり、助けを求めたりしたら、なるべく抱っこなどのスキンシップをしてなぐさめ、落ち着かせてあげましょう。
そのあと、できる範囲で子どもが快適に過ごせるように環境を整えたり、一緒に遊んであげたりと、子どもが求めることを行う中で、この世界は安全な場所だという感覚をはぐくみます」(平野先生)

【2才代】できなくて悔しい気持ちに共感してから、「できる自分」を見せる

「イヤイヤ期のころは、どう考えても無理なことをやろうとする場面もあると思います。ママやパパは子どもの安全を守ることに必死だと思いますので、可能な範囲でかまいませんので、余裕があるときは自分でやりたい気持ちを尊重してやらせてあげてください。
何度失敗してもOKですが、失敗したときに子どものプライドを傷つけないことは大切です。自分がイメージするようにできなくて、悲しくなったり、悔しくなったりすると思いますので、そこで『できなくて悔しいね』『悲しいよね』と気持ちを代弁してあげましょう。ママやパパが気持ちを共有してくれることで、『自分はこれでいいんだ』と思え、自己肯定感が高まります。
そして、気持ちが落ち着いたところで、『ママともう一度やってみようか』と誘い、『できる自分』を実感させることで、レジリエンスが高まっていきます」(平野先生)

【3~4才代】“自分を元気づける言葉”を効果的に使ってみる

「3~4才になると、ママやパパ、幼稚園・保育園の先生など、身近にいる大人と同じようになりたいという気持ちが出てきます。できなくて悲しい気持ちにまず共感するのは2才代と同じですが、そのあと『ママ(パパ)と同じようにやってみて』と提案してみるのもよいかもしれません。
また、『きっと大丈夫』とか、『〇〇ちゃんは頑張り屋さん』など、大人がかけてくれた言葉を心の中のお守りにして、自分を支えることもできるようになってくると思います」(平野先生)

【5~6才代】お友だちと自分を比べなくていいことを、大人自身のあり方で伝える

「5~6才になると、『お友だちはできるのに自分はできない』など、まわりの子と自分を比べて落ち込む場面も出てくるかもしれません。そうしたときに気持ちに共感するのはこれまでと同じですが、まずは大人が、その子をほかの子と比べないこと、そして、その子自身の頑張りや成長を認めることが大切です。大人自身が、まわりと自分を比べないことを示したり、世の中にはたくさんの“価値のものさし”があることを伝えたりすることも大事だと思います」(平野先生)

「レジリエンスの高い子=育てやすい“いい子”」ではない

レジリエンスは悲しみやつらさから心を回復させて、前に向かって歩いていく力となる大切なもの。だからこそ、レジリエンスをはぐくむかかわり方は重要なのですが、「『レジリエンスの高い子は、親が望むようないい子』という誤解が生じやすいのが気になっています」と平野先生は問題提起もしています。

「レジリエンスをはぐくむことは、『困難にぶつかってもすぐに立ち直る、育てやすい子』をめざすことではありません。レジリエンスは生き延びるための力ですから、本当につらい状況に置かれたときは、逃げる力、ずる賢さ、人をだます力などもレジリエンスとして発揮されることがあります。これらは通常、好ましくない特性とされますが、そうする以外で心を回復させる方法がない状況では、それは正しいレジリエンスの発揮のしかたと言えます。
もちろん、これは極端な例です。でも、レジリエンスをはぐくむということは「大人が望むような『いい子』に育てる」という意味ではないことは、意識できるといいと思います」(平野先生)

一般に「好ましくない」とされる特性でレジリエンスが発揮された場合、ママやパパはどう対応すればいいのでしょうか。

「その子の世界がそれだけ過酷な状態にあることをまず理解し、『つらかったね。気づいてあげられなくてごめんね』と、気持ちに寄り添うことからはじめられるといいと思います。そして、『頑張って乗り越えようとしたんだね』と、その子の努力を認めてください。ほかの方法がないか、子どもと一緒に探すのはそれからです」(平野先生)

レジリエンスを高めるための教育プログラムも考案されており、「それはとても大切な活動」だと平野先生は考えているそうです。

「子どもたちが『自分の心の中に、レジリエンスという回復力があるんだ』と気づくことが非常に重要だからです。日本でも試験的に小中学校で実施されており、敏感な気質の子やくよくよしやすい気質の子は、とくにレジリエンス教育の効果が表れているという研究結果も出ています。
自分の心には、自分だけの回復力があるんだと知ることが、自分の心を大切に思うことにつながり、さらに、人の心の違いを認めて大切に思う気持ちへとつながっていけるようにする。それがレジリエンス教育のめざすものであり、レジリエンスをはぐくむ大きな意義でもあるのです」(平野先生)

お話・監修/平野真理先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

具体的なかかわり方は年代によって変わりますが、子どもがネガティブな感情になったときに、それを大切に共有し、子どもが求めるサポートを行うことで、レジリエンスははぐくまれていきます。

平野真理先生(ひらのまり)

Profile
東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科講師。東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程修了。博士(教育学)。著書に「レジリエンスは身につけられるか 個人差に応じた心のサポートのために」(東京大学出版会)など。

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