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妊娠を機に仕事を辞めた女性は自尊感情が低くなる傾向に【臨床心理士/公認心理師提言】

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母を強調し、彼女の手で彼女の顔に疲れて、
globalmoments/gettyimages

子どもを持つことは、ほかには代えがたい大きな喜びを与えてくれますが、最近の調査研究によると、「妊娠・出産を機に仕事を辞めたママは、自己評価が低くなってしまいやすい傾向にある」のだそうです。この調査を行った専門家の1人、東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科講師の平野真理先生に、話を聞きました。

「母親」の役割だけでは、女性の自尊感情を高めることはできない

平野先生が参加したのは、特別区長会調査研究機構によって行われた「自尊感情とレジリエンスの向上に着目した、育児期女性に対する支援体制構築に向けての基礎研究」という調査。東京都板橋区と北区に住む、5才までの第1子を持つ女性3000人に2019年にアンケートを実施し、その結果を分析したものです。
「自尊感情」は自分自身の価値や能力への肯定的な評価のこと、「レジリエンス」は落ち込込んだときなどに立ち直る力のことです。

「調査の結果、ママたちは、産後すぐよりも、産休・育休の時期を過ぎた産後2年目以降に、自尊感情やレジリエンスが低くなりやすいことがわかりました。中でも、妊娠・出産によって『仕事を辞めざるを得なかった人』の自尊感情がとくに低かったのです。

これは、『本当は辞めたくなかったけれどしかたなく辞めた』という人だけが該当するわけではありません。『自分も望んで仕事を辞めた』と認識している人であっても、実際には、収入が少ないために仕事を続けたいと主張できなかった人など、辞める以外の選択肢がなくてそうせざるを得なかった人がいます。
今回の調査から見えてきたのは、「母親」という役割が、必ずしも女性の自尊感情を高めるわけではないということです」(平野先生)

子どもが欲しいと願い、ママになれたことを幸せに思う気持ちにうそはないけれど、「ママの自分」だけでは寂しい…。それが現代を生きる女性の素直な気持ちでなのかもしれません。
妊娠・出産を機に仕事を辞めざるを得なかったママが、自尊感情を失わないために、できることはあるでしょうか。

「まず、あたり前のことですが、『仕事を辞めたのは、職業人としての自分の価値が低かったからではない』ときちんと認識することが重要です。そのうえで、「母親」としての役割を大切にしながらも、「個人」として社会にかかわっていく機会を持つことが大切だと思います。地域の活動に参加する、趣味を通して仲間を作る、ボランティアをするなど方法はなんでもOKです。『自分が「個人」として社会ときちんとつながりを持てている』と実感できるような機会や場所を作ることが大切です」(平野先生)

自分が「できていること」への気づきを高める「できたこと日記」をつけよう

子どもが小さいうちは、社会とかかわりを持つのが難しい…というママも少なくないでしょう。そんなときは、日々の生活の中にある出来事へのアンテナを高めるために、「できたこと日記」をつけることを平野先生はすすめています。「できたこと」はごく小さなことでいいのだとか。

「1日を振り返って、ごくごく小さな『できたこと』を見つけるくせをつけましょう。たとえば、『今日も1日無事に過ごせた』『今日はこれを楽しめた』というのも立派な『できたこと』です。“小さなできたこと探し”をすると、自分ではあたり前と思っている『できていること』への気づきにつながり、自尊感情やレジリエンスを高めることになります」(平野先生)

「できたこと」を書きとめていくうちに、自分が頑張っていることや、うまくいっている側面を大切にできるようになり、気持ちにもポジティブな変化が生まれるのだそうです。

「できることを増やそうと頑張ってしまうのはNG。自分ではなかなかそう思えないかもしれませんが、日々育児に奮闘しているママは、もう十分に頑張っているからです。いつも通りの生活の中の、小さなチャレンジや感動などに目を向けてください」(平野先生)

「ママではない自分」をいたわる時間は食事をするのと同じくらい必要なもの

「ママの自尊感情を高めるには、『母親』の役割から離れる時間を持つことも大切」と平野先生はいいます。「母親として」の役割や責任に追われる時間が続くと、心に余裕がなくなります。心に余裕がなければ自尊感情を高めることはできません。

「2013年に海外で発表された、ママとパパの家庭内でのインターネット利用について比較した研究によると、パパがインターネットを使う目的の大半は、ひとりの時間を楽しむためだったのに対し、ママはインターネットを利用する時間の多くを、子育てや家事に関することに使っていました。つまり、自由になる時間もママは『ママ』として使っているのです。

もちろん、ママが子どもを慈しむのはとても大切なことです。でも、「ママではない自分」をいたわるのは、それと同じくらい大切。食事をするのと同じように、必要なことだと思います。ママから切り離された自分だけの時間、“Me Time”を持ちましょう」(平野先生)

“Me Time”は自分が本当に楽しいと思えることをする時間。子どもがお昼寝をしている間など、すき間時間を利用するだけでもいいので実践してみましょう。ママが自分を大切にすることは、子育てにおいてもメリットがあるそうです。

「ママが自分自身を『個人』として尊重することは、子どもを『個人』として尊重するかかわり方につながっていき、それが、子どもの自立や円滑な親子関係へとつながっていくと思います。
一生懸命子育てをしている人こそ、“Me Time”が必要です。おざなりにしている自分、育児のかげに隠れてしまっている自分を探し、いたわってあげてください
」(平野先生)


お話・監修/平野真理先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

「ママの自分も好き」「ママではない自分も好き」。そんなふうに思えたら心に余裕が生まれ、ポジティブに日々を過ごせるようになりそうです。
なお、東京家政⼤学⼥性未来研究所では、ママが⾃分の未来を考える時間をサポートする『⼦育てママの未来計画』を開講しています。


平野真理先生(ひらのまり)

Profile
東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科講師。東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程修了。博士(教育学)。著書に「レジリエンスは身につけられるか 個人差に応じた心のサポートのために」(東京大学出版会)など。

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