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【臨床心理士/公認心理師に聞く】最近注目されている子どもの「レジリエンス」ってどんな力?

日本の男の子のランニング、草の上で
ziggy_mars/gettyimages

10年前の東日本大震災で、日本人の多くが、とても大きな恐怖や悲しみを体験しました。そして今は、日本人だけでなく世界中の人が新型コロナウイルスの不安の中にいます。でも私たち人間は不安や悲しみ、喪失感などに襲われても立ち直り、生きていくことができます。そうした力を心理学では「レジリエンス」というそうです。レジリエンスの研究をされている東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科講師の平野真理先生に、レジリエンスについて教えてもらいました。

レジリエンスは傷ついた心を癒やし、修復する「心の回復力」

レジリエンスは、つらい環境や、大きなストレスがかかる状況で、落ち込んだり傷ついたりしても、そこから立ち直ることができる力のこと。「心の回復力」といったイメージです。
海外では1970年代ごろからレジリエンスの研究が始まりましたが、日本で「レジリエンス」が注目されるようになったのは2000年代以降。大きなきっかけとなったのは東日本大震災だそうです。

「震災を経験したら、心に大きな傷を負うのは当然ですよね。でも多くの人は立ち直って、前を向いて生きています。これは、人に備わっているレジリエンスが発揮されたからだと考えることができます。こうしたことから、レジリエンスが日本でもすごく注目されるようになり、研究が盛んに行われるようになりました」(平野先生)

レジリエンスはもともと人間に備わっている力とのこと。では、0才児にもレジリエンスはあるということでしょうか。

「生まれたばかりの赤ちゃんは、おなかがすいても自分でミルクを探すことはできないですし、暑い・寒いといった不快な環境にいても動くことができません。そんなとき、泣いてママやパパに助けを求めます。そして、ママやパパがお世話をしてくれて快適な状態になると、ご機嫌になります。つまり、“つらい環境”から抜け出せたら、心の安定を回復できるわけです。これもレジリエンスといえます」(平野先生)

“開けたいと思った箱が開かなくて泣いてしまったけれど、ママやパパがなぐさめたら泣きやんで、もう一度チャレンジした”
“階段から転んで痛い思いをしたのに、翌日にはすっかり忘れて、また同じ場所で遊ぼうとする”
子育て中にはよく見られるこれらのシーンも、“子ども自身が持つレジリエンスが発揮されている場面”なんだとか。

「なぐさめられて立ち直ったり、痛かったことを忘れたりできるのも、子どもが前に進むために必要なレジリエンスと理解することができます」(平野先生)

レジリエンスは「くじけない強い力」ではなく「立ち直るための柔軟な力」

最近よく“レジリエンスをはぐくむ育児が大切”ということを耳にします。その際、レジリエンスは“どんな逆境でもくじけない心”と説明されることがありますが、それはレジリエンスではなく、“ハーディネス”という別の力なんだそう。

「レジリエンスは何事にもくじけない強さではなく、落ち込んだり、へこたれたりしたときに回復する力。ストレスを感じたとき、柔軟に自分を変えていける力です。
一方ハーディネスは、大きなストレスにさらされても、心の健康を保っていられる、精神的に強い力。いい意味で鈍感な人はハーディネスが高いといえます。背の高さが生まれながらに決まっているように、ハーディネスの高さも生まれながらに決まる傾向があります。
ハーディネスが高い子は、つらいことがあってもあまりくじけないし、落ち込むことも少ないので、レジリエンスはそれほど重要ではないことが多いです。
反対に、いろいろと気になってしまう子や、落ち込みやすい子(=ハーディネスが低い子)は、持ち前のレジリエンスを十分に発揮できるようにサポートしてあげる必要があります」(平野先生)

子どもの気持ちに寄り添い、求める手助けをすることで、レジリエンスがはぐくまれる

子どもは成長するにつれて、さまざまな困難に直面します。お友だちと比べて、自分に劣等感を持つこともあるでしょう。そんなとき、傷ついた気持ちを修復し、前を向いていくために必要なのがレジリエンスです。
子どもがレジリエンスを発揮できるようになるには、「助けてもらえる体験を積み重ねることが大切だ」と、平野先生。

「つらかったときに助けてもらえた体験をしている子どもは、『失敗しても大丈夫』『きっと助けてもらえる』という安心感を持てるようになります。そして、ママやパパをはじめとする自分のまわりにいる人は信頼できると感じられることで、『自分は世界から守られている存在なんだ』と自尊感情も高まります。
最近、子どもの自尊感情の低さが問題視されますが、『自尊感情は、子どもが自分の手で獲得していくもの』とみなされていることが多いように感じます。実際にはそうではなく、周囲の大人から大切に扱ってもらい、自分は価値のある存在だと感じられる体験が先にあるからこそ、結果として自尊感情が高くなるのです」(平野先生)

子どもがつらい思いをしているときに“助ける”ことが、レジリエンスをはぐくむことにつながるようです。でも“助ける”と“先回りして保護する(やってしまう)”の違いが難しそうに思えます。

「ママやパパが大人として正しいと思うサポートをするのではなく、子ども本人のペース、見ている世界、気持ちに寄り添って、子どもが求める助け方をすることが大切だと思います。
たとえば、靴下を自分ではきたいのにうまくできなくて苦戦しているとき、「難しいからママがはかせてあげるね」とやってしまうのは、子どもの気持ちに寄り添っていませんよね。
まず、「うまくはけなくてくやしいね」と子どもの気持ちを代弁して、一緒に落ち込んでみるのがよいかもしれません。すると、ママは自分の思いをわかってくれたと感じ、子どもの気持ちが安定します。この時点で、その子はもうレジリエンスを発揮しているといえます。
そして、「ここは難しいからママと一緒にやってみようか」など、子どもにはハードルが高い部分は一緒にやり、最後の仕上げは子どもに任せ「できたね~!!」と一緒に喜ぶ。こうした一連の体験が子どものレジリエンスをはぐくむことになります。
もちろん、時間がなくてママやパパが手早く済ませる必要がある場面も多々あると思うので、1日中このように対応しなければダメということではありません。でも、余裕のあるときは、ぜひこのようなかかわり方を意識してみてください」(平野先生)

レジリエンスは特別なことをしないとはぐくまれないものではなく、日常生活の中ではぐくむことができるようです。今日から始められそうです。

「レジリエンスをはぐくむのに臨界期(もっとも適した時期)はないと私は考えています。つまり、何才から始めてもいいのです。
生きている限り、落ち込んだり、へこたれたりすることは避けられないけれど、そこから回復する力があれば、前を向いて生きていけるし、いろいろなことにチャンレンジしたいと思えるはず。むしろ落ち込んだことによる遠回りは、その子の人生を豊かにすると思います。ぜひ、子どもと一緒に落ち込みの時間も味わって、レジリエンスをはぐくむ接し方を意識してみてください」(平野先生)

お話・監修/平野真理先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

レジリエンスは逆境でもくじけない強い心ではなく、逆境でくじけたときに立ち直ることができる「心の回復力」。子どものレジリエンスをはぐくむために、親子の信頼関係を深め、子どもの気持ちに寄り添ったサポートしていきましょう。

平野真理先生(ひらのまり)

Profile
東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科講師。東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程修了。博士(教育学)。著書に「レジリエンスは身につけられるか 個人差に応じた心のサポートのために」(東京大学出版会)など。

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