3才ごろからの夜のおもらしは、寝ている間の尿の量が影響【ママ泌尿器科医】
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第14回。前回に続き、テーマは赤ちゃん・子どもの「おしっこ」について。気になる3才ごろからの夜のおもらしのことをくわしく掘り下げます。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#14。
5才未満の夜のおもらしは、病気ではありません
泌尿器科の外来に「夜間頻尿」を訴えて受診される(成人)患者さんは数多くいます。
「そもそも何回からが夜間頻尿なんですか?」と聞かれることがありますが、夜は基本的に一度もトイレに起きないのが正常です。なので、夜に一度でもトイレのために起きているのであれば、「夜間頻尿」になります。
この夜間頻尿の原因ですが、大きく3つに分けて考えます。
【1】寝ている間の尿の量が多い
【2】膀胱にためられる量が少ない
【3】睡眠の問題
そして、これらの原因は、子どもの夜のおもらし(夜尿)にも当てはまります。
おむつがはずれたばかりのころは、夜のおもらしは当たり前ぐらいに考えましょう。子どもの夜のおもらし(夜尿)を病気(夜尿症)としてとらえるのは
・5才以降
・1カ月に1回以上の夜のおもらし
・3カ月以上続く
と国際的な学会で決められています。
なので、4才までの子が頻繁に夜中におもらしをしても「夜尿症」には入りません。
ただし、5才以降も5~6才で20%、小学校低学年で10%、10才を超えても5%前後の子が当てはまるといわれていて、夜尿症はかなり頻度が高い病気であることを知っておいてください。
今回は「【1】寝ている間の尿の量が多いパターン」についてくわしくお伝えします。
まず、いちばんわかりやすいのが、水分の取りすぎパターン。
後半にも書きますが、人間の体は最適な水分量を保つために、尿の量を調節しています。取りすぎた余分な水分は尿として出してしまうだけなので、「水分をとればとるほど体にいい」というのは間違いです。
子どもの夜尿に対しても
・夕食の時間とその際の水分量
→夕食は寝る3時間前までにすますのが望ましい。
・寝る時間と、寝るまでの水分量
→夕食後~寝る前の水分量は200ml以内に。
を確認し、改善点があれば生活の指導をしていきます。
ただし、昼間の水分制限は不要です。子どもにとって脱水はとても危険なので、日中はしっかり水分をとらせてあげてくださいね。
塩分、糖分、タンパク質は尿の量を増やす作用が
寝ている間の尿の量が多いパターンの原因には、「尿の量を増やす食べ物・飲み物」もあります。
塩分や糖分、タンパク質は、体から血管に水分を引き込むことで尿の量を増やします。
なので、夕方から寝る前にかけて、こういった尿の量を増やす食べ物、飲み物を控えることも効果的です。
これらも水分同様、1日中制限する必要はなく、「夕方から寝る前に」控えればいいことに注意してください。
睡眠時の尿の量は、ホルモンの働きにも関係があります
最後は、「尿の量を調節するホルモン」の問題です。
体というのはよくできていて、必要な水分量を自分で調節する機能が備わっています。
「今、水分多いぞ」という状況なら余分な水分を尿として出すし、「水分がたりないな」という状況なら尿を濃縮して尿量を減らします。
そして、夜寝ている間には「抗利尿ホルモン」という「尿を濃縮して量を減らす」役割をもったホルモンが脳から分泌されます。なので、寝ている間は昼間と比べて作られる尿の量は自然と少なくなります。
朝一番の尿はほかのときと比べて色が濃いと思いますが、このホルモンによって濃縮されているからで、正常なことです。
このホルモンが寝ている間にうまく分泌されないと、尿が濃縮されず量が増えてしまい、頻尿やおもらしにつながります。
ホルモン不足によって尿の量が増えている患者さんには、ホルモンを補うような治療薬もあります。
子育て中のお母さん・お父さんたちにとって、おむつはずれ(トイレトレーニング)は大きな関心事であり、時に悩みですよね。
わが家の息子も先日3才になり、パンツですごす時間が長くなってきています。
仕事で疲れているタイミングでおもらししてしまうと、「はぁぁぁ」と内心思ってしまうこともありますが、「全然オッケー!」と平常心での対応を優先、ぬれた衣類の洗濯は翌日以降に持ち越しにしています。
「まだ5才未満だけど不安」「子どもが悩んでいる」という方は、小児科で相談してみてください。
親子で悩んでつらくならないことが大切です。
構成/ひよこクラブ編集部
赤ちゃんが成長すると、トイレトレーニングやおもらしは気になるトピックスですよね。とくに夜間のおもらしは5才ごろまで続く子もいて、ほかの子と比べてあせってしまいがちです。今回は睡眠時の尿の量との関係性について紹介しました。次回も夜間のおもらしにまつわる話をお楽しみに。