妊活にかかるお金を知ろう【専門家監修】
子どもを産んで育てるのはお金がかかるというイメージがありますが、子育て支援は年々手厚くなっています。
「お金のことが心配」というあなたに、ぜひ読んで欲しい最新情報をご紹介!
もらえるお金や教育費の貯め方について、ファイナンシャル・プランナーの畠中雅子先生に解説してもらいました。
【最新】妊娠と出産、育児にまつわるお金と社会の話を知ろう
妊活、妊娠、出産・育児でもらえるお金の最新ニュースを、ファイナンシャル・プランナーの畠中雅子先生に教えてもらいました。
※掲載の情報は、2023年2月のものです。以降、変更されることもありますのでご了承ください。また、助成金、給付金等の要件については一般的なケースで記載しています。ご自分が当てはまるかどうかにつきましては、必ず勤務先や申請先にお問い合わせください。
教育費は生まれてすぐから貯めていけば何とかなる!
子どもにまつわる制度は、拡充の方向に変わっています。子どもの教育費を心配するご夫婦も多いですが、高校までは国のバックアップ制度がいろいろありますので、大学の費用さえ準備すれば、それほど心配することはありません。児童手当をすべて貯めて、遅くとも15才までに払い終える学資保険をプラスすれば、18歳で300万~400万円に。大学の費用の8割は貯められますので、これは生まれたときからしっかりとやってほしいですね。
不妊治療中の人は出産が遅くなり、ライフプランが後ろ倒しになる傾向があります。つまり教育資金と老後資金を同時に貯めなければならない家計になりますので、子どもを授かった時点で、意識を変える必要があります。
いずれにしろ、産後すぐから大学資金を貯めていけば、奨学金を借りなくても子どもを社会に送り出せます。お金のことが心配で、出産時期を遅らせたり、2人目をどうしようかと悩んだりする人もいますが、お金のことだけを考えたら早く産んだ方がいい。悩んでいる時間が、実はリスクです。まさに「案ずるより産むが易し」ですよ。
妊活でもらえるお金っていくら?
高額な費用のかかる不妊治療ですが、2022年4月から保険適用が拡大に。医療保険は妊活前に見直しましょう。
\保険適用前の平均値。今後はさらに減ることに期待!/
妊活にかかったお金は? 平均46万962円(※1)
※1 アートラボ クリニック 渋谷ホームページより
不妊治療の保険適用について知りたい!
2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大に。人工授精、体外受精、顕微授精も窓口での支払いは原則3割ですむようになりました。ただし体外受精や顕微授精の場合、女性には年齢や回数に制限があるので注意。制限を超えると保険適用されず、すべて自費になります。
[不妊治療の保険適用]
自己負担額例(※2)
人工授精 5460円
体外受精・採卵 1個1万6800円
※2 アートラボ クリニック 渋谷ホームページより
■CHECK! 保険診療には適用範囲があります
日本の医療保険は、保険診療と自費診療を一緒に行う混合診療は認められていませんが、「先進医療」として認められた治療は例外的に混合診察が可能。ただし先進医療に認められなければ、保険適用される標準治療まで自費になるので注意。
妊娠したらもらえるお金っていくら?
妊娠中の健診やトラブル時の費用は給付金でまかなえます。働く人は傷病手当金や出産手当金も対象になります。
\受診票をもらっても4万円以上は自己負担になる!/
妊婦健診でかかったお金は?平均4万3209円
【妊婦健診費】もらえる!14回分の受診票
妊婦健診にかかる費用は自治体が助成しています。多くが14回分の受診票を配布。14回分を超えると自己負担が生じることもあります。里帰り先で支払った健診費の一部は、後日申請すれば現金で戻りますが、使わなかった受診票分が現金で戻るわけではありません。
●どこからもらえる?
お住まいの役所の担当窓口に「妊娠届出書」を提出すると、母子健康手帳やマタニティマーク等と一緒にもらえます。
●手続きの流れ
妊娠したら早めに自治体に「妊娠届出書」を提出して。書類にはマイナンバーが必要です。提出したら、受診票などが支給されます。
【高額療養費】もどる!自己負担限度額を超えた分
不妊治療や切迫流産・早産、帝王切開などで保険適用となり、同一月の自己負担額が限度額を超えた場合、超えた分の金額が支給されます。
限度額は年齢や所得で異なり、年収約370万円~約770万円なら、
8万100円+(医療費-26万7000円)×1%となります。
●どこからもどる?
会社員や公務員なら健康保険や共済組合、自営業なら国民健康保険、夫の扶養に入っている人は夫の健康保険から助成されます。
●手続きの流れ
「限度額適用認定証」を取得し、入院中に提示すれば、自己負担額だけでOK。認定証がない場合は、窓口で支払い、2年以内に申請を。
【傷病手当金】もらえる! 日給※×3分の2×(休んだ日数-3日)
出産手当金の対象外の産休前に、つわりや切迫流産・早産などのトラブルで仕事を連続3日を超えて休み(土日祝日含む)、給料が支給されない場合、加入する健康保険から、休業4日目以降分の傷病手当金が支給されます。支給期間は、支給開始日から通算で1年6カ月。
※日給とは標準報酬日額(月給÷30日)を意味します。
●どこからもらえる?
会社員や公務員は、健康保険や共済組合からもらえます。国民健康保険に加入の自営業の人や、夫の扶養に入っている人は対象外。
●手続きの流れ
勤務先の担当窓口に、必要事項を記入した申請書や療養担当者の意見書などを提出。申請期限は休業4日目以降、2年以内。
【出産手当金】もらえる! 日給※の3分の2×産休した日数
産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日の産休中に、加入する健康保険から1日につき、日給の3分の2相当額が支給されます。予定日より出産が遅れたら、その日数分多くもらえます。ただし会社から給料がもらえて、出産手当金よりも多いと対象外になります。
※日給とは標準報酬日額(月給÷30日)を意味します。
●どこからもらえる?
勤務先で加入している健康保険や共済組合から支給されます。自分で健康保険に加入していれば、契約社員やパートでも対象に。
●手続きの流れ
産前産後まとめて申請する場合、産後57日以降、医師か助産師の証明をもらった申請書を勤務先の担当窓口などに提出します。
【失業給付金の受給期間の延長】もらえる!日給※×0.5~0.8(給付率)×日数分
退職すると条件を満たせば失業給付金がもらえますが、妊娠、出産、育児が退職理由の場合、働く意思がないとみなされて、失業給付金を受け取れないまま1年間の受給期間を終えてしまいます。延長手続きをしておけば、受給期間を最長4年まで延長できます。
※日給とは標準報酬日額(月給÷30日)を意味します。
●どこからもらえる?
雇用保険からもらえます。離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上(妊娠が退職理由の場合)ある雇用保険の被保険者が対象。
●手続きの流れ
退職後、離職票持参で退職日翌日から30日経過後の翌日以降早めに住所地を管轄するハローワークへ。代理人や郵送でもOK。
【Q&A】こんなときはどうするの?
【Q.1】妊娠しても仕事は辞めないほうがいい?
【A.1】正社員ならもらえるお金が多くなります
正社員で働き続ける人は、出産手当金や育児休業給付金がもらえるので、やめるときは慎重に。パートでも社会保険に加入していれば、出産手当金がもらえます。自分のもらえるお金を確認してから判断を。
【Q.2】 産休中に退職しても出産手当金はもらえる?
【A.2】要件を満たしていればもらえます
被保険者の資格喪失日の前日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、産休中か受給の権利の発生後に退職という要件を満たせばもらえます。とはいえ復職が前提の制度なので、配慮をお忘れなく。
■CHECK! もらえるお金は支払われるのが遅い!!
出産手当金は産休中の手当ですが、たいてい産後休暇終了後に申請するケースが多いので、お金を受け取れるのは、産休開始から約4~5カ月後。産前産後の4~5カ月は無給になります。また育児休業給付金は2カ月に一度の支給になります。
出産・育児でもらえるお金っていくら?
出産育児一時金や児童手当、乳幼児医療費などがもらえます。育児休業給付金は働く人がもらえるお金です。
\一時金がもらえてもこんなに自己負担が!/
出産・分娩でかかったお金は? 平均21万8265円
【出産育児一時金】もらえる!2023年度から子ども一人につき50万円
妊娠4カ月(85日)以上の出産で健康保険から支給される出産育児一時金が、これまでの42万円から50万円にアップします。多胎の場合は人数分。健康保険から医療機関に直接支払われる「直接支払制度」を利用すれば、退院時は差額分を支払うだけでOK。
●どこからもらえる?
会社の健康保険や共済組合、国民健康保険など加入する健康保険からもらえます。夫の扶養に入っているなら、夫の健康保険から。
●手続きの流れ
直接支払制度を利用できる産院なら、意思確認の書類をもらい記入すれば手続きOK。できない場合は健康保険に請求します。
【児童手当】もらえる!3才未満は月額1万5000円
満15才の3月末までの子どもを育てる家庭に支給されます。3才未満は月額1万5000円、3才以上小学校修了前は月額1万円(第3子以降は月額1万5000円)、中学生は月額1万円です。所得制限を超えると月額一律5000円に。父か母が年収1200万円を上回ると対象外。
●どこからもらえる?
国の制度なので、住んでいる地域の自治体からもらえます。公務員は共済組合の窓口で手続きを。出生届の提出と同時にすませて。
●手続きの流れ
申請書に必要書類を添えて提出。原則、申請月の翌月から支給されますが、出生日や転入日が月末に近い場合は、15日以内ならOK。
■CHECK! 自治体ごとに上乗せ給付も
独自に児童手当を拡充する方針を示す自治体もあります。兵庫県明石市は、18才まで所得制限なしで月額5000円支給する方針。東京都も同様に、所得制限なしで18才まで月額5000円の給付を検討中。
【乳幼児医療費助成】もらえる!かかった医療費の全額または一部
子どもにかかる医療費を自治体が助成する制度。対象年齢や助成内容は自治体で異なります。所得制限があるところも。ただし、どこの自治体も中学校卒業まで助成する方向で、少しずつ対象年齢を引き上げています。また、所得制限も緩和されています。
●どこからもらえる?
住んでいる自治体が助成します。申請には赤ちゃんの健康保険証が必要。生まれたらすぐにパパかママの健康保険に加入させて。
●手続きの流れ
赤ちゃんを健康保険に加入させたら、健康保険証持参で自治体の担当窓口に申請します。後日、乳幼児医療証が交付されます。
【育児休業給付金】 もらえる!月給の67%(50%)×休んだ月数分
1才未満の子(保育所に入れないなどの事情があれば最長2才に達する日の前日まで)を育てるために、育児休業を取得した場合、要件を満たせば、休業開始後6カ月は休業前賃金の67%、6カ月経過後は50%が支給されます。延長する場合は、締め切りに注意しましょう。
●どこからもらえる?
会社員は雇用保険からもらえるので、窓口はハローワーク。公務員は共済組合。多くのケースで勤務先が代理で手続きしてくれます。
●手続きの流れ
育休1カ月前に申請書に必要事項を記入して勤務先に提出。勤務先が産休明けに申請し、2カ月ごとに給付金が振り込まれます。
■CHECK! 「産後パパ育休」がスタート
育児休業とは別に、子どもの出生後8週間以内に4週間まで、分割して2回取得できる「産後パパ育休」(出生時育児休業)が始まりました。産後パパ育休も、育児休業給付金(出生時育児休業給付金)の対象になります。
【医療費控除】もどる!1年間の医療費が10万円を超えたら
家族の年間医療費が一定額を超えたら、医療費控除が適用されて税金が安くなります。医療費控除の対象は、支払った医療費総額から出産育児一時金や医療保険などで補てんされたお金を引き、さらに「10万円」か「総所得金額の5%」のいずれか少ないほうを引いた金額。
●どこからもどる?
医療費控除を受ける確定申告は、住所地を管轄する税務署で翌年1月から手続き。税金を取り戻す還付申告なら申告期限は5年。
●手続きの流れ
確定申告書に医療費の明細書を添えて、住所地を管轄する税務署に申告を。領収書の提出は不要ですが、5年間の保存が必要。
【Q&A】こんなときはどうするの?
【Q.1】育休中は夫の扶養に入れるって本当?
【A.1】妻の収入次第で扶養に入れます
育休中に妻の年収が減ると扶養に入れます※。妻の年収が103万円以下なら配偶者控除、201万5999円以下なら配偶者特別控除の対象になり、夫の税負担は軽減します(夫の年収が1120万円以内)。
※扶養に入れるのは税金のみで、社会保険は本人が被保険者なので入れません。
【Q.2】セルフメディケーション税制はまだ適用される?
【A.2】今後も続く見込みです
家族全員が支払ったスイッチOTC医薬品購入合計額が年間1万2000円を超えると、その超えた額を控除できるセルフメディケーション税制。2021年末までの時限措置でしたが、今後も続く見込みです。
■CHECK! 3~5才児の幼児教育は無償!
幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料は、0~2才児(住民税非課税世帯)、3~5才児は無償になります。バス代、給食代などは自己負担。無償化の対象は、幼稚園は3才になった月から、保育所は3才になったあとの4月から。
※特集内のデータ及び体験談は、2022年11月実施のインターネット調査 n=516(産後の方を対象とした調査)『妊活たまごクラブ』編集部調べ
監修/畠中雅子先生
マンガ/山中玲奈 構成・文/編集部
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。