【専門家監修】申請書見本つき！ 出産手当金は、産休中の生活をサポートしてくれる制度！　対象やもらえる金額、手続き方法

産休中は、働くママの多くはお給料をもらえなくなります。そんな産休中の生活を支えてくれるのが、「出産手当金」という制度。でもすべての働くママがもらえるわけではありません。制度の詳しい内容について、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子先生、社会保険労務士の守屋三枝先生に聞きました。

出産手当金は、どんな制度？

出産を挟んで、産前42日（多胎の場合は98日）・産後56日の休みのことを産前休業・産後休業（産休）といいます。産休中は給料が出ない会社がほとんどなので、その間の生活を支えるために、加入している健康保険から支給されるのが出産手当金です。
勤め先の健康保険に加入している人なら、正社員のほか、パートや契約社員、アルバイトでも対象となります。ただし、原則として、産休後も仕事に復帰するママがもらえる手当です。
出産手当金の支給額は、月給（※）÷ 30日の3分の2。この金額が産休を取った日数分もらえます。産休開始日に産休に入った場合、予定日よりも出産が遅れると、出産手当金が支給される日数が多くなり、逆に予定日よりも早く出産すると、出産手当金が支給される日数が少なくなります。
また、給料の一部が支払われているときは、出産手当金が給料分から減額されます。さらに、出産手当金が支給される間は、出産手当金が優先されるため、傷病手当金の対象となる休みをとっていても支給されません。
ただし、出産手当金の支給が終わったあとも傷病手当金の支給対象となる状態であれば、傷病手当金が支給されます。

※ここでいう「月給」とは・・・出産手当金の支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の「標準報酬月額」を平均した額。「標準報酬月額」とは、基本給に加えて各種手当、残業代などを含んで支給される金額のことで、毎年4、5、6月の３ヶ月間を平均して、１年を通じての「標準報酬月額」としています。4～6月以外に急激な収入の変化があった場合は、年の途中で変更になる可能性もあります。

いくらくらいもらえるの？

「もらえる金額＝月給÷30日×3分の2×産休を取った日数」になります。

・日数の数え方
産休の基本は産前42日＋産後56日＝98日（双子など多胎の場合は、産前98日）

・計算方法の例
「月給が20万円の人の場合」
20万円÷30＝約6670円
約6670円×3分の２×98日＝約43万5800円
＊もらえる金額は、あくまでも目安です。

どんな人がもらえるの？

出産手当金をもらえる人は、「会社員または公務員で、勤務先の健康保険に加入しているママ」になります。
一方、専業主婦や自営業・自由業、パート・アルバイトなどで「国民健康保険に加入しているママ」はもらえません。会社員でも、加入している健康保険が国民健康保険の場合はもらえません。ただし、建設保険組合など、一部の国保組合では出産手当金を支給していますので、気になる方は担当課へ確認してみてください。
なお、出産手当金は本来、仕事を続けるママのための制度ですが、様々な理由で産休中に辞めざるを得なくなった場合、条件を満たせば、退職後の継続受給が可能です。

どうすればもらえるの？

【出産手当金の手続きの流れ】
●産休に入る前に出産手当金の申請用紙をもらう
出産手当金をもらうには、「健康保険出産手当金支給申請書」への記入・提出が必要です。産休に入る前に勤務先または勤務先を管轄する協会けんぽや健保組合で入手します。出産したら医師または助産師の証明を記入してもらう必要があるので、入院するときには忘れずに持参しましょう。

●出産後（入院中）に産院で必要事項を用紙に記入してもらう
赤ちゃんが生まれたら担当医に必要事項を記入してもらいましょう。このとき、文書料として数千円かかる場合があります。

●産後57日以降に書類を勤務先に提出し、必要事項を記入してもらう
申請する用紙には、勤務先が記入する欄もあります。必要事項を記入したら、勤務先の健康保険担当者、または協会けんぽ、健保組合窓口などへ提出しましょう。

出産手当金Q&A

Q.　産休中にお給料がもらえる場合、出産手当金ももらえる？

A.　出産手当金は給料の代わりとして支給されるもの。出産手当金としてもらえるのは、月給÷30日の3分の2。もし会社から給料が3分の2以上出る場合はもらえません。会社から3分の1の給料が出る場合は、出産手当金の日額から給料の1日分の3分の1の差額に当たる金額×日数分が出産手当金となります。

Q.　1年ごとに契約を更新する社員でももらえるの？

A.　出産手当金をもらえる条件は、勤務先の健康保険に加入していること。この条件を満たしていて、産休を取得すれば、契約社員であっても大丈夫です。念のため、更新時期も含めて、勤務先に確認しておいたほうがいいでしょう。

Q.　出産手当金と傷病手当金は、同時に受けられるの？

A.　出産手当金と傷病手当金は、休業補償のために支給されるものであり、同時に受けることはできません。出産手当金を受給している間に病気にかかり、働けない状態になったときは、出産手当金の支給が終わったあと、傷病手当金を受け取れます。
また、傷病手当金を受給している間に出産手当金を受けられるようになった場合には、傷病手当金はいったん支給が停止され、出産手当金の支給が終わったあと、傷病状態であれば再び傷病手当金が支給されます。また、出産手当金が支給されている間に、傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多ければ、その差額が支給されます。

Q.　産前休暇中に有給休暇を使い、その後退職した場合、出産手当金はもらえるの？

A.　退職日前に1年以上の被保険者期間がある人で産休中、あるいは受給の権利が発生したあとに退職（※）すれば、出産手当金の支給対象となります。ただし、有給休暇の消化中は、その間、勤務先から給料が支給されていることになります。退職日の翌日から給料が出ないので、その日以降の分が受給できます。
※退職日に出勤していないことが条件になります。

出産手当金申請書の実物はこんな感じ

一般企業で健康保険に加入している人が使用する「出産手当金申請書」の見本です（様式は健康保険の機関・組合によって多少異なります）。実際に記入する際の参考にしてください。
※マイナンバー制度などにより、書類形式が変更になる可能性もあります。

（1）被保険者の氏名は、提出時の姓。住所も現住所（住民票と同じでなくても可）です。
（2）振込用の銀行口座は事前に開設しておきましょう。
（3）給付金の受取を代理人に委任する場合は、委任者と受取代理人それぞれの署名・押印が必要です。
（4）予定日と出産日、２つの欄があるので両方記入します。
（5）実際に休み始めた日を記載します。
（6）終了日は実際の出産日の翌日を1日目として56日目の日付を書きます。
（7）出産のため休んだ期間に勤務先から報酬（有給休暇など）の支払いを受けたときは、対象期間と金額について記入してください。
（8）産院で証明をもらったら、必ず記入もれ、押印もれがないか確認しましょう。記入もれがあった場合、産院に再度書いてもらわねばなりません

※詳細は勤務先や勤務先の健康保険の担当窓口、協会けんぽなどにお問い合わせください。
※記入を訂正するときは訂正印が必要です。

会社などで働くママにとって、産休中のお給料の代わりとなる出産手当金の存在は、心強いですね。産休に入る前に、仕組みや手続きをしっかり頭に入れておき、スムーズにもらえるようにしておきましょう。
なお、この記事の内容は2022年10月現在の情報に基づいて記載しています。ご自分が当てはまるかどうかについては、必ずパパかママの勤務先の担当者もしくは担当窓口にお問い合わせください。

（文／たまひよONLINE編集部）

●記事の内容は記載当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

監修／畠中雅子 先生

監修／守屋三枝先生

初回公開日　2019/08/10