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小児・周産期医療の中心、国立成育医療研究センターが20周年。日本に約50名しかいない、子どもの精神的な不安に寄り添う専門職も。

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国立成育医療研究センターは、小児周産期のすべての病気に対処できる内科系・精神科系・外科系など28の診療科を有し、小児・周産期病院としては国内で最大規模の施設です。国立小児病院を前身とし、国立大蔵病院と統合して2002年に開設されてから今年で20周年を迎えます。
それを記念して、診療内容や施設の様子を紹介するオンラインイベントが開催されました。どんな施設なのか、子どもの健康のためにどんな取り組みをしているのかなど、イベントの内容をリポートします。

小児医療の中心、成育医療研究センターの今までとこれから

救急外来の壁には海の生物のホスピタルアートが描かれている。

イベント冒頭には、理事長の五十嵐隆先生から国立成育医療研究センター(以下成育医療センター)のこれまでの歩みと今後の課題についての話がありました。

「1965年4月、世田谷区太子堂に日本初の小児専門病院である国立小児病院が設立され、長く小児医療の中心的な役割を果たしてきました。1985年には研究部門として小児医療研究センターを併設。病院と研究所が一体となって、健全な次世代を育成するための医療と研究を推進してきました。そして2002年3月、建物の老朽化のため、国立大蔵病院と統合して世田谷区大蔵に国立成育医療研究センターと改名し開設、日本で5番目の国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)として活動が始まりました」(五十嵐先生)

小児・周産期医療に対するニーズの変化によって、今後課題とされていることは身体的健康だけではない、と五十嵐先生は言います。

「国立小児病院の設立当時に課題とされていた難治性疾患等の救命率をあげることや病気の治療を発展させることは、現在までにその多くが達成されてきました。
2020年のユニセフのリポート(※)によると、経済的に豊かな38カ国中、日本の子どもの身体的健康度は世界1位であった一方で、心理的健康度の評価順位は37位でした。ここに、日本の子どもの健康状態の課題が如実に示されているのではないかと思います。
これからの小児周産期医療は身体的健康だけを目指すのではなく、子どもや妊婦さん、そしてその家族が、心理的にも社会的にも健康であることを目指すことが必要と考えます」(五十嵐先生)

院内は子どもが安心できる工夫がいっぱい!

MRI検査の機械は大きなドーナツのデザイン。

子どもの病気の治療のためには、X線などの検査や手術が必要なこともあります。検査などでママやパパから離れても子どもが安心できるように、病院内の施設にはさまざまな工夫がされています。院内の施設について、病院長の笠原群生先生が解説してくれました。

「病院内の壁や天井には、空を飛ぶ鳥の絵や海の中の絵などが描かれ、子どもたちがリラックスできる環境を提供できるように工夫しています。今は新型コロナウイルスの影響で使えないところもありますが、積み木や遊具のあるプレイルームやキッズトレインなどもあります。
CT室などの検査室では、部屋に入ると泣いてしまうお子さんもいるんですが、診察台の真上にビデオモニターを設置していて、そこにビデオを流すとピタッと泣きやんでくれることもあります」(笠原先生)

病院にはそのほかにも、クラウドファンディングや寄付によってイルミネーションやホスピタルアートが設置されているそうです。

「病院の庭や木に、クリスマスの時期にともされるイルミネーションやオブジェはとても好評です。またICU(集中治療室)と救急外来の壁には、キリンやゾウ、ホッキョクグマやペンギンなどのホスピタルアートが描かれています。これらの設備は、けがや体調不良で受診する患者さんや、看病にきているご家族の心も温かくしてくれていると思います」(笠原先生)

チャイルドライフスペシャリストって?

看護師(右)と一緒に、人形やイラストで治療のことなどを説明するチャイルドライフスペシャリスト(左)

成育医療研究センターでは、医師や看護師以外にも専門の資格を持ったさまざまなスタッフが働いています。日本で49名(2022年5月現在)の「チャイルドライフスペシャリスト」のうち、4名がここで活躍しています。その仕事内容について、総合診療部総合診療科の島袋林秀先生が解説してくれました。

「病院に入院することになったら、おうちとも学校とも違うし、家族と離れる時間ができるし、ママやパパは心配そうな顔をしているし、知らない大人がたくさんいるし、何をするかよくわからないし、お子さんにとっては緊張してしまうことでしょう。

当センターのチャイルドライフスペシャリストは、入院する子どもにイラストや人形などを使って、『病院はこんなことをするよ』『入院するとこんな検査があるよ』などと話をします。涙が出る気持ちやおうちに帰りたい気持ちなど、子どもの不安や心配を大切に聞いて寄り添い、どうしたら頑張れるかを相談しながら一緒に考えます。子どもや家族が抱える精神的な負担を少しでも軽減できるように、そして主体的に診療に臨めるような手助けをしてくれています」(島袋先生)

妊娠期から産後まで専門スタッフが連携してサポート

24時間態勢で無痛分娩の麻酔に対応する産科麻酔専属の医師

成育医療研究センターでは、妊娠以前から、将来の妊娠を考えながら生活や健康に向き合うための「プレコンセプションケアセンター」を開設しています。母性内科の荒田尚子先生がこれから妊娠・出産を考えている人に向けて話をしてくれました。

「女性のやせすぎや肥満は、早産の原因になったり、赤ちゃんが低出生体重で生まれ、その子が将来病気になるリスクも出てくるため、適正体重を知りキープすることが大切です。また、喫煙や受動喫煙を避ける、アルコールを控える、感染症から自分を守る、なども自分や未来の子どもの健康のためにも大切なこと。妊娠に関する正しい知識を得て、健康的な生活を送るためのプレコンセプションケアの資料はホームページに公開しているので、詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください」(荒田先生)

また、周産期・母性診療センターでは、助産師や看護師、産科医師以外にも、新生児科医師や麻酔科医師、母性内科の医師やNICUの看護スタッフが連携して、ママや赤ちゃんのサポートを行うことができるのも心強い点です。そのメリットについて助産師の三浦加奈さんが話してくれました。

「妊娠・出産は病気ではありませんが、最後まで何があるかがわからないのがお産です。大量に出血してしまったり、赤ちゃんへの治療が必要となったりした場合に、各専門スタッフが連携してサポートできるのは、小児の総合病院でもある強みです。
また、無痛分娩にも力を入れていて、産科麻酔専属の医師が24時間態勢で無痛分娩の麻酔を対応しています。一般的には無痛分娩を選択すると、誘発分娩日の予定を決めなくてはならないことが多いですが、当院では麻酔科医の勤務時間帯に出産のタイミングを合わせるのではなく、赤ちゃんが生まれるタイミングで分娩に臨めることは大きなポイントだと思います」(三浦さん)

画像提供・取材協力/国立成育医療研究センター 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

2022年4月には、すべての子どもたちが笑顔になれる社会を作ることを目標に「成育こどもシンクタンク」を設立したそうです。病院長の笠原先生は「病院と研究所だけではなく、子どもたちの声を聞き、理解し共感を持って、医療・研究を続けていくこと、さらに子どもたちの声を社会に伝えていく役割があると考えています」と話します。

成育医療研究センター「20周年記念イベントのアーカイブ配信を開始しました。」

※成育医療研究センター「プレコンセプションケア資料」

※ユニセフ報告書「レポートカード 16:子どもたちに影響する世界-先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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