名づけのエキスパートが語る!「赤ちゃんの名づけ最新トレンド」「戸籍法の改正で名づけに変化が起こる?!」
「赤ちゃんに最高の名前をプレゼントしたい!」というママやパパの願いに応えるべく、たまひよの名づけ監修といえばこの人・栗原先生、たまひよ広報担当・松崎、雑誌たまごクラブ元編集長・中西の3名が、最近の名づけトレンドについて、語り合ったスペシャルトークをお届けします。歴代不動の人気名前がある一方、ジェンダーレスなどの気になるムーブメントにも注目です。
今回話し合ったのはこの3人
PROFILE
栗原里央子先生
豊富な占いの知識を基に、たまひよの名づけに関する企画すべてを監修している。
たまひよ広報 松崎
たまひよの広報を担当して長年名づけランキングにも携わり、トレンドに敏感に。
たまごクラブ元編集長 中西
たまごクラブ編集部歴28年。名づけの変化を見続けてきた長屋のご隠居的存在。
過去19年間で見た、人気の名前の傾向は…⁉
中西 今回は、これから赤ちゃんの名前を考えようというママとパパに、最新の名づけトレンドをお伝えしよう!という座談会です。
松崎 たまひよ30周年ということで、昨年は過去19年間の総合ランキングも発表しました!それでは男の子は1位「蓮」2位「大翔」3位「悠真」、女の子は1位「陽菜」2位「葵」3位「凛」でしたね。
栗原先生(以下敬称略) 「蓮」や「凛」は昨年(23年)の男の子1位(蓮)、女の子2位(凛)にも入っています。昔から人気の字って、ありますね。
今どきの名前は音数減少傾向!?
中西 その「蓮・凛」以外にも、昨年ランキングではトップ10に男の子では「碧」「湊」「蒼」「凪」「暖」「律」、女の子では「翠」「紬」「葵」と、1字名がますます人気になってます。
松崎 とくに、男の子の1字名人気は増している気がしますね。
栗原 文字数だけでなく、音の数も、最近は少なくなってきていませんか。昔は男の子だと「だいすけ」とか「まさひこ」のような4音や「ゆうじろう」のような5音も多かったですけど。
松崎 確かに、最近は2~3音が多数派かも。
栗原 呼びかけやすさが、さらに重視されているように思います。そして前は「ゆうた」という名前なら愛称は「ゆう」…という具合でしたけれど、最近は愛称と名前がイコールになってきていて、それで音数が減少傾向なのではと。ある意味、合理的な傾向ですよね。
松崎 昨年の調査(複数回答)でも、名づけで重視したことは、「読み・音の響き(約62%)」が「画数(約45%)」「漢字の意味(約44%)」より上位でした。
中西 「読み重視」はここのところずっと続いている傾向ですね。女の子は以前から「ひまり」「さき」のような2~3音が多かったですが、男の子がそちらに寄ってきた感じなのかな。これも時代の流れ、ジェンダーレス化現象なんでしょうか。
松崎 ジェンダーレスといえば、「あおい」「ひなた」「つむぎ」などは男女どちらにも人気のある名前であり、そういう名前が増えているように思います。
中西 妊娠中に赤ちゃんの性別がわからなくても、どちらでもいいように…とつけるパターンもありそうです。
栗原 ジェンダーレスな名前は、これからますます増えそうな予感がしますね。
ドラマやマンガ、コマーシャルはどこまで影響する⁉
松崎 23年の名づけランキングでは、「紬」「湊斗」「想」が大きくランクアップしたことに、人気ドラマ『Silent』が影響しているのでは?と話題になりました。
栗原 以前は、人気の有名人と同じ名前をつける…という“あやかり名前”も多かったですよね。
中西 有名なところでは、80年代、野球選手の荒木大輔さんが活躍したときにあった「大輔ブーム」とかですね。
栗原 最近は、そういう有名人が元になった人気名前はあまり見なくなりました。
松崎 皇室の悠仁さまがお生まれになったときに「悠」が躍進しましたが、それ以降はこれ!というものはないようです。23年も、従来通りなら大谷翔平さんにあやかった「翔平ブーム」とかあっても不思議じゃなかったと思うけれど、最新ランキングで100位以内にも入ってない。時代は変わったというか…。
中西 “有名人あやかり名前”はあまり見なくなりましたが、ドラマやマンガなどの創作物を参考にするというのは今もある気がします。ちなみに個人的には、鉄板の人気名前「蓮」は、マンガ『NANA』(矢沢あい作)に登場するヒロインの恋人の影響があるとにらんでいるんですが。
松崎 “蓮”くん、かっこいいですよね。笑
中西 『NANA』の連載当時のコア読者層が、ちょうど妊娠・出産をする世代になって、現在の「蓮」ブームを下支えしているのではないか…と。実際、たまごクラブの読者アンケートでも、ちらほらそういう意見は見られますし。
栗原 妊娠中ジャストタイムに流行したものじゃなく、ママやパパの青春時代に流行したものが影響している可能性を考えるのもおもしろいですね。
松崎 直接そのドラマやマンガにあやかってなくても、頭の中に「なんとなくステキな名前」としてインプットされて、名づけのときに無意識に思い出す…ということもありそうな気がします。
中西 それを言うなら、ちょっとおもしろい例がありますよ。「碧」と「翠」です。
栗原 どちらも、最近人気急上昇の注目名前ですね?
中西 このふたつ、実はお酒の名前でもあるんです。「碧」は2019年、「翠」は2020年に新製品として発売されて、コマーシャルもよく流れてました。
松崎 まさか、お酒の名前をそのまま赤ちゃんにつけるとは思えませんが…。
中西 確かにそれはないと思います。でも酒造会社さんが考えに考えてつけたであろうだけに、ネーミングセンスいいですよね。響きも意味も字体もステキな漢字として、コマーシャルなどを通して脳内にインプットされた人は多かったのかも…なんて。
栗原 ドラマやマンガ由来と思える名前も、直接ではなくて、一旦いいイメージで記憶されたものが、名づけに間接的に活かされることは、確かにありそうですね。
戸籍法の改正でオリジナリティー減?
中西 戸籍法が一部改正されて、令和7年春ごろから戸籍の氏名に読み仮名も記載されることになりました。
松崎 今までは自由とされた名前の読み方に、一定の基準も設けられることになりましたね。出生届を提出しても、読み方を理由に受理してもらえない…ということも、極端な場合はあり得ちゃうんでしょうか。
中西 あて字でも「翔」を「と」と読むとか、「央」を「お」と読むとかは、もはや「“新”名のり※」とでも呼びたくなるほど、かなり一般的になっている気がします。
栗原 詳しいことはこれからの動きを注視することになりますが、漢和辞典で本来の読みや名のり※を確認する人や、あて字に不安を覚える人は増えそうですね。ある程度、オリジナリティーにブレーキがかかることになるんじゃないでしょうか。
中西 法務省でも、はっきりとした方針はこれから示す方針のようです。いずれにせよ、読みやすくて思いのこもった、赤ちゃんがしあわせになれる名前をつけられるといいですね。
※名のり:漢字の読み方で、名前としてのみ使える読み方のこと
文・構成/たまひよONLINE編集部 イラスト/鈴木七代
●記事の内容は2023年3月の情報で、現在と異なる場合があります。