「飲み忘れた」「食事の時間が不規則で服用できず」起こりがちな薬のトラブル、対処法を薬剤師が解説
薬の効果を引き出して、副作用のリスクを抑えるためには、適切な服用間隔を守ることが重要です。しかし、指示通りに服用したくても、ついタイミングを逃してしまうことがあるかもしれません。今回は薬の適切な服用タイミングと、服用時間がずれてしまった場合の対処法などを解説します。
薬の服用時間が定められている理由
薬の服用時間が定められているのは、薬の効果をしっかりと引き出したり、副作用が出ないようにしたりするためです。服用した薬は胃や腸から吸収され、血液中に溶け込んで初めて効果を発揮します。服用のタイミングを一定にすると、血中薬物濃度が適切な範囲内で維持されやすくなるため、薬の効き過ぎによる副作用や効果不十分などのトラブルを避けることにつながります。
薬の吸収速度や血中濃度は食事のタイミングや1日の服用回数によって変動するため、これらの要素を考慮して、薬ごとに服用時間や回数が決められているのです。
服用のタイミング・1日の服用回数別の時間間隔
多くの内服薬は、食前・食後・食間や就寝前などに服用するよう指示されます。食前とは、食事の約30分前までに服用することです。食事の前、つまり空腹時に服用すると、薬の吸収が早まって効果が短時間であらわれるケースがあります。
食後は、食事後約30分までに服用することです。食後の服用には、胃への負担を軽減したり、飲み忘れにくくなったりといったメリットがあります。(※1)また、食間は食事と食事の間、実際には食事の約2時間後に服用することであり、食事中に飲むという意味ではないので注意しましょう。就寝前は就寝の約30分前を意味しています。
1日の服用回数が決まっている場合、次の服用までの時間間隔も大切です。一般的に、1日1回服用する薬は8時間以上、1日2回の服用では6時間以上、そして1日3〜4回の服用では3時間以上の間隔を空けることが推奨されています。しかし、これらの服用時間はあくまでも目安であり、個々の薬によって異なる場合があります。
服用時間が不規則になる状況別の対処法
つい飲み忘れてしまったときや食事を決まった時間通りに摂れなかったときなど、服用時間が不規則になった場合の対処法を紹介します。
薬を飲み忘れた
飲み忘れたときの対応は、薬の種類や気づいたタイミングによって異なります。安全のために、まずは処方医や薬剤師に確認しましょう。
一般的には、本来薬を飲む時間からそれほど経たないうちに気づいた場合は、飲み忘れた分をすぐに服用するよう指示されることが多いです。(※2)一方で、次の服用時間が迫っている場合には、1回分抜かして次の服用分から飲むよう指示されます。
次の服用までの時間間隔は、1日1回の薬は8時間以上、1日2回の薬は6時間以上、1日3回の薬は3時間以上が目安です。なお、2回分をまとめて服用してはいけません。自己判断を避けて処方医・薬剤師に相談することを最優先としましょう。
食事の時間が不規則
薬は指示通りのタイミングに飲むのが理想ですが、生活リズムや体調不良などでやむをえず不規則になってしまうことがあります。このような場合は、まずは処方医または薬剤師に相談しましょう。薬の種類によっては、食前・食後・食間など、服用時間が厳密に定められているものがあるので注意が必要です。
なお、実際には食後などと指示されている薬でも、食事と関係なく服用できるものもあります。(※3)たとえば、一般的な抗生物質は食後に飲めない場合でも、服用間隔を空けて決まった回数飲むことが大切です。薬ごとの判断は非常に難しいため、必ず事前に処方医や薬剤師に相談してください。
正しい服用方法で安全に服用しましょう
薬を安全に服用するには、決められた用法・用量を守ることが大切です。飲み忘れた場合や食事のタイミングからずれてしまった場合には、まずは処方医や薬剤師に確認しましょう。
一般的な薬は、食前・食後などの指示から多少ずれても問題ないことがほとんどです。ただし、服用間隔などの注意点は薬によって異なり、厳密に指示を守らなければならない場合もあります。自己判断を避け、専門家に相談することが重要です。
<参考文献>
※1 国立大学法人千葉大学総合安全衛生管理機構「SHO健康だより」
※2 全国健康保険協会「お薬を飲み忘れてしまったら」
※3 一般社団法人島根県薬剤師会「おくすり全般(一般的な質問)」
PROFILE
あんしん漢方薬剤師
山形 ゆかり
薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ入り、牛角・吉野家他薬膳レストランなど15社以上のメニュー開発にも携わる。
症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホひとつで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。