【医師が解説】妊婦が貧血になりやすい理由&胎児・出産・産後への影響は?
妊娠すると体にさまざまな変化が起こります。中でも、貧血は多くのママがなりやすく、そのままにしてしまうとおなかの赤ちゃんやママ自身にも影響が。貧血が起こるしくみと対策について、産婦人科医の濱木珠恵先生、月花瑶子先生に伺いました。
どうして妊娠中は貧血になりやすいの?
「妊娠すると、血液量が約1.5倍に増加します。このとき赤血球も増えますが、それ以上に液体の部分が増えるため、血液がサラサラした水っぽい状態になります。
さらに妊娠中は、ママの栄養素が優先的におなかの赤ちゃんに運ばれるしくみになっています。母体にある鉄分は赤ちゃんに与えられるので、鉄分の必要量が大幅に増加。妊娠前よりも多くの血液、鉄分が必要になるため、妊娠中は貧血になりやすいのです。そのため、もともと貧血気味の妊婦さんや、食事で鉄分がとれていない妊婦さんは、より貧血が進行してしまいます。
また、妊娠中の貧血の多くは鉄分が不足する鉄欠乏性貧血ですが、まれに葉酸、またはビタミンB12が不足して起こる葉酸欠乏性貧血もあります」
貧血の状態は妊娠・出産にどんな影響があるの?
妊娠中から産後まで、ママが貧血状態になることで、おなかの赤ちゃんやお産、産後の生活に与える影響を時期別にまとめました。
妊娠中:胎児への影響
血液検査で、貧血と診断される「ヘモグロビン値11.0g/dl」を大幅に下回る「6.0g/dl」になると、胎児の発育不全や早産などが心配されます。
出産:お産が長引く可能性がある
貧血が重いと体力が低下します。すると、効果的な陣痛がつかず、お産が長引く可能性も。また、出産時の出血が多かった場合に貧血が進み、産後の体力に影響する心配もあります。
産後:ママの体力回復が遅れる傾向に
産後、ママの血液量や循環は通常に戻りますが、分娩での出血でだれもが貧血傾向に。また授乳によって鉄分が排出されます。この時点で貧血状態では、体力の回復がさらに遅れることも。
貧血と診断されたら、食事療法とあわせて鉄剤服用を
「産院の方針や、医師の考えにもよりますが、貧血の診断基準を少し下回っている場合、まず鉄分の多い食事をとるよう食事療法が指導されます。
その後の血液検査で貧血が進んでいた場合、食事療法に加えて鉄剤が処方されます。鉄剤は吐きけや、胃の不快感、便秘などの副作用をうったえる人も。鉄剤は種類の変更が可能な場合もあるので、勝手に服用を中止せずに、医師に相談してみましょう」
貧血を予防・改善する食事療法についても伺いました。
鉄分を多く含む食品を積極的にとる
妊娠中は、意識して鉄分を多く含む食材を選ぶ必要があります。
鉄分には肉や魚の赤色の部分に含まれる「ヘム鉄」と、豆、野菜などに含まれる「非ヘム鉄」があります。
「ヘム鉄」は体への吸収率が高く、「非ヘム鉄」は体への吸収率が低いのが特徴。これらを含む食材を、毎日の食事に取り入れましょう。
ゆっくりよくかんで1日3食規則正しく
一般的にエネルギー摂取量と鉄分の摂取量は比例しているといわれ、1食抜いたり、お菓子で済ませたりすると、鉄分の摂取量が減ってしまいます。
また、鉄分は毎日使われるので、毎日補う必要があります。1日3食、鉄分をはじめとして、栄養をバランスよくとりましょう。ゆっくりよくかんで食べれば、消化吸収も高まります。
おやつも鉄分入りをチョイス
毎日の食事で鉄分をしっかりとるのが理想的…とわかっていても、なかなか難しいもの。そんなときに役立つのが、鉄分入りのおやつ。間食も、栄養補給のチャンスになります!
もともと女性は鉄分が不足気味。自分は大丈夫と思わず、おなかの赤ちゃんの健やかな成長とママ自身の健康のためにも、鉄分を積極的にとるように心がけましょう。(文・たまごクラブ編集部)
■監修/ナビタスクリニック新宿 院長 濱木珠恵先生、杉山産婦人科 新宿 月花瑶子先生
■参考:『たまごクラブ』2018年7月号「妊娠中の“貧血”解消しないと危険です!」