【医師監修】不全流産の原因、症状について知りたい
ana belen prego alvarez/gettyimages
流産は、その症状や超音波検査でわかる様子でいくつかに分けられますが、そのひとつが「不全流産」です。兆候としては、出血や下腹部痛などがありますが、症状があるからといって流産になるとは限らず、問題のないケースもあります。症状だけでは判断できないため、産婦人科を受診し、診察してもらう必要があります。埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターの江良澄子先生に解説してもらいます。
不全流産とは? 原因は?
流産は「不全流産」のほかに、「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」「進行流産」「完全流産」などに分けられます。それぞれ、自覚症状の有無や状態などによって区別されるのですが、不全流産は、超音波検査で胎児の心拍動や、胎児が確認できず、出血や下腹部痛があるものの子宮内に胎児や卵膜(らんまく)などが完全に排出されずに、一部が残っている状態をいいます。
不全流産を含め、流産の多くは妊娠12週未満に起こる早期流産です。その原因の多くは胎児側によるものです。受精卵の染色体異常であることが最も多く、もともと成長する力が備わっていなかった運命的なもので、残念ながらなってしまったらとどめることはできません。一方、妊娠12週以降22週未満に起こる流産は、後期流産となりますが、母体側に原因があるケースもあります。
流産の原因・胎児側
精子と卵子のどちらかが、たまたま異常を持っていた場合、育つことができない受精卵が発生します。とくに卵子の異常は加齢によって増える傾向があるため、妊娠する女性の年齢が高くなればなるほど、流産の確率や染色体異常の赤ちゃんが生まれる確率は高くなります。また、たとえ正常な精子と卵子が受精したとしても、その後の過程で異常が生じることもあります。受精卵の異常は偶然起きてしまい、だれにも起こりうることです。
流産の原因・母体側
子宮そのものの奇形(形態異常)や子宮腺筋症、体質的に子宮頸管(しきゅうけいかん)が開きやすい(子宮頸管無力症・しきゅうけいかんむりょくしょう)などの病気があると、流産に至る原因になることがあります。また、子宮筋腫が子宮の内側にあり子宮内腔が変形するような状態も、流産の原因になる場合が。ただし、子宮の形態異常があっても細菌感染の併発がなく、赤ちゃんの心拍が確認できれば問題ありません。また、赤ちゃんを包む膜が感染を起こす絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)も流産を引き起こす原因として挙げられます。そのほかに内分泌疾患や黄体機能不全なども考えられます。
不全流産の兆候や症状は? 出血があったらどうしたらいい?
妊娠初期は出血しやすく、おなかの違和感を感じることも多いものです。出血や腹痛があったからといって、必ずしも流産の兆候とはいえず、産婦人科で診察をしてみないとわかりません。不全流産の兆候としては、下腹部の痛みが強くなったり弱くなったり、陣痛に似た痛みを感じることもあります。少量またはそれより多い出血が続いたり、大量に出血することも。出血量が生理の2日目のように多い、出血量が増えていく、腹痛が強くなる場合はすぐに産婦人科を受診しましょう。
不全流産の処置の方法は?
出血などがあり、流産が疑われる場合、超音波検査で胎児の心拍や子宮内の様子を調べます。そこで胎児の心拍が確認できない、胎児が見えない、胎嚢が消失し、異所性妊娠の可能性もない場合は流産となります。
不全流産は、子宮内に胎児や卵膜などがとどまっている状態で、そのままにしておくと大量出血や感染症などを起こすリスクがあるため、子宮の中をきれいにする子宮内容除去術という手術を行うのが一般的です。日帰りで行うケースもありますが、子宮頸管を広げる処置を事前に行うため、入院が必要になる場合もあります。
また、手術をせず、自然に子宮の内容物が排出されるのを待つ、「待機」という選択ができる場合もあります。自然に排出され流産が終了した「完全流産」となるのを待つということです。手術と比べ金銭的な負担が少ないというメリットはありますが、いつ排出されるかわからず、突然の腹痛や出血が起こり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。また、長い期間待機したものの排出されないため、手術が必要になる可能性も。医師と相談の上、流産の状況やリスクも考えて、よりよい方法を選択しましょう。
子宮内容除去術はどんなことをするの?
一般的に、妊娠12週未満に起こった不全流産の処置として、子宮内容除去術を行います。手術自体は10分程度で済むため、日帰りで行う場合もあります。ただし、施設によっては前日に子宮頸管を広げる処置を行うことがあり、1泊2日の入院になることも。どちらになるかは、病院に確認しましょう。
入院から手術、退院まで
●入院
1泊2日の場合、前日に子宮頸管を広げる処置をして、翌日に手術をして帰宅するケースや、午前中に入院し、午後に手術を受けて、翌日退院になるケースなどがあります。
●手術
手術直前には超音波検査で流産していることを確かめます。麻酔は点滴による静脈麻酔が一般的。眠っている間に手術は終了します。
●退院
術後は病室で数時間安静にします。麻酔の影響がなくなれば退院できますが、出血量や体調なども考慮した上で判断されます。術後1週間程度出血は続き、その間は子宮収縮剤や感染症予防の薬を服用します。
●術後
手術を受けたあとは、約1週間後に検診があり、子宮の回復具合を確認します。出血が続く長さや量には個人差がありますが、1~2週間程度で収まることがほとんどです。ですが、それ以降も出血が続いたり、血のかたまりが出たり、腹痛や発熱が見られたりする場合は、受診しましょう。シャワーは退院翌日からOK
ですが、入浴は検診で医師の許可が出てからにしましょう。また、仕事については、術後2~3日は安静を指示されることが多いため、その期間はなるべく休みましょう。復帰後しばらくは無理しないように。
不全流産後はどう過ごしたらいいの? 生理や妊活の再開についても教えて!
個人差はありますが、月経は子宮内容除去の手術後1カ月くらいで再開することが多いでしょう。セックスはそれまでは避け、次の妊娠は月経が2~3回来てからのほうが、子宮の状態も安定してより安心と考えられています。ですが、生理の周期など個人差もあるので、どのくらい待ってから次の妊娠に臨めばいいかは、医師に確認しておくといいでしょう。あまりあせらず、きちんと気持ちと体が回復してから、次の妊娠に臨むほうがいいかもしれません。流産を経験しても、順調に子宮が回復すれば、次の妊娠に影響を及ぼすことはないので心配いりません。
不全流産を経験したママの体験談
「初めての妊娠で不全流産を経験しました。妊娠したら当たり前に出産できると思い込んでいたので、とてもショックでしたが、よくあることだからこそ、無事に生まれてくることが当たり前ではなく、奇跡なんだと気づかされました。」
「こんな私でも妊娠できるんだって教えてくれてありがとう。短い間だったけれど、お母さんにしてくれてありがとう。今回はうまく育てない身体だったから、いったんお空に帰っただけだよね? きっと、元気に走り回りたかったから帰ったんだよね? 私、待ってるから、丈夫な身体を手に入れて、きっとまた戻ってきてね。」
「命の尊さを教えてくれるため、親になる覚悟を意識させるために、きっと来てくれたんじゃないかと思いました。すべてのことに意味がある。無駄なことなんてひとつもない。今回のこともきっと意味があったんだ! そして、子宮の中をきれいにする手術を受け、生理が再開したと思ったら、2回目の生理が来ず、再び妊娠していました。今小学校2年生です」
めずらしいことではないとはいえ、赤ちゃんの成長を楽しみにしていたママにとって流産を受け止めるのはたやすいことではありません。まずは回復をいちばんに考えて、悲しい気持ちはパパや家族、病院にスタッフに相談してみましょう。そうすることで次の妊娠を前向きに考える一歩が踏み出せるかもしれません。(文/たまごクラブ編集部)
■文中のコメントは、『ウィメンズパーク』の投稿からの抜粋です。
初回公開日 2018/07/02
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