妊娠中のおなかの張りや痛み「これって産院に連絡する?」緊急度の見分け方
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妊娠中のおなかの張りは、子宮が収縮することによって起こります。多くの妊婦さんが経験する症状ですが、中には危険なものも。痛みがあるなど、いつもと様子が違うと感じたら、すぐに産院に連絡しましょう。今回は、お腹の張りや痛みについて、危険なサインと緊急度の見分け方を産婦人科医の中川一平先生に伺いました。
おなかの張り・痛みの主な原因とは?
おなかの張りや痛みは、子宮が大きくなるときの生理的な現象であることがほとんどですが、中には動きすぎたり、感染症によって張りが出てくることもあり、危険なものもあります。
子宮が大きくなるときの生理的な現象
子宮は、子宮の筋肉が伸び縮みをしながら大きくなります。このときの収縮が”張り”で、生理的な現象です。妊娠28〜30週ごろから頻繁に起こりますが、張りや痛みの間隔が不規則で、安静にしていれば治まります。
危険!絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)
膣炎や子宮頸管炎を発症し、卵膜(絨毛膜・羊膜)まで細菌が達して炎症が起こるのが、絨毛膜羊膜炎です。前兆は、おりものの色やにおいの異常。強い子宮収縮や破水を招き、流産・早産につながる恐れがあります。
疲労・ストレス・体の冷え
「疲れた」という自覚がなくても、長時間の立ち仕事や過度な運動によって負担がかかり、おなかが張ることがあります。また、精神的なストレスや体の冷えが原因で、子宮が収縮することもあります。
赤ちゃんが動いたことによる刺激
筋肉は動くと収縮する性質があります。そのため、おなかの赤ちゃんが動いて、子宮の筋肉に刺激を与えることで、おなかが張ることがあります。生理的な張りなので、安静にして治まれば心配いりません。
妊娠37週未満に起こる「強い」「長い」「規則的」な張りには注意
おなかの張りは、子宮の収縮によって起こります。
「子宮がキューッとかたくなる」
「おなかの中で風船をふくらませた感じ」
「痛みがある」
などが特徴です。安静にして治まるようであれば生理的な張りですが、「強い」「長い」「規則的」な張りの場合は陣痛につながる可能性があって危険。とくに妊娠37週未満は、流産・早産につながる恐れがあります。
おなかの張り・痛みがあった場合の行動マニュアル
おなかの張りや痛みを感じたときは無理をせず、まずは安静に。約30分、様子見しましょう。
1.立ち止まって深呼吸。いすに座るか横になる
横になれる場合は、左側を下にするシムスの体位で休んで。外出先の場合は、おなかを圧迫しないよう、いすに座ります。
2.出血していないか確認
出血は重要な危険サインのひとつ。量や色、かたまりがないかの確認を。破水の有無もチェックして。
3.30分程度治まらなければ、産院に連絡
30分休んでも治まらず、周期的な張りや痛みが続くようなら、すぐに産院に連絡しましょう。
張りや痛みがあったときに知っておきたい緊急度の見分け方
中には、すぐに救急車を呼ばなければならないほどの危険な張り・痛みもあります。下記を参考に、緊急度を見分けて!
●超緊急
□前置胎盤と診断されている
□動けないほどの激痛
□強い痛みとともに出血がある
⇒常位胎盤早期剝離(はくり)の可能性があります
胎盤がはがれてしまう状態です。持続的で非常に激しい張りや痛みを感じ、出血をともなうこともあります。赤ちゃんとママの命に危険があるので、大至急、産院へ連絡を! 救急車の要請が必要になる場合もあります。
●緊急
□多胎、さかごなどの合併症妊娠などがある
□張りや痛みとともに、少量の出血がある
□30分ほど安静にしても張りが治まらない
安静にしていても張りが30分以上治まらず、合併症妊娠などの場合は危険な張りの可能性があります。急いで産院に連絡を!
●緊急度は低い
□30分くらい横になって休んだら、痛みが治まった
□10分以上の間隔の不規則な周期で、おなかが張る
外出先や職場などで横になれない場合は、いすに座ってしばらく様子を見ましょう。張りや痛みが繰り返すようなら、産院に連絡します。
どんなに妊娠経過が順調でも、危険な張りや痛みはある日突然、だれにでも起こりえます。「いつものこと」とないがしろにせず、その都度、観察する習慣を身につけて、大切なおなかの赤ちゃんを守ってあげましょう。(文・たまごクラブ編集部)
■監修:帝京大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター 産婦人科 助手 中川一平先生
■参考:『たまごクラブ』2018年10月号「妊婦の危険症状&対処法 大事なとこだけ、まとめました!」
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。