鶏レバーは●gまで?妊娠中[とくに注意が必要&絶対NG食品]を産婦人科医が解説
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妊娠中は、良質な栄養を含む食品でも、摂取量や食べる回数に注意しなければならないもの、加熱しないで食べると感染症の原因となる可能性があるものなどに注意が必要です。今回は、妊娠中はとりすぎにとくに注意が必要な食品について、産婦人科医の小川隆吉先生に教えていただきました。
どんなものがダメなの?
「アルコール、大型魚に含まれるメチル水銀、うなぎやレバーなどに含まれるビタミンA、生肉や一部のチーズ類などは注意が必要です」(小川先生・以下同)
絶対にNGなの?
「絶対に摂取してはいけないのはアルコール。それ以外の食品は、摂取量や摂取回数を守ったり、加熱したりすればOKのものもあります」
知らずに食べてしまったら
「食べたからといって必ず影響が出るわけではありません。妊娠経過が順調ならまず大丈夫。心配な場合は、医師に相談してみましょう」
とくに注意が必要な食品リスト
具体的に、とりすぎに注意したい食品と食べ方について、解説していただきました。
【まぐろ、金目鯛など】メチル水銀を含むので過剰摂取に注意を
「大型回遊魚に含まれるメチル水銀は、胎児の中枢神経に影響を与える心配があるので、とりすぎには注意が必要です。ただ、これらの魚には良質なたんぱく質やDHAなどの栄養が多く、週に1~2回食べる程度なら問題ありません」
★妊娠中に注意したい魚と摂取量の目安(※1)
●摂取量の目安:1週間に1回まで
金目鯛、メカジキ、クロマグロ(本マグロ)、メバチ、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ
●摂取量の目安:1週間に2回まで
キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ(インドマグロ)、ヨシキリザメ、イシイルカ
※1回の食事量を80g(刺し身1人前、切り身1切れ)として検討。
※上記の魚介類を1週間に複数回食べる際には、食べ方に注意。たとえば、週1回と記載されているものを2種類同じ週に食べる際は、それぞれを1/2ずつにするといった工夫を。ある週に食べすぎた場合は次の週に量を減らすなど調整してください。
※妊婦さん以外は普通に食べても問題ありません。
【レバー・うなぎ】動物性ビタミンAのとりすぎに注意
動物性ビタミンA(レチノール)は、妊娠初期に過剰摂取すると胎児に影響する心配があります。レバーやうなぎなど食品からとる場合、通常量をたまに食べるなら問題ありませんが、とりすぎには注意して。なお、緑黄色野菜に含まれるビタミンAは大量に摂取してもOK。
●摂取量の目安:うなぎなら1日40~50g程度に(※2、※3)
●摂取量の目安:鶏・豚レバーは1日に4g程度。牛レバーは1日に50g程度を(※3、※5)
【生肉・加熱不十分の肉】トキソプラズマ症の心配があるので、十分な加熱を
「妊娠中には、熱を通していない生肉、刺し身や、加熱不十分なレア、ミディアムの肉はできるだけ避けましょう。それらの中にはトキソプラズマ症に感染しているケースがあるため要注意です」
★トキソプラズマ症:寄生虫の一種で赤ちゃんのトラブルの原因に
「トキソプラズマは寄生虫の一種で、ネコのふん便のほか、生肉、生肉を調理したあとのまな板、二次感染した野菜が感染源になるケースも。妊娠中に初感染した場合、赤ちゃんにトラブルを起こすことがあるので、要注意です」
【ナチュラルチーズ】リステリア菌が存在する恐れがあるので避けて
「カマンベールやブルー、ウォッシュなどのナチュラルチーズには、リステリア菌が存在する恐れがあります。冷蔵保存しても耐性があるため、食べるのは避けた方がいいでしょう。プロセスチーズは問題ありません」
★リステリア感染症:感染すると早産の恐れも
「初期症状はインフルエンザに似ています。妊娠中にママが感染すると、流・早産や赤ちゃんのトラブルにつながる心配があります。国内での発生例はほとんどないですが、妊娠中は発症率が高くなるという報告もあるので注意が必要です」
【生肉・加熱不十分の肉】トキソプラズマ症の心配があるので、十分な加熱を
「妊娠中には、熱を通していない生肉の刺し身や、加熱不十分なレアやミディアムの肉はできるだけ避けましょう。それらの中には、ふん便を介してトキソプラズマに感染しているケースがあるため要注意です」
【コーヒー・紅茶】コーヒーは1日1杯程度に
「カフェインは胎盤を通して赤ちゃんに届きます。カフェインには鉄を体外に排出する働きがあるため、貧血ぎみの人は飲みすぎないようにしましょう。コーヒーが好きな人も、1日1杯前後にしましょう」
【ひじき】1日4.7g以上を継続的に食べないように
「有害な無機ヒ素が含まれることが心配されますが、厚生労働省では『1日4.7g(乾燥)以上を継続的に食べなければ問題ない』としています(※4)。食物繊維も豊富なので副菜としてたまに食べる程度なら問題ないでしょう
【これはNG!アルコール】妊娠中も授乳期間も摂取しないで
「アルコールは胎盤を通して胎児に届きます。大量に摂取すると『胎児性アルコール症候群』といって、胎児の神経や脳に障害を招くことも。産後も母乳を通して赤ちゃんに届くため、妊娠中も授乳中も摂取はやめてください」
魚や生肉、チーズ、カフェイン飲料など、妊娠中に注意の必要な食材を知らずに食べてしまうことのないように、食べる前に種類や成分を確認する習慣をつけておくと安心です。アルコールについては、妊娠中から授乳期まで少量でもNGです。ノンアルコールビールでもごく少量アルコールが含まれるものがあるので、表示をよく確認しましょう。(文・たまごクラブ編集部)
※1「これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと」(厚生労働省)を参考にしています。
※2「日本人の食事摂取基準(2010年版)」(厚生労働省)を参考にしています。
※3「日本食品標準成分表2010」(文部科学省 科学技術・学術審議会資源調査分科会)を参考にしています。
※4厚生労働省発表のデータを参考にしています。
※5「お母さんになるあなたへ」(内閣府食品安全委員会)を参考にしています。
■監修:小川クリニック 院長 小川隆吉先生
日本医科大学卒業。同大学産婦人科講師、都立築地産院産婦人科医長を経て、1995年より現職。セックスカウンセラーセラピスト協会会員、日本不妊学会会員。
■参考:たまひよブックス「いつでもどこでもHAPPY妊娠・出産ガイドBOOK」(ベネッセコーポレーション刊)
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。