出生前診断のいろいろ~新型出生前診断、クアトロテストってどんなもの?
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「出生前診断」とひとことでいっても、いろいろな検査があります。大きく分けても、異常があるかどうかの可能性を知る「非確定検査」と、正確な診断がつく「確定検査」があります。
今回ご紹介する「母体血清マーカー検査(クアトロテスト)」と、「母体血胎児染色体検査(NIPT)」はどちらも非確定検査です。それぞれどのようなものなのか、何がわかるのかなど、日本赤十字社医療センターの笠井靖代先生に聞きました。
出生前診断ってどんなもの?
「母体血清マーカー検査(クアトロテスト)」と、「母体血胎児染色体検査(NIPT)」はそれぞれ、出生前診断の検査方法です。
出生前診断とは、おなかの赤ちゃんについて生まれつきの病気の有無を調べる検査で、本来は、妊娠中に病気を見つけ、安全な分娩方法を考え、出生後の治療や育児の準備につなげるためのものです。そういった意味では、妊婦健診で行われる超音波検査もある種の出生前診断です。
ただ、現実には「染色体異常」を調べる検査を指すことが多いです。
新型出生前診断(母体血胎児染色体検査 NIPT)とは?
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母体の血液に浮遊するDNA断片を分析し、3種類の染色体疾患の可能性の有無をチェックします。
判定は「陽性」「陰性」と出ますが、「陽性」と出ても染色体異常ではない可能性があるため、確定診断のために羊水検査を受ける必要があります。
一方、「陰性」と出たら染色体異常の可能性は極めて低いということになります。
新型出生前診断(母体血胎児染色体検査 NIPT)を受ける時期と検査の流れはどうなる?
妊娠10~15週ごろに母体の血液検査を行います。検査の結果が出るまでには1週間ほどかかります。母体の血液を採取し、血中に浮遊するDNA断片を分析します。
ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー症候群、13トリソミー症候群の3種類の染色体異常の可能性を調べ、「陽性」「陰性」と判定します。陽性と出た場合は、羊水検査で確定診断をします。
現在検査を受けられるのは、主に分娩時に35才以上の妊婦さんです。
母体血清マーカー検査(クアトロテスト)とは?
血液検査の数値と母体の年齢から染色体異常や神経管の形態異常の確率を出す検査です。検査結果は、確率で示されます。結果によって、確定検査である羊水検査を受けるかどうかを決めます。
カットオフ値(陽性・陰性を分ける値)である1/295より高いか低いかを参考にしますが、高い確率が出ても病気ではないことも少なくありません。
母体血清マーカー検査(クアトロテスト)を受ける時期と検査の流れはどうなる?
検査を希望する妊婦さんに妊娠15〜18週ごろに母体の血液検査を行います。ただ、羊水検査まで行うことを考えると、16週までには受けておく必要があります。検査の結果が出るまでには10日ほどかかります。
検査方法は、母体の血液を採取し、血液中の4種類のタンパク質やホルモンの濃度を測定します。ダウン症候群、18トリソミー症候群、神経管の形態異常であるかどうかを調べますが、わかるのは確率のみです。
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新型出生前診断(母体血胎児染色体検査 NIPT)は、現在日本では臨床研究として行われているため、検査ができる施設が限られています。検査を受ける場合は遺伝カウンセリングを受け、検査の内容や、メリット・デメリットをよく理解する必要があります。
母体血清マーカー検査(クアトロテスト)の場合は、結果が確率で出るため、その数字が高いと感じるか低いと感じるかで、確定検査である羊水検査を受けるかどうか迷うことも。検査を受ける前に、どの程度の数値が出たら羊水検査をするかどうかまで考えておく必要があります。
母体血清マーカー検査(クアトロテスト)も、新型出生前診断(母体血胎児染色体検査 NIPT)も、採血だけなので検査自体は非常に簡単です。しかし、結果が出てから受けるつもりのなかった羊水検査を受けざるを得ない場合や、どうしたらいいのか決められない場合が起こります。決して安易な気持ちで受ける検査ではありません。
検査を検討する際に不安なことやわからないことがあれば、かかりつけ医に聞いたり、遺伝カウンセリングを受けるなどして、解消しておきましょう。
(文/たまごクラブ編集)