胎児発育曲線の見方 おなかの赤ちゃんが胎児発育曲線より「大きめ」「小さめ」と言われたら?
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妊婦健診でわかるおなかの赤ちゃんの推定体重。元気に育っていることを実感できる一方で、“普通”はどれくらい? 「大きめ」「小さめ」といわれることがあるのはどうして? 気になることも多いのではないでしょうか。
おなかの赤ちゃんの推定体重と「大きめ」「小さめ」について、産婦人科医の丸茂元三先生に伺いました。
胎児の大きさってどうやってわかるの?
おなかの赤ちゃんの大きさは、超音波検査で計測しています。推定体重は、超音波検査の機械が計測と同時に、「胎児体重推定式」というとても複雑な計算式に計測した数値をあてはめて算出してくれます。
<推定体重の算出に必要な数値>
・頭の大きさ(BPD:頭蓋骨の外側から反対側の頭蓋骨内側までの長さ)
・大腿骨の長さ(FL:太もものつけ根から膝までの長さ)
・胎児のおなか周りの長さ(AC)
・おなかの前後の長さやおなかの横幅など(APTD・TTD)
胎児が「大きめ」「小さめ」の判断は?
※引用元:日本産婦人科学会「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアル
超音波検査で算出した推定体重を「胎児発育曲線」というグラフにあてはめて判断しています。
「胎児発育曲線」とは、週数ごとに推定体重の標準の範囲がわかるグラフ。正期産(妊娠37~41週での出産)で生まれた正常な体重の赤ちゃんたちのおなかにいるときの推定体重の平均を元に作られています。
前回より推定体重が増えていて、グラフにある2本のラインの中(もしくはそば)に推定体重が収まっていれば、まずは安心です。
「大きめ」「小さめ」が問題になるのはどんなとき?
おなかの赤ちゃんの大きさの判断の元となる体重は、あくまでも“推定”です。検査の機械や測定方法などによって±10%の誤差はあるといわれています。また、前回の健診で多めに測定されて、今回は少なめに測定されるということも。
すると、「おなかの赤ちゃんの体重があまり増えていない」ように見えますが、その1回で「小さめ」という判断にはなりません。ただ、「常に胎児発育曲線を下回っている(上回っている)」ときは原因を考える必要があります。
胎児発育曲線を「上回っている」場合
「妊娠糖尿病」の影響が考えられます。おなかの赤ちゃんが「大きめ」だからではなく、ママが受ける血液検査やブドウ糖負荷試験などで診断されます。
「妊娠糖尿病」とは血糖値を下げるホルモン(インスリン)の量が減ったり、その働きが低下したりして血糖値が上昇する病気。巨大児になりやすく、難産や生後の低血糖などを引き起こすことがあります。まずは食事療法による血糖値コントロールを基本に、経過をみていくことになります。
胎児発育曲線を「下回っている」場合
胎児の染色体の異常や母体の血圧上昇や合併症の影響による「胎児発育不全」の可能性を疑います。
妊娠中に診断されても生後は問題なく成長することが多いといわれていますが、赤ちゃんの状態によっては帝王切開手術で早めにおなかから出して育ててあげたほうがいいこともあります。「過度の体重管理」もおなかの赤ちゃんが「小さめ」になる可能性の一つ。
体重増加を恐れて食事制限をし過ぎると、胎児に十分な栄養が届かず体重の増えが悪くなることがあります。
胎児の大きさのココが気になる!Q&A
Q.ママが小柄だと赤ちゃんも小さめなの?
A.赤ちゃんはママの体形に合わせて生まれてくるといわれています。ママが小柄だと赤ちゃんも小さめという可能性はあるでしょう。胎児発育曲線の下方であっても、その子なりに体重が増えているのであれば問題ありません。
Q.妊娠中、「小さめ」と言われ続けて心配していましたが、生まれてみたら推定体重より大きく3000gを超えていました。どうしてこんなに違うの?
A.
推定体重は検査の機械や測定方法などによって、「常に±10%の誤差」があり、大きくなればなるほど誤差も大きくなります。また、正期産の新生児の体重は2500g~3999gまでが正常と、かなり幅が広いもの。「小さめ(大きめ)」といわれていても、心配するほどでもなかったということが多いでしょう。
Q.「小さめ」といわれています。大きくするために、ママができることはありますか。
A.
「小さめ」であっても胎児発育曲線で上向きになっていれば心配ありません。たくさん食べれば大きくなるというものでもないので、1日3回栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。長く続くつわりなどで1回の食事であまり食べられない場合は、栄養を補う補食としての間食も取り入れるのもおすすめです。
Q.「大きめ」といわれ、出産がさらに怖くなりました。あまり大きくならないようにできることはありますか。
A.
推定体重には誤差があることを念頭に、もし、食べ過ぎや高カロリーの食事になっているという自覚があるようだったら、食生活を見直してみましょう。ママが食べたものがそのまま赤ちゃんの体重に反映されるということはないですが、妊娠中の食事の知識は産後、家族の健康づくりにも役立つはずです。
Q.おなかの赤ちゃんは女の子の予定です。なのに、すごく大きいみたいで…胎児の推定体重に男女差はないのでしょうか。
A.
胎児発育曲線の元となっている推定体重そのものに誤差があると考えられているので、胎児の性別によって分ける必要がない(わけられない)と考えられています。また、「大きめ」だと思ったらそうでもなかったということもよくあること。妊娠糖尿病などの疑いがなければ心配ありません。
Q.赤ちゃんが双子の場合の大きさはどう考えればいいですか。
A.
双子だから胎児発育曲線は参考にならないということはなく、判断基準としてチェックしています。ですが、双子の赤ちゃんは平均より小さく生まれてくることが多いので、発育曲線の下方であったりラインを下回ったりすることはあります。発育曲線が上向きであれば問題ありません。
おなかの赤ちゃんが「大きめ」「小さめ」ママの出産体験談
妊娠中におなかの赤ちゃんが「大きめ」「小さめ」と言われたことのあるママの出産体験談を紹介します。
「ずっと大きい大きいと言われてました。頭が出かかっているときでさえ、助産師さんに“頭大きそうだねー”と言われてましたが実際は2900gと普通サイズ。すぽーんと生まれました」
「息子も娘も大きめでした。息子が3586gで予定日前日。娘に至っては、予定日10日前にも関わらず51cm3518gありました。ですがさすが2人目、3500g超えていてもスポーンと出てきました。笑」
「36週のとき、2300gと言われていて、心配しましたが、38週で自然陣痛での出産でしたが、2850gありましたよ! 500gもの誤差!!」
「私はしっかり体重が増えたのに、赤ちゃん小さめって毎回言われてました。でも羊水(ようすい)もあるし小さめなりに育ってるから、お母さんの子宮の大きさとか体質かもねって言われて、産まれた子は予定日までおなかにいたのに2500gでしたが健康でした」
おなかの赤ちゃんの大きさがわかると、成長を実感できてうれしいもの。だからこそ、「大きめ」「小さめ」という言葉には敏感になってしまいますね。
計測には誤差があり、医師から何かいわれない限り問題ありませんが、もし心配なことがあれば先生に相談してみましょう。
(文/たまごクラブ編集部)
■文中のコメントは口コミサイト『ウィメンズパーク』の投稿を再編集したものです。
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