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抑うつ症状が約5割。高度不妊治療を受ける女性のメンタルヘルス支援が重要【専門家】

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中年女性の不機嫌な取得します。
※写真はイメージです
metamorworks/gettyimages

国立成育医療研究センターの研究グループが行った調査で、高度不妊治療を受ける女性は、治療開始初期の段階で、すでに抑うつ症状がみられることがわかりました。この調査の中心メンバーである社会医学研究所・室長の加藤承彦先生に、今回の調査からわかったことを教えてもらいました。また、看護の面から不妊に関する研究を進めている湘南鎌倉医療大学・教授の森明子先生に、高度不妊治療の現場では患者さんにどのように寄り添っているのか聞きました。

不安が積み重なり、高度不妊治療の前からメンタルへルスが悪化

「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」で評価した、研究参加者500人の抑うつ症状の割合

加藤先生をはじめとする研究グループは、高度不妊治療(体外受精、顕微授精、凍結融解胚移植)を受ける女性約500人を対象に、治療開始初期(主にこれから治療を開始する人と、採卵2回までの人)のメンタルヘルスやQuality of life(生活の質)の状況について、「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)を使って評価しました。

「抑うつ症状」とは、気持ちが落ち込んだり、憂うつな気分になったりして、さまざまな不調が現れた状態のことです。

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)は、うつ病の重症度を評価するときに使う尺度です。
・睡眠に関する4項目
・食欲・体重に関する3項目
・精神運動状態に関する2項目
の質問について、該当する項目を本人に選んでもらって点数化し、合計得点によって抑うつ症状のレベルを判定します。

0~5点:正常
6~10点:軽度
11~15点:中等度
16~20点:重度
21~27点:極めて重度

「今回の調査によって、高度不妊治療の初期段階から、5割強の女性に軽度以上の抑うつ症状があることがわかりました」(加藤先生)

それほど多くの人に抑うつ症状がみられる理由には、どのようなことが考えられるのでしょうか。

「高度不妊治療を受ける人は、その前にタイミング療法や排卵誘発などの不妊治療を受けているでしょう。『いろいろやっているのに妊娠しない』『経済的な負担がどんどん増える』など、さまざまな不安を抱えていることが、原因として考えられるのではないでしょうか」(加藤先生)

また、加藤先生たちの研究グループは、「健康関連QOL尺度」で、身体的・精神的な健康についても調べました。「健康関連QOL尺度」は、
・身体機能
・日常役割機能(身体)
・体の痛み
・全体的健康観
・活力
・社会生活機能
・日常役割機能(精神)
・心の健康
という8つの要素について、日本の国民標準値の平均値(50)と比べて判断します。

「500人の平均値は、社会生活機能が41.7、日常役割機能(精神)が40.4、心の健康が42.6でとなり、この3つの低さがとくに目立ちました。社会生活機能は家族や他人とのかかわり、日常生活機能(精神)は仕事や普段の活動への意欲と解釈できます。不妊治療を行っても望むような結果が得らないことで、家族や周囲の人とかかわることに消極的になったり、意欲的に物事に取り組めなくなっている状態に陥っていると推測しています」(加藤先生)

つらいときは遠慮なく看護師に相談してほしい

不妊に悩む多くの女性がストレスや不安を抱えていて、高度不妊治療を始める前に、メンタルヘルスが悪くなっているようです。高度不妊治療の現場では、そんな女性たちにどのように寄り添っているのでしょうか。

「患者さんのつらさや悲しみなどに共感し、患者さんの気持ちを最優先に考えてケアをすることが、高度不妊治療の看護では重要になります。

そのため、高度不妊治療を行っている施設の6割は、患者さんから要望があるときに看護師がゆっくり話を聞ける『相談室』を設けています。患者さんから要望がなくても、医師の説明を聞いて泣いてしまった人や、様子がいつもと違うと感じた人などには、看護師のほうから声をかけてお話を聞く機会を設けることもあります。

病院によっては臨床心理士が対応することもありますが、多くの病院では、まず、看護師が対応していると思います。中には、不妊症看護認定看護師、生殖医療相談士、不妊カウンセラーや体外受精コーディネーターの認定を受けた看護師もいます」(森先生)

治療の経過を理解している看護師さんに話を聞いてもらえたら、不安や落ち込んだ気持ちを改善するのに役立ちそうです。でも、看護師さんは忙しそうで声をかけづらい…という声もよく聞きます。

「たしかに看護師は常に忙しく動いていますが、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスを改善することも看護師の仕事です。つらい気持ちを抱えたまま帰らず、ぜひ看護師に声をかけてください。相談室がない病院でもお話を聞く場所は作れますので、『相談室がない病院だから相談できない』とは考えなくてください」(森先生)

不妊治療は経済面だけでなくメンタルの支援も必要

メンタルヘルスが悪い状態だと、何事にも前向きになれなくなるので、不妊治療にも支障が出そうな気がします。少子化対策が課題になっている今、国として何か支援策を考えているのでしょうか。

「海外の研究では、メンタルヘルスの不調は不妊治療の中止や終了と関連するという知見が示されています。日本では現在、不妊治療の保険適用という経済的支援に議論が集中していますが、今回の調査からメンタルヘルスへの支援も必要であることが示唆されました。

今後も追跡調査を行って、メンタルヘルスと妊娠成立や治療中止の可能性などとの関連について分析し、メンタルヘルスへの支援の重要性を提言していきたいと考えています」(加藤先生)


図版提供/国立成育医療研究センター
取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

お話・監修/加藤承彦先生

お話・監修/森明子先生

高度不妊治療を受けている女性は抑うつ症状が出やすいことを配慮し、治療の現場では、不安や失望感に寄り添う看護が重視されているようです。それはとても心強いことですが、病院に一任するのではなく、国の対策としてメンタルヘルスの支援を考えることが望まれます。

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