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不妊治療を受ける20代女性が抱えやすい、精神的な不安定さとは【専門家】

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若い女性のうつ病のイメージ
※写真はイメージです
monzenmachi/gettyimages

国立成育医療研究センターの研究グループが、20代で高度不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスが悪いという調査結果を発表しました。今回の調査結果をまとめた加藤承彦先生と、看護の面から不妊に関する研究を進めている湘南鎌倉医療大学・教授の森明子先生に、高度不妊治療を行う女性のメンタルヘルスの改善のために必要なことを聞きました。

高度不妊治療を始めた20代のメンタルヘルスはほかの年代よりかなり悪い

「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」で評価した、20代の研究参加者59人の抑うつ症状の割合

加藤先生たちの研究グループは、体外受精などの高度不妊治療を受ける女性約500人について、心身の状態(抑うつ症状)を調査しました。

「年代別に分けてみた場合、20代は78%に軽度以上の抑うつ症状があることがわかりました。30~35才未満は53%、35~40才未満は51%、40才以上は46%で、どの年代も抑うつ症状がみられる割合は高いのですが、20代は飛びぬけて高いと言えます」(加藤先生)

20代は不妊治療によって妊娠するチャンスがありそうな年代なのに、メンタルヘルスが一番悪いというのは、意外な結果のように思えます。でも加藤先生は、「妊娠しやすい年代だからこその苦悩があるのではないか」と推測します。

「妊娠のチャンスが多い年代と自覚しているだけに、妊娠できないことへのプレッシャーや失望が大きいのではないかと思います。また、30代、40代に比べて収入が不安定だったり、低めだったりするケースが多いと思いますので、高度不妊治療を受けることへの経済的な不安も大きいのではないでしょうか」(加藤先生)

人生の転換期を迎える20代は、メンタルヘルスが低下しやすい時期

20代で高度不妊治療を受ける人のメンタルヘルスが悪くなる理由について、「不妊治療の問題に限らず、抑うつ症状は若い人のほうが現れやすい」と森先生は指摘します。たしかに、加藤先生が行った調査でも、年齢とともに抑うつ症状が現れる割合が減っていました。

「一般的に、人生経験が多くなるにしたがって抑うつ症状は減っていくと考えられています(高老年期はまた増加します)。また、20代で妊娠を望む人は、就職、結婚、妊娠と、人生を左右するイベントを短期間に経験することになるので、多くの人が精神的に不安定になりやすい傾向にあるのです。

そのうえ高度不妊治療を受けることで、妊娠しないことへのとまどいや落胆、仕事と治療の板挟みなど、多くの悩みを抱えることになるので、ほうっておくと、メンタルヘルスはどんどん悪化してしまうでしょう」(森先生)

「どんな人生を送りたいのか」を考えてみることも大切

20代に限らず高度不妊治療を受ける女性はメンタルヘルスが悪くなりやすいことが、加藤先生たちの研究で明らかになりました。不妊治療を続けるうちに、よく眠れない、食欲がない、落ち込むなどの症状を自覚したときは、まずどこに相談するのがいいのでしょうか。

「心の悩みはなかなか相談しにくいかもしれませんが、まずは不妊治療を受けている病院の担当医や看護師に相談してみてください。治療の経過をわかっている看護師などに話すことで、気持ちがラクになるかもしれません。話を聞いて必要と判断したら、より専門的な相談を受けられる臨床心理士や専門医につなぐこともできるでしょう」(森先生)

夫側に原因があるケースもあるので一概には言えないかもしれませんが、不妊治療を続けている妻のことを、夫はどのように支えたり、状況や気持ちを共有したりすればいいのでしょうか。また、両親はどのようなサポートをするのがベストなのかも気になります。

「夫は妻の気持ちを最優先に考えて、何が不安なのか、何に悩んでいるのか、ゆっくり時間をかけて聞いてあげることが大切です。『僕は君のことが一番大切なんだよ』という気持ちを、きちんと言葉にして伝えてほしいです。夫に大切にされていると実感できると、不安や心配でいっぱいになっていた気持ちがほぐれ、ストレスを減らすことができると思います。

一方、ご両親は娘さんのほうから助けを求めてこない限り、不妊治療については踏み込まないのがベストな対応です。娘夫婦が決めたことを見守ってあげてください」(森先生)

高度不妊治療を受けることは、精神的、肉体的、経済的にかなりの負担になるのは事実です。メンタルヘルスを少しでもいい状態に保ちながら治療を続けるために、女性自身が意識したいことはあるでしょうか。

「子どもが欲しい、親になりたいと望むのはすてきなことです。でも、『妊娠する』そのことだけが人生の目標になってしまっていないか、少し立ち止まってみることも必要ではないかと思います。そして、自分はどんな人生を送りたいのか考えてみてください。そのうえで不妊治療を行うと、気持ちの持ちようが違ってくるのではないでしょうか」(森先生)

図版提供/国立成育医療研究センター
取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

お話・監修/加藤承彦先生

お話・監修/森明子先生

高度不妊治療を受けているどの年代の女性も、不安や悩みを一人だけで抱え込まないことが大切なようです。夫や看護師などに聞いてもらったり、気持ちを出せる場を探したりしてみましょう。

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