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小学校入学前の健診で「目」が悪いと言われたら。6歳は弱視治療のリミット間近

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子どもの弱視は、視力の成長期間である8歳くらいまでに治療を行うことが大切です。だからこそ、6歳台で行う就学時健診で異常を発見し、すぐに治療を始めることが必要です。この時期に多い視力トラブルや、就学時健診での視力検査のポイント、要精密検査になった時の対処法などについて、前橋ミナミ眼科副院長の板倉 麻理子先生にお話を伺いました。

黒板や教科書を不自由なく見るには視力1.0以上が必要

毎年秋になると、学校保健安全法に基づいて次の春に小学1年生となる子どもの健康診断が行われます。これが「就学時健診」です。学校での集団生活に備えることが主な目的で、内科・眼科・耳鼻咽喉科・歯科などの検査をします。
小学校入学後に黒板や教科書を不自由なく見るには、1.0以上の視力が必要です。視力は学習にも影響を与えるものですから、就学時健診での視力検査はとても重要です。

視力は出生後より発達し6〜8歳で完成しますが、遠視や乱視、斜視(しゃし 左右の眼が異なる方向に向いている状態)などがあると視力の発達が阻害され、「弱視」になってしまいます。
弱視とは「メガネやコンタクトをしても視力が1.0に満たない状態」で、左右の眼で度数が違う場合には片方の眼だけが弱視になってしまうこともあります。本人の自覚症状がないためママやパパも気づかず、見逃されてしまうことが多いので注意が必要です。

6歳は弱視治療の「リミット間近」であることを知って!

弱視の治療にはタイムリミットがあります。弱視は視力の成長期間である6〜8歳くらいまでに治療を開始しないと、治療効果が低くなり、視力の回復が見込めないことがあります。
とはいえ、8歳を過ぎたら絶対に回復できないわけではありません。トラブルの内容や程度によっては回復が見込める場合もあります。だからこそ視力のトラブルを早く見つけ、治療をスタートすることが大切なのです。

検査は子ども1人で受けるから、事前の練習が大切

就学時健診の視力検査は、学習に支障のない見え方であるかどうかの検査です。付き添いのママやパパとは離れ、別室で子どもだけで順番に検査を受けます。
数種類の検査を行いますが、その1つが「ランドルト環」と呼ばれる視標を用い、アイパッチなどをつけて左右別々に裸眼での視力をチェックする検査です。子どもがメガネを使用している場合は、メガネをかけている時の矯正視力も検査します。
子ども1人で受けるため、戸惑いや不安、緊張からうまくできない場合が少なくありません。正しい視力を知るためにも、事前に家庭で練習しておくのがおすすめです。

練習の方法は、別記事「3歳児健診が子どもの視覚を守る! 家庭で行う視力検査のコツと異常を見つけた時にやるべきこと」の中の「家庭での事前視力検査の上手なやり方とチェックポイント」を参考にしてください。
ただし、3歳児健診では視標から眼までの距離は2.5mですが、就学時健診では「5m」にすることを忘れずに。子どもを立たせるかイスにかけさせて行いましょう。

その他、感染性の眼疾患がないか上まぶたやまつげなどの外眼部の検査や、斜視など眼位の異常がないかどうかもチェックします。
健診前には眼が疲れてしまわないよう、ゲームやスマホなどを長時間させないように注意しましょう。

「要精密検査」と言われたら、とにかく早めに眼科を受診

視力検査の結果が1.0未満だった場合、眼科での精密検査をすすめられます。弱視の子どもは見えにくさを自覚していないことが多く、要精密検査の通知を受け取って驚くママやパパが少なくありません。
もし通知を受け取ったら、原因を知るためにも早めの受診を心がけましょう。中にはすぐに治療しなければならない弱視が見つかるケースもあります。

「精密検査をして異常がなければ安心」と考えて、まずは受診することが大切。検査の結果、メガネや治療が必要ならば、すぐに始めましょう。就学時健診で弱視が発見された場合でも、すぐに治療を開始すれば小学校入学時には、かなり視力が改善するケースもあります。

増えている「弱視ではない近視(単純近視)」ってどういうもの?

就学時健診では、弱視ではない近視の子どもも視力の低下で要精密検査となります。近年、近視による視力低下の低年齢化が進み、就学時健診で発見されるケースが増えていますので、どういうものか知っておきましょう。

近視とは、近くの物はよく見えるけれど遠くのものが見えづらい状態です。学校での黒板の文字や離れたテレビ画面の文字などが見えづらくなります。
原因はよく分かっていませんが、遺伝因子と環境因子が複雑にからんで起こると考えられています。片親が近視の場合は2倍、両親が近視の場合には5倍の確立で子どもも近視になりやすいと言われています。環境要因としては、近くを長時間見ることや屋外活動が少ないことの関与が示されています。
そのため同じように近くを見る作業に熱中しても、近視になる子とならない子がいます。目を使い過ぎると必ずしも近視になるとは限りません。

弱い近視は、近くはハッキリ見えるので弱視になることはほとんどありません。メガネをかければ遠くもよく見えますが、近視が進んで遠くが見えづらい状態になってもメガネをかけないでいると、目を細めて見るようになります。
まれに、実際は近視ではない仮性近視という場合もあります。

文部科学省が平成29年度に実施した調査によると、眼鏡やコンタクトレンズを使わない裸眼視力が「1.0未満」の割合は、小学生32.46%、中学生で56.33%という結果でした。さらに「0.3未満」の小学生の割合は8.72%と年々増加していて、昭和54年と比べると3倍以上に増えています。

近視の治療は、ピントが合わない分をメガネのレンズやコンタクトレンズで矯正することが一般的です。弱視ではない場合、メガネをかけたりはずしたりしても近視の度が進むことはありません。自己管理ができる年齢になれば、コンタクトレンズ処方も可能となります。
ただし、合わない度数のメガネを使用すると近視が進んだり、眼精疲労を引き起こすことがあります。メガネやコンタクト処方の際は眼科専門医を受診しましょう。

それ以前にまずは、「屋外活動をする」「本を読むときは明るいところで姿勢よく」「スマホやテレビなど近くを長時間見ない」「遠くを見る」など、昔から言われてきたことを実行することが重要です。
現在、近視の進行を抑える目的で、特殊なコンタクトやメガネ、目薬の研究が進んできています。しかし、いまだ有効性を裏付ける十分な科学的証拠は得られていません。人によって効果が異なり、合併症を起こすこともありますので、主治医と慎重に検討して治療を行うことが大切です。

「メガネ」はスムーズな回復のために欠かせないものです

弱視も近視も、視力の治療法としてメガネを作るケースがよくあります。
小さいうちからメガネでしっかり矯正することで、スムーズな回復へと促せるのです。

子どもも6歳くらいになると、周りの目を気にします。メガネをかけることを子ども自身が恥ずかしがったり、周りにからかわれて嫌がることがあります。すると家ではかけても外や学校では外してしまい、思うような治療効果が得られないケースがあります。
子どもがメガネをネガティブなものと考えないように、ママやパパがしっかりフォローしてあげましょう。

メガネを作るときは、かけ心地が良くよく似合うメガネを作成することが大切です。メガネ店でよく相談し、子どもの顔の形や大きさにあった子ども用メガネを選びましょう。
大人用メガネの小さいサイズを選ぶのではなく、必ず子ども用のフレームを選びましょう。子ども用フレームはメガネがずれないように、耳の部分や鼻あてに工夫がしてあります。フィットしていないと耳や鼻が痛くなったり、メガネがずれて正しく矯正されなくなったりします。
また、子ども用メガネはデザイン、色などが豊富です。子どもが楽しく装用できるよう好きな色などを選び、「よく似合うね!」「かわいいね」「かっこいいね」などほめてあげましょう。

なお、弱視治療用メガネの購入には、5歳までは1年に1回、5歳〜9歳の誕生日までは2年に1回、3万8000円程度の補助が出ますので活用しましょう。

事前に家で視力検査の練習をしていても、就学時健診のような不慣れな環境では、子どもが本来の視力を発揮できないことがよくあります。当日はリラックスして健診を受けられるように「初めて小学校に行けるね」「どんな教室かな」と楽しみになるような声かけをしてあげましょう。
健診で大きな問題がなかった場合でも、子どもの視力は不安定なもの。少しでも気になる様子があったら、眼科で検査を受けてみることをおすすめします」(取材・文/かきの木のりみ)

●この記事は、再監修のうえ、内容を一部更新しました(2022年11月)

監修/板倉 麻理子先生

たまひよでは「ストップ弱視見逃し」記事をシリーズで掲載しています。

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