【危険!】早く治療すれば回復したのに…「50人に一人もいる!子どもの弱視の見逃し」に気をつけて!
子どもの弱視の多くは3歳ごろから治療を始めれば小学校入学までに視力が改善しますが、8歳以降になると思うような効果が得られず、弱視となってしまう場合があります。子どもの弱視は見逃されやすく、手遅れになるケースがあることをご存知でしょうか? なぜ見逃してしまうのか、どうしたら早く発見できるのかについて、前橋ミナミ眼科副院長の板倉 麻理子先生にお話を伺いました。しっかり確認しておきましょう。
↓動画ですぐ分かる!「弱視見逃し」について
動画提供:東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部
50人に1人の子どもが「弱視」です!
弱視とは「めがねやコンタクトをしても視力が1.0に満たない状態」を言います。
赤ちゃんの視力は、ピントの合った映像が脳に送られ、脳の細胞を刺激することで発達します。3歳までに急激に発達して視力0.6〜0.9程度になり、5歳で大人とほぼ同じ1.0以上になります。6〜8 歳には視力が完成します。
しかし、斜視や強い遠視など何らかの目のトラブルがあると、目のピントをうまく合わせることができず、脳の視覚領域の成長が妨げられるため、視力が伸びずに弱視となってしまいます。
弱視の子どもは50人に1人くらいの割合で見られます。思っていたより多いと感じる方が多いのではないでしょうか。
幼児は0.3程度の視力があれば、日常生活を不自由なく送ることができます。弱視であっても普段の生活では問題が顕在化しないため、家族も気付かない場合が多いのです。なかでも片目だけ弱視である「不同視弱視」の子どもは、もう片方の目の視力が良いため日常生活に不自由がなく、周りの者も気づきにくいのが現状です。
早期に治療を始めれば、就学までに問題ない程度にまで回復できる!
強い遠視や乱視、不同視は満3歳頃に異常を発見し、治療を継続することができれば、小学校入学までにほとんどが0.8以上の視力になり、学校生活で問題ない状態にすることができます。治療開始が8歳以上になると、小学校の中・高学年まで治療が継続されるため、子どもにとって負担となります。さらに、小学校入学後は通院が難しく、治療を中断してしまうケースも多いことからも、弱視は早期発見、早期治療が最も大切です。
8歳を過ぎるとたしかに治療に反応しにくくなりますが、良くなる可能性がゼロではありませんので、眼科医に相談しましょう。
子どもの弱視を見逃してしまう理由
いつもそばにいる親でも、子どもの弱視に気がつかないことが多いのが現状です。それはなぜでしょう? よくある「見逃しケース」を知っておきましょう。
見逃しケース1 視覚の発達にリミットがあることを知らず様子見
上で書いたように、乳幼児は0.3程度の視力があれば、日常生活を不自由なく送ることができます。そのため、子どもの様子からは弱視がわかりにくいことがほとんどです。
さらに、弱視の治療にはタイムリミットがあることを知らないために、子どもの様子に多少気になることがあっても緊急性を感じず、様子見してしまうケースがあります。特に子どもが活発で落ち着きがない場合には、眼科を受診してもおとなしく検査を受けることができないだろうと考えて、先延ばしにしてしまうこともあります。
見逃しケース2 「3歳児健診」でスルーしてしまう
弱視の多くは3歳ごろから治療を始めれば小学校入学前には改善します。そこで重要なのが3歳児健診です。
3歳児健診では、一次検査として家庭での視力検査とアンケートが行われ、保健センターなどでの二次検査において一次検査の結果や二次検査に問題があれば眼科に紹介という流れが一般的です。
しかし実際には、眼科を受診した弱視の子どものうち、「3歳児健康診査で見逃されていた」ケースが報告されています。見逃してしまう原因は、主に下記の4つです。
■視力検査が正しくできていない
家庭での視力検査では、検査距離を測っていなかったり、正しく片目をふさいでいなかったりすることがよくあります。もし視力検査が上手にできなくても「普段は全然症状がないから、きっとうまく答えられなかっただけ。たぶん見えているだろう」と判断し、アンケートの「見えた」に丸をしてしまう場合が少なくありません。
■3歳児健診の二次検査で屈折検査をしていない
家庭でのアンケートと視力検査だけでは弱視発見に限界があります。特に不同視弱視では家庭で視力検査を正しく行うことは難しく、保護者の負担が大きいと指摘されてきました。
以前から弱視見逃しを防ぐために視力検査に加えて屈折検査が有効と報告されており、近年、簡便な屈折検査機器が開発されたことで屈折検査を導入する自治体が増えています。3歳児健診の二次検査で屈折検査を受けるようにしましょう。
自治体によっては、まだ屈折検査を導入していない場合や個別健診の場合もありますので、自治体に確認して、4歳までには眼科や小児科で屈折検査を受けましょう。
■子ども自身に自覚がない
子どもに「ぼやけている」という自覚がないので、子ども本人も家族も気が付かないことがよくあります。例えば、子どもが空を飛ぶ鳥を「鳥さんだ!」と言っても、親と同じように『くっきり』見えているとは限りません。
また、治療が必要な遠視であった場合でも、無意識に調節して家庭での視力検査で0.5がどうにか見えてしまうこともあります。
■「要精密検査」になっても眼科を受診しない
日本眼科医会が平成28年度に行った三歳児眼科健康診査調査では、要精密検査となっても眼科を受診しなかった家庭が約30%にものぼりました。3~4人に1人が、眼科に行かず放置してしまっているのです。
受診をしなかった理由として「見え方に問題がないようだったから」などが報告されています。
手遅れにならないために、すべきこととは?
子どもの弱視を見逃さず、早期に発見・治療するために、以下の点に気をつけましょう。
子どもの様子が少しでも気になったら、すぐに眼科へ
子供の視力は近くを見るのに必要な「近見(きんけん)視力」から成長し、その後、遠くを見るのに必要な「遠見(えんけん)視力」も成長していきます。弱視の子どもは近くも遠くもピントが合いませんが、無意識に調節力を過剰に使って近視化したり遠視化をしたりピント合わせをしようとしています。
弱視でも、自分の好きなものや記憶の蓄積が多いものなどは、ぼんやりした形から推測することができるため、遠くの飛行機や鳥を見つけられることもあります。逆に、幼児は認知もまだ発達途中で個人差があるので、見えていても答えられないことがあります。
日常生活の幼児の会話から弱視を判断するのはむずかしく、見た目や行動から推測するしかありません。テレビを見るときに異常に近くに寄ったり目を細めたりする、片目を手でさえぎるとひどく嫌がるなどの様子がある時は要注意です。
また、斜視も弱視になる大きな原因の1つです。斜視は写真で見ることで目の方向の違いに気づきやすくなります。日常的にスマートフォンなどで、子どもの顔の写真を撮って観察するのも一案です。
いずれの場合も気になる様子が少しでもあったときは、すぐに眼科を受診して相談しましょう。
■こんな時は眼科へ
・目つきがおかしい
・テレビを見るときに異常に近くに寄ったり目を細めたりする
・片目を手でさえぎるとひどく嫌がる
・目が揺れている
・頭を傾けたり、横目でみたりする
・斜視のように見える
・黒目の中央が白く見える
3歳児健診での視力検査を正しく行う
子どもが視力検査のやり方を理解できるようになるのは3歳頃からなので、3歳児健診で正しく視力チェックをすることが重要です。
健診の前には、「ランドルト環」と呼ばれる検査キットが自宅に送られてくるので、2.5m離れたところから見て、視力が0.5以上あるかを片目ずつ測定します。家でもできる限り正しくチェックしましょう。
もしうまくできなかった場合は、二次検査の際に保健師に相談してください。
「要精密検査」と診断されたら必ず受診を
3歳児健診で「要精密検査」となった場合には、速やかに眼科を受診しましょう。小児専門の眼科でなくても、視能訓練士が在籍している眼科であれば子どもに対応可能なことがほとんどです。視能訓練士がいなくても受け入れ可能な眼科もありますので、事前に電話などで問い合わせるとよいでしょう。
眼科では、視力検査・屈折検査(近視、遠視、乱視などがないかの検査)などを行いますので、家庭で片目ずつ視力検査の練習をしておくと、眼科でもスムーズに検査ができます。
先輩ママの体験に学ぶ 子どもの弱視を「見逃した」ことがわかった時に思ったこと
弱視を見逃してしたことに後で気づいた、という体験を持つママは少なくありません。先輩ママの声をお届けします。
弱視は早期発見、早期治療が最も大切です。子どもの将来に影響することですから、しっかり対応してあげたいですね。
(取材・文/かきの木のりみ)
動画協力:東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究部
たまひよでは、「ストップ弱視見逃し」記事をシリーズで掲載しています。
●この記事は、再監修のうえ、内容を一部更新しました(2022年11月)