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肺ではない?子どもの新型コロナの重症例は、下痢症状がある「小児多系統炎症性症候群」に注意【専門医】

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ママは彼女の熱をチェックする子供に触れる
RyanKing999/gettyimages

感染者数が減ってきているとはいえ、感染リスクは依然として高い状態が続く新型コロナウイルス。欧米では子どもも重症化することがあると報道されましたが、日本でも子どもの重症例は出ているのでしょうか。日本川崎病学会副会長を務める、日本大学医学部小児科新生児科科長の鮎澤衛先生に聞きました。

国内では、子どもの新型コロナウイルス感染者のほとんどが軽症

2021年2月25日に日本小児科学会と日本川崎病学会が連名で「新型コロナウイルス感染症の小児重症例について」というガイドライン・提言を出しました。これによると、2月現在、国内では10才未満の子どもは約1万人、10才代(15才以下)の子どもは約2万人が新型コロナウイルス感染症にかかっていますが、亡くなったという報告はないそうです。

――国内で新型コロナウイルス感染症にかかった子どもは、どの程度の症状が出たのでしょうか。

鮎澤先生(以下、敬称略) 多くは自宅待機で経過観察を行えばいい程度の軽症だったと報告されています。せきが出るなどの症状が現れて、対症療法が必要になった子どもは2割程度で、それ以外は治療も必要ない程度だったと考えられます。

――国内では、15才以下の3万人程度の子どもが新型コロナウイルスに感染したことになりますが、これらの子どもたちは、どのような経緯で感染したのだと考えられますか。

鮎澤 新型コロナウイルスはまだ解明されていないことが多いので、はっきりとしたことは言えませんが、現状では、子どもから子どもへの感染は少ないと考えていいと思います。そのため、子どもが感染する原因の多くは、家族など周囲の大人が感染源になっていると思われます。

子どもが重症化すると下痢や強い下腹部痛が現れることが多い

---2月25日に出されたガイドライン・提言の中に「少数ながら重症化した小児がいたことが明らかになりました」とありました。重症化した子どもは何人くらいいたのですか。

鮎澤 今のところ把握しているのは3例で、2例は10才前後、もう1例はもう少し上の年齢です。10才以下の小さな子どもが重症化したという話は、少なくとも日本国内では報告されていません。

――小さな子どもが重症化した例がないというのは、育児中のママ・パパにとって少し安心できる話ですね。でも、子どもが重症化した場合、どのような症状が現れるのかは知っておいたほうがよさそうです。

鮎澤 大人は肺炎が悪化して重症化することが多いですが、子どもはごく少数ですが、発熱のほかに下痢、発疹などが見られ、心臓の動きが悪くなることがあるようです。「小児多系統炎症性症候群」といわれる状態です。

――大人のように肺に症状が現れないのはなぜですか?

鮎澤 人の体内に侵入した新型コロナウイルスは、人の細胞膜にある「ACE2受容体」に結合することで増殖します。大人の場合、肺の細胞に「ACE2受容体」がたくさんあるため、肺で新型コロナウウイルスが増殖して、肺炎が重症化することが多いのです。
一方、子どもは、肺に「ACE2受容体」があまり存在していません。この受容体は血管の壁にもあり、血管の拡張収縮に作用しています。子どもの場合は、肺よりも血管で新型コロナウイルスが増殖し、血管に炎症を起こしやすくなると考えられます。

血管は全身をめぐっているので、さまざまな臓器に影響を与える可能性がありますが、今のところ消化器症状が目立っています。水様便(すいようべん)の下痢が急に始まり、盲腸炎のような下腹部の強い痛みを訴えるのが特徴的です。

川崎病になった子どもが「感染しやすい」「重症化しやすい」ということはない

――血管が炎症を起こす病気というと、小さな子どもの場合は川崎病をいちばんに考えてしまいます。「小児多系統炎症性症候群」は川崎病とは別の病気なんですね。

鮎澤 そうです。血管に炎症を起こすために、川崎病と似た症状を示したり、川崎病の診断項目(※)を満たしたりするケースがありますが、川崎病とは別の疾患です。
また、以前に川崎病になった子どもが新型コロナウイルスに感染しやすいとか、新型コロナウイルス感染症になったときに小児多系統炎症性症候群になりやすいといったことはありません。過剰な心配はしなくて大丈夫です。

――日本の場合、小さな子どもが新型コロナウイルス感染症で重症化した例は、今のところないとのことですが、年齢が小さくても急に下痢を起こしたときは、注意したほうがいいでしょうか。

鮎澤 小さな子どもは新型コロナウイルス以外の原因で下痢をすることのほうが多いので、あまり神経質にならなくてもいいとは思います。新型コロナウイルスとの接触がなくて、下痢、発熱、ぐったりするなどの症状が現れた場合は、まずかかりつけの小児科に電話で相談し、指示に従ってください。

一方、新型コロナウイルスに濃厚接触があったお子さんや、お子さん自身の感染が判明していて、自宅待機中に下痢、発熱、ぐったりするなどの症状が現れた場合は、新型コロナの診断を受けた医療機関に電話で相談し、指示に従ってください。

――周囲に新型コロナウイルスに感染した人はいないし、子ども本人も感染していないけれど、子どもが急に下痢や腹痛を訴えた場合も、かかりつけの小児科に行く前に電話で相談したほうがいいのでしょうか。

鮎澤 「子どもが新型コロナウイルスに感染すると消化器系に症状が出やすい」というのは、今後、小児科医の間で認知されていくと思います。ですが、小児多系統炎症性症候群を発症する子どもは、世界的に見てもかなり頻度は低いのです。感染者が非常に多いアメリカですら、子どもの感染者330万人のうち、小児多系統炎症性症候群の発症例は2617人だと、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表しています(3月1日現在)。つまり、アメリカでは小児1万人の感染につき約8人という頻度です。
周囲に感染者がいない場合、感染リスクは低いと思いますが、病院によって考え方は異なるので、受診前に相談するのがいいかもしれません。

いちばん大切なのは、子どもを新型コロナウイルスの感染から守ること。こまめな手洗いと、可能な年齢であればマスクの着用を徹底し、人が多い場所にできるだけ行かないようするなどの基本的な感染予防策を続けてください。

また、排せつ物にウイルスが混入していると考えられるため、公共のトイレを使用する際は注意が必要です。使用前に便座をアルコールで除菌し、使用後は手洗いと手指消毒をしっかり行いましょう。
そして、新型コロナウイルス感染症に限らず、子どもの病気を早期に発見できるように、「様子が普段と違う」と感じたら、早めにかかりつけ医に相談することが大切です。

※川崎病の特徴的な症状
①発熱
②体に赤い発疹ができる(BCG接種部の発赤を含む)
③唇が赤くなり、舌がいちご状にブツブツになる
④白目が充血する
⑤手足が赤く腫れ、解熱後に指先の皮がむける
⑥首のリンパ節が腫れる

お話・監修/鮎澤衛先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

子どもが新型コロナウイルス感染症で重症化するケースは少なく、また、重症化した「小児多系統炎症性症候群」と川崎病は違う疾患であるとのことです。
過剰に怖がる必要はないけれど、感染予防対策はこれまで通りしっかり続けていきましょう。

鮎澤衛先生(あゆさわまもる)

Profile
日本大学医学部小児科新生児科科長。専門分野は循環器、川崎病。日本小児科学会認定小児科専門医・指導医。日本循環器学会認定循環器専門医。日本川崎病学会副会長、日本小児循環器学学会評議員なども務める。

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