解決策は引っ越ししかないの? 子どもが出す騒音トラブル
家にいる間に出てしまう生活音のトラブルについては、コロナ禍で在宅が増えたことも原因の1つと言われています。その中でも、子どもが出してしまう生活音は、「静かにしようね」と言っても、なかなか子どもに理解させることは難しいです。
口コミサイト「ウィメンズパーク」のママたちの声から、トラブルになった例や少しでも音を低減させる工夫などを紹介するとともに、騒音問題総合研究所の橋本典久さんに、適切な対処方法を聞きました。
子どもにわからせることは難しい現実
まずは、生活音に悩んだママたちの声を紹介しましょう。
マンションの下の階の方から責められるように
「賃貸マンションに住んでいるのですが、下階の方から静かにするよう注意されました。
原因は、寝っ転がって床にかかと落としのようにドンドンしたり、壁に頭をぶつけたりしたときの息子の出す音。遮音マットにカーペットを敷いて対策をしました。
うるさくなりそうになったら、声をかけてやめせたり、他のおもちゃを勧めてみたりしていましたが、ご飯を作っていてすぐにやめさせられずにいると、下階から『ドンドンドンドンドン!』と音が。
うるさいことはわかっていますが、息子に言って聞かせても通じません。今日はチャイムがなり、ドアをバンバンと叩かれました。こちらが原因なのは分かっていますが、怖くて出ることはできませんでした。
1歳の子どもの騒音、どうやったらなくなりますか? 時間の経過を待つしかないのでしょうか?」
ビラを投函され、遮音のマットにカーペットを敷いて対策。でもなかなか…
「1歳を過ぎてからは踵で床をドンドンしたり、走り回ったり。幼児番組の体操を真似して飛び跳ねたりもするので、これからがもっと大変だと思っています。
うちは1階ですが、防音マットの上に厚めのフロアシートを敷いています。それでも足音は響いていそう。
壁にぶつかったり、引き戸を思い切り開けたりするのでヒヤヒヤものです。
8世帯中6世帯に0歳~3歳の子持ち世帯がありますが、最近生活音についての注意喚起のビラが投函されるようになり、どうしたものかと困惑しています」
敷布団を敷いたままにしていますが、これからどうなるのか…
「うちは和室に敷布団なので、今はわざと布団を敷きっぱなしにしています。布団クリーナーをかけて掃除したら、また敷いちゃいます。
子どもには、布団でならドンドンしてもいいよと言い聞かせています。
また、手が離せなくなる時は折りたたみできるベビーサークルを広げて、中に厚手のお昼寝マットを敷き、子どもを中で遊ばせたり。
言ってもわからない今の時期、ほんとに辛いですよね」
近所の人に注意をされて結局一軒家を買いました
「我が家も少し前まで同じ状況でした。
夫は転勤族で、子どもが1歳過ぎくらいに引っ越したアパートで、階下の人にドンドンと壁を叩かれるようになり、子どもが騒がないように気を付けても、マットを敷いて対策しても効果なしでした。
私も夫も神経質になってピリピリし、夫は若干鬱気味になってしまい、その時が一番辛かったです。
そこで出た結論は引越すしかないということでした。
今、子どもたちは3歳と2歳になり、1歳のときとは比べ物にならないほど走り回ってますが、アパート時代のストレスやイライラはなくなりました。
解決法にならないかもしれないですが、引っ越すしか解決法はないのかもしれません」
トラブルの発端はお互いの誤解から始まる
各家庭で工夫はしているものの、引越し以外の解決策はなかなか見つからないようです。
では、こうした生活の中での騒音トラブルについて研究している専門家はどんな指導をしているのでしょうか。
騒音問題総合研究所の橋本典久さんにお話を伺いました。
「マンションやアパートでの子どもの騒音トラブルは、『誤解』がキーワードです。
まず1つは、防音対策ができると思っていることです。苦情がくると防音マットや布団を敷いて対策をしますが、それでも下の階に響く音の大きさはほとんど変わりません。
この事実を上下階の住人双方が共有しないとトラブルになります。
上の階の住人は、「『防音マットを敷いて対策しているのに相変わらず苦情を言ってくる』と下階の住人の神経質さを嫌悪し、下の階の住人は『子どもの騒音を注意したのに少しも状況が改善しない』と上階住人の無神経さに怒りを感じます。
この誤解によって、お互いが被害者意識を持ち、その矛盾の中で相手に対する敵意を膨らませていきます。それが高じてお互いが相手の悪意(わざとやっている、嫌がらせで苦情をいってくる、など)を確信するようになると(これが誤解の場合もあります)、事件にも繋がりかねない最悪の状況となり、もう引越ししか解決策はなくなります。
管理組合などがこれら防音対策の誤解をしっかりと周知させるだけでも、トラブルの状況は大きく変わると思います。
防音による対策ができないなら、心理的な対策をするより仕方ありません。
その方法は下階の人と仲良くなることです。できれば苦情がくる前に、最低でも最初の苦情がきた時を好機として、相手との良好な関係を作る努力を始めなければなりません。
個々に状況が違いますから、方法は各自が考える必要があります。
心理学的な調査によれば、相手に好感を持っている場合は、相手が発する騒音を『邪魔』と感じる割合は、持ってない場合に較べて1/3に、トラブルにも繋がりかねない『非常に邪魔』という感覚は1/10に低減されるという報告がありますので、努力する価値は十分にあると言えます。
もし、下階の人が良好な関係を作るのに適していない場合にはどうしようもありませんが、そう感じているのも誤解ではないかと自省してみる必要はあるのではないでしょうか。
テレビや雑誌などで、防音対策としてカーペットを敷いたらよいというような内容が取り上げられていることもありますが、大事なのは『正しい知識』を持って対処することです」
防音の工夫をしても、その効果は少なく、相手との関係作りのほうが効果的なのですね。ご近所付き合いが少なくなっている昨今ですが、知り合いになっておくというのも1つの対策かもしれません。騒音問題は人と人との問題といえるのですね。
橋本典久さん
騒音問題総合研究所代表、八戸工業大学名誉教授。1級建築士、環境計量士。長年、騒音トラブル研究に取り組むとともに、トラブル相談活動も実践。
(取材/文・橋本真理子)
■文中のコメントは『ウィメンズパーク』の投稿を再編集したものです。