3歳児健診の「視覚検査」は弱視の子を出さないための大事な検査です【小児科医】
乳幼児健診の主な目的は栄養状態やその子なりのペースで発育・発達をしているかどうかを確認することです。「できる・できない」をテストされるわけではありません。
「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」#10は、3歳児健診での視覚検査についてです。
3歳児健診の視覚検査とは
3歳児健診の健診方法は自治体ごとで違いますが、千葉市では先に集団健診を受け、後日小児科で身体的な健診を受けます。集団健診に行く前には調査票のいろいろな項目への記入が必要(これも大変)ですが、視覚・聴覚の検査も受診前に自宅で行います。視力と聴力に問題がないかを調べる大事な検査です。
「見え方が同じか?」の目の検査には苦労します
左右の目の見え方が同じかを確認する検査なのですが、この検査には苦労します。小児科では、検査がスムーズに完結したかどうかを聞いています。「3歳でちゃんとできていないと、あとで困ることもあるけど」と言うと、お母さん・お父さんはドキッとされるようです。
検査道具を出して検査を始めようとすると、チャレンジ好きな子はやる気満々なのでやりやすいのですが、慎重派の子は、「ああして、こう答えて」と次々に言われると、スムーズに進まなくなることがあります。ルールの説明にも「わかんないよ~」と嫌がったり。検査が長引くと機嫌を損ねることも。うまくできないまま健診に行くことになることもあるのではないでしょうか。
日本弱視斜視学会、日本眼科医会、日本視能訓練士協会などの専門家集団のHPやYouTubeにもうまくやるための工夫がでていますので参考にしてみてください。年上の子がいる家庭なら、先にやって見せてくれると、まねしたがりの3歳児は遊び感覚になってできまるかもしれません。
3歳での検査の重要性(弱視の子を作らないために)
検査の目的は、視力がどのくらいあるかより、左右の視力に差がないかを調べることにあります。左右差があると、視力の悪いほうでは見ていません。その結果、就学前の検査で「弱視」と言われてビックリすることもあります。
視力が弱いほうの目は、0.1も見えない弱視になっていることがあるのです。視力は就学するころに完成しますが、左右差があると、弱視になってしまいます。弱視は眼鏡をかけても矯正できません。
大事なのは、片方ずつ目を隠して検査ができたか。左右差なく見えていたかです。うまくできなくてイライラしても「たぶん大丈夫」という見切り発車は止めてください。検査結果に自信がなければ、小児科で正直に「うまくできませんでした」とカミングアウトしてください。
ふざけていると思わないで、3歳のうちに見つけよう
実は左右が同じに見えない場合、3歳児はそのことをちゃんと伝えられなくて、ふざけたと誤解される子もいるようです。そういう時は何度やってもできません。あまりしつこくやらないで、その時の状況を保健師さんたちに伝えることも大事です。
自宅での検査がスムーズにできなくても恥ずかしがることはありません。保健師さんたちと一緒にやり直して、うまくできたら万々歳。もっと詳しく調べることになっても、3歳のうちに気になることを見つけられれば、早期に治療やトレーニングに取り組めるので、ちゃんと見える目が育ちます。
学会も注目(STOP! 弱視見逃し)
2021年7月15日に、日本眼科医会が、【3歳児健診における視覚検査マニュアル】を作ったと発表しました。弱視やその予備軍をもれなく見つけて弱視になる子をなくすというのが目標だそうです。専門的で難しい内容ですが、検査をうまくやるためのコツなどはわかりやすく書いてあるので役に立ちます。ちょっとのぞき見してみませんか。
『STOP!弱視見逃し』というタイトルの動画も載っていますよ。
文・監修/太田文夫先生 構成/ひよこクラブ編集部