【小児科医リレーエッセイ 32】 病児保育・病後児保育をもっと利用しましょう!
「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から、子育てに向き合っているお母さん・お父さんへの情報をお届けしている連載です。今回は、愛知県・ひだかこどもクリニック院長の日高啓量先生の「病児保育・病後児保育」についての内容です。
病児保育・病後児保育とは?
「病児保育」は、病気の子どもを預かる保育サービスで、「病後児保育」は、病気からの回復途中の子どもを預かる保育サービスのことです。一般的に小学生までを対象にしています。
近くに、病児保育・病後児保育の施設はありますか?
病児保育は全国に約1000カ所、病後児保育は約650カ所存在しています。
医療機関に併設している所、保育園に併設している所、独立している所などがあります。
多くは自治体が運営していたり、自治体からの委託で運営しているため、利用にあたっての条件があります(施設のある自治体に居住している、通勤しているなど)。最近では企業主導型保育事業での病児保育室・病後児保育室も増加傾向です。こちらは利用にあたっての自治体の制約はありません。
利用するメリットは?
病児保育・病後児保育とも、保育士・看護師(・小児科医)等の専門スタッフがかかわり保育を行います。一般的に、利用する子ども3人に対して保育士が1人以上担当するため、通常の保育園よりもきめこまやかな保育が可能で、病状に合わせた保育を行います。
メリットの一例です(施設により異なります)。
・お昼寝する時間や日中の過ごし方など、子どもに合わせた対応が出来ます。
・食事の内容・時間を臨機応変に対応してもらえます。
・必要な服薬をしてもらえます。
・必要に応じ1日単位での利用が可能です。
・必要に応じ医師の診察が受けられます。病状の急変などへの対応も安心です(医療機関併設型の場合)。
逆に、病児保育・病後児保育ならではの、利用しにくい点もあります。
施設の規模や人的制約により、預かることができる定員や感染症の種類が限られます。そのため、その地域で流行している感染症があると、利用申請をしても空きがなく、預けることが出来ないことがあります。
また、多くの施設では、事前登録→空き確認→予約→医療機関での診察・書類発行→入室→支払い、と手続きが煩雑になる傾向があります。
コロナ禍による病児・病後児保育への影響
2020年春ごろから緊急事態宣言発令の影響や感染対策の徹底による一般感染症減少のため、病児・病後児保育施設の利用者が前年比70%減となっている地域が多くありました。その後は、今年、2021年春からのRSウイルス感染症、パラインフルエンザウイルス感染症等の流行により利用者が急増しています(通常の保育園において、感染症症状を有する児の登園を以前より制限する影響があるためとも考えられます)。
入室前に新型コロナウイルスの抗原検査等を行うことにより、新型コロナに感染した子どもの入室を制限する試みが行われていますが、流行地域においては完全な鑑別は困難な状況です。保育士への新型コロナワクチンの接種により、より安全・安心な保育環境をつくることが望まれます。
病児・病後児保育の課題
多くの施設は国や自治体からの補助金・委託金と利用料で運営されていますが、利用者数が感染症の流行状況に左右されること、保育士・看護師の人手不足や人件費の上昇により、赤字運営を余儀なくされる施設が多くなっています。現状は施設の開設者やスタッフの熱意に支えられていることも多いです。
まずは気軽に利用してみましょう!
病気の子どもを他人に預けて仕事に行く事を、後ろめたく感じる保護者の方もいるようですが、そんな気持ちも含めて、保護者の方が安心して預けて仕事ができるように、子どもが安心・安全に過ごせるように、病児・病後児保育のスタッフは、プロとして保育を行います。家でみる、保育園に預ける、の2択ではなく、3番目の選択枝として病児・病後児保育を考えてみてください。
熱は下がったけど、まだなんとなく元気がない。夜間、せきや鼻詰まりでなかなかグッスリ眠れずに睡眠不足かもしれない。胃腸風邪で嘔吐(おうと)は治まったけど、下痢が頻回でおむつ交換をこまめに行う必要がある。インフルエンザに罹患(りかん)し元気になったけど、解熱後まだ72時間経過していないから、通常の保育園には登園できない。といった場合に、まずは利用してみませんか?利用することによるメリットを、保護者も子どもも感じていただけると思いますよ。