【注意喚起】ビタミンD欠乏による、くる病の恐れ…?! 厚労省が1歳以上での摂取基準の見直しを
骨や歯を丈夫にするだけでなく、感染症予防の観点からも注目されているビタミンD。食事以外に紫外線を浴びることでも作られる栄養素ですが、コロナ禍の外出自粛で赤ちゃんのビタミンD不足が心配されています。都内の小児科「クリニックばんびぃに」で栄養指導を行っている管理栄養士の川尻由美子先生に、離乳食期のビタミンDのとり方について話を聞きました。
ビタミンDは、なぜ積極的にとったほうがいいの?
ビタミンDは、骨や歯を丈夫にするはたらきがあり、成長期の子どもに欠かせない栄養素です。
「ビタミンDは主に魚介類に由来する特殊な栄養素で、食品からの摂取以外に、必要量の80〜90%は日光(紫外線B波)を浴びることにより皮膚で作られます。ビタミンDが欠乏すると、小児ではくる病、成人では骨軟化症を発症することがあります。
乳幼児にビタミンDが不足してしまう原因には、完全母乳育児であること、紫外線不足、離乳食の開始の遅れや、ビタミンDを含む食品を摂取していないことなどがあります。また、母乳にはビタミンDは少ししか含まれないため、母乳栄養だけの赤ちゃんは意識してとることが大切です」(川尻先生)
母乳だけではビタミンD不足に。適切な時期に離乳食を開始して
2020年版の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」で、1才以上の摂取基準の目安量が引き上げられたことからも、ビタミンDは健康のために大切な栄養素だとわかります。一方で、母乳や牛乳にはビタミンDが少ししか含まれないことがわかっています。
「栄養相談を受ける中で、最近は母乳育児の人が多いと実感しています。母乳育児はいいことですが、母乳だけでは赤ちゃんに必要な量のビタミンDをとることができません。母乳のみの場合は適切な時期に離乳食を開始することで、食事からもビタミンDをとることができるようになります。もし、離乳食の進み方が遅いと感じた場合には離乳食にミルク(人工栄養)の活用も検討してみてください。ミルクには1日に必要な量のビタミンDが含まれています。完全母乳育児の人も、ミルクがゆやミルク煮などで工夫ができます。母乳を与えられないときや災害用としてもミルクの備蓄(幼児にはフォローアップミルク)があると安心です。
また、食物アレルギーを心配して、離乳食開始の時期を遅くしたり、卵を与えることに慎重になったりしているママも多いと感じます。
2019年3月に改定された厚生労働省『授乳・離乳の支援ガイド』によると、卵黄は離乳初期(5〜6カ月)から与えることができます。卵を与えることを心配して先送りする前に、小児科医や栄養士に相談してみましょう。離乳食は適切な時期に適切な食材を使用して進めていくことが、いずれは食事から栄養をとっていくためのプロセスになります(川尻先生)
ただ、ビタミンDは大切な栄養素とはいえ、過剰摂取には注意が必要です。
「上の表にもあるように、栄養素には1日の耐容上限量が決められています。過剰摂取による健康障害として、成人は高カルシウム血症が起こる、小児では成長遅延が生じる危険性があります。通常の食事で耐容上限量までの量を摂取することは考えにくいですが、サプリメントや栄養強化食品の過剰摂取には注意が必要です。大人用のサプリメントを子どもに与えてはいけません。もし乳幼児用のビタミンDサプリメントを使用するときは小児科医に相談しましょう」(川尻先生)
ビタミンDを離乳食で効果的にとるためには「魚」を意識して
離乳食でビタミンDを効果的に摂取するためには、どのような食材をどのように取り入れればいいか、時期別に使いたい食材や離乳食への取り入れ方を川尻先生に聞きました。
【離乳初期(5〜6カ月ごろ)】魚や卵黄を食べるための練習時期
「離乳初期は、母乳・ミルク以外の食材に慣れることと飲み込む練習の時期でもあるので、まずは、おかゆや野菜から始めます。2回食のころには白身魚や豆腐などのタンパク質を含む食品から始めて、次にビタミンDを含む魚や卵黄を少しずつ試してみましょう。しらす干しは簡単でおすすめです。熱湯を回しかけて塩抜きし、すりつぶしておかゆなどに混ぜてみるといいでしょう。
卵黄は、かたゆで卵の黄身をつぶして、耳かき1杯くらいの量から初め、徐々に増やします。完全母乳育児をしている人は、ミルクを使用したミルクがゆもおすすめです。ミルクは余ったら大人用のシチューなどに使っても。こくが出ておいしくなります」(川尻先生)
【離乳中期(7〜8カ月ごろ)】魚を使ったベビーフードも活用して
「たら、鯛などの白身魚に慣れてきたら、中期からは鮭、かつお、めかじき、まぐろにチャレンジできるようになります。しっかり加熱してこまかくほぐし、少量ずつ試してみましょう。オイル・食塩無添加のツナ缶(まぐろ)を使うのも便利です。また、離乳中期には全卵を食べさせることができます。しっかり加熱してすりつぶしなめらかにして、おかゆやうどんに混ぜてあげるといいでしょう。
市販のレトルトのベビーフードには7カ月から鮭やまぐろが入ったものなどがあります。もし家庭で魚を調理するのが心配だったり、めんどうだったりするならベビーフードからスタートするのもおすすめです。日常的に魚を食べる習慣にもつながります」(川尻先生)
【離乳後期(9〜10カ月ごろ)】青背魚も少しずつ取り入れてみましょう
「いわし、さんま、ぶり、あじなどの青背魚も食べられるようになってきます。この時期は3回食になりますから、ママやパパの食事から取り分けてあげるのもいいですね。さんまなら、塩を振らずにじゅうぶんに焼いて赤ちゃん用に取り分け、大人は後からしょうゆをかけて食べるといいでしょう。ぶりは煮魚にすれば、味が濃くないところだけ赤ちゃん用に取り分けてあげることもできます。
まいたけ、きくらげ、干ししいたけなどのきのこ類はビタミンDは豊富なのですが、こまかくしないと食べにくい食品です。たとえば干ししいたけは乾燥のまますりおろして、汁ものや煮ものに入れる・混ぜる・トロミをつけるなど食べやすく工夫をしてみましょう」(川尻先生)
【離乳完了期(1才〜1才6カ月ごろ)】缶詰やビタミンDを強化した市販食品を取り入れることも
「1才以降の幼児では、魚やきのこなどのビタミンDを含む食品を多くとる機会が増えます。食塩の含有量に注意すれば、鮭、いわし、さばの水煮缶も手軽で便利です。
また1才以降には、ビタミンDを強化した食品を取り入れることもできます。スーパーで手に入り、1日の耐容上限量の範囲内で栄養素を摂取することができます。
家族みんなでビタミンDを含む食品をとることで、食生活の改善が期待できます。ただし、大人向けのものは1日に何本も飲んでしまうとビタミンDや甘さの過剰摂取になるため、表示を見て量には注意しましょう」(川尻先生)
取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
近年は家庭でビタミンDを多く含む魚を食べる機会が減少し、日本人の食生活がビタミンDをとりづらくなっている状況なのだとか。さらに室内勤務の増加や美白意識の高まりによって、紫外線を浴びる機会が減少しているのもビタミンD不足の原因に。ビタミンDは一生にわたって大切な栄養素なので、親子で適切な日光浴と栄養摂取を心がけることが大切です。