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【小児科医リレーエッセイ 37】 保湿剤・赤ちゃんみんなに必要なの?

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スマイルの赤ちゃん
※写真はイメージです
yamasan/gettyimages

「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から、子育てに向き合っているお母さん・お父さんへの情報をお届けしている連載です。今回は、神奈川県横浜市・星川小児クリニック院長の山本淳先生と副院長の橋口可奈先生からのメッセージです。「赤ちゃんの保湿」についてです。

スキンケアとアトピー性皮膚炎・食物アレルギーの関係

「赤ちゃんの肌には、保湿、スキンケアが大切です。とくに食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の予防とって大切なので、お医者さんがすすめる保湿剤を毎日塗ってくださいね」というようなトーク、読んだこと、聞いたことがあるお母さん・お父さんも多いと思います。
確かに、皮膚からさまざまなアレルゲン(アレルギーの原因になる物質)が入ってきて、アレルギーが始まるというのは、以前は仮説といわれていましたが、アレルギーの原因がそればかりではないにせよ今は定説といってもいいと思います。しかし、赤ちゃん全員に対して、毎日保湿剤を塗ることがそんなに必要なのでしょうか。昔は保湿剤なんてほとんどなかったけれど、アレルギーの子どもはあまり多くなかったことを思うと、ちょっと変な気がしませんか。 
しっかりと保湿をした子のほうが、アトピー性皮膚炎の発生率が少なかったというデータは有名ですが、それは、家族歴からアトピー性皮膚炎発症リスクが高い赤ちゃんをピックアップして比較したデータなので、差が出て当然だと思っています。
しかしその後、とくにリスクが高くない赤ちゃんも含めた大規模な調査では、保湿をしっかりしてもしなくても差はなかったということですし、最近では保湿のし過ぎがかえってアレルギーの発症に悪い影響があるかもしれないという論文も出ているくらいで、少し立ち止まって考えてみてはどうかと思っています。(※1)

赤ちゃんの肌の調子が悪くなったら適切な軟こうでの治療が大切

赤ちゃんの肌の調子が悪くなった場合、大切なことが2つあります。
ひとつは、赤ちゃんの湿疹(しっしん)は放置せず、早期にしっかり治療すれば、短期間でとても治りやすいということがわかっているということです。橋口先生の体験を紹介します。

『私が星川小児クリニックに勤務し始めた数年前、とても驚いたことがあります。
それは、肌の調子の悪い赤ちゃんがとても少ないということです。
なぜだろうと考えていくと、クリニックでは生後2カ月前後のワクチンデビューのときに、肌の調子が悪かった場合、すぐに軟こうで治療して治してるからだとわかりました。
赤ちゃんの肌の生まれ変わりはとても早く、治療をするとすぐに治ります。そのおかげで、星川小児クリニックに通う赤ちゃん・子どもには食物アレルギーの子も少ないことがわかりました。以前勤務していた病院では、適切なタイミングで適切な治療がされないまま肌の調子が悪くなり、離乳食が開始されるころになってから紹介されてきて、結局食物アレルギーになってしまっている赤ちゃんがたくさんいました。赤ちゃんは離乳食開始ごろによだれかぶれができたり、時々おしりが赤くなったりします。夏にはあせもができたり、冬は乾燥でかゆくてかいてしまったりということがあります。それは、適切な軟こうで治すことができます』

食物アレルギーになりやすい食品の摂取開始を遅らせないこと

もうひとつは、食物アレルギーになりやすい食品の摂取開始を遅らせず、むしろ早い時期から少量でも続けていくと、その食品の食物アレルギーの予防は十分できるということも明らかになってきています。
大人が食べているものと同じ食材をちょっと利用して赤ちゃん用に離乳食を作っていた昔の離乳食の食べさせ方と似ていますね。それも昔、食物アレルギーが少なかった理由のひとつかもしれません。今は、お菓子類、ナッツ類など、家庭内には赤ちゃんが食べない食材もあふれていますので、食事ができるようになる前の赤ちゃんの皮膚の状態には、昔より気を配ってあげたほうがいいと思いますが、乳児期も後半になるとよい意味で少し気を抜くことができそうです。

保湿に神経質にならずに「のんびりスキンケア」を

時々「赤ちゃんには保湿が大切と聞いたので、ずっと保湿剤を処方してもらって塗り続けているのですが、こちらの小児科でもできるだけ多く出せるだけ処方してください」というようなお母さんが来院することがあります。見ると皮膚は何の問題もなさそうです。私たちのクリニックではそのような処方はお断りしていますが、中には「無料で保湿剤がもらえるから処方し続けてもらっているのに」というお母さん・お父さんもいて、医師もさすがに困ってしまいます。
ちょっとぐらいのかさつきは、子どもにとって正常範囲。使うとしても市販の保湿剤で十分、むしろ優れたものもいろいろあるようです。一部、病院から処方される保湿剤が必要な赤ちゃんもいますが、「このカサカサは市販の保湿剤で十分ですよ。」という言葉を喜んでもらえるといいなといつも思います。

さらに気になるのは、きれいな皮膚になっても保湿剤の処方を求め続けるお母さんたちの表情です。子育てを楽しむ余裕がなくなっているような、ちょっと緊張している感じがします。保湿剤を毎日塗らなくてはいけないということがかえってストレスになっているのでしょうか。ちょうど、行き過ぎた「新型コロナ感染対策」で、子どもや保護者にストレスになるのとちょっと似ています。
これには、さまざまなメディア、はんらんするネット情報の影響もあると思います。
健常な皮膚の赤ちゃんに、毎日保湿剤を塗る必要はありません。アレルギー体質を予防するためなら、乳児期後半は、広く浅く、いろいろな食べ物を食べさせてあげて、食物アレルギーになるのを予防しながら、湿疹ができたときはちゃんと治療すれば十分です。
食事の楽しさと、子育ての楽しさを感じながら、アレルギーの予防もできます。
スキンケアはわかりやすい言葉だと思いますが、「のんびりスキンケア」のほうがもっといい言葉じゃないかなと思います。

文/山本淳先生

文/橋口可奈先生

※1 掲載誌:Journal of Allergy & Clinical Immunology (11.248) Vol. 134, Issue 4, October 2014.

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