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妊娠25週・体重約900gの胎児の心臓手術が日本で初めて成功! 「救える命を増やしたい…!」指揮した医師の想いを聞く

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国立成育医療研究センターでは、2021年7月、妊娠25週の胎児の先天性心疾患「重症大動脈弁狭窄症」の手術に成功しました。これは国内で初めてのことで、妊娠38週で3700gの赤ちゃんを出産したあとに発表されました。手術で指揮をとった、副院長・周産期・母性診療センター 左合治彦先生に、手術のことや手術までの経緯、その後の経過などについて聞きました(写真は、国立成育医療研究センターで行われた胎児の重症大動脈弁狭窄症の手術の様子)。

1万人あたり3.5人の割合で発症する、重症大動脈弁狭窄症とは!?

重症大動脈弁狭窄症とは、先天性の心疾患です。早期発見・早期治療が赤ちゃんの命を守ることにつながる病気です。
――先天性心疾患の重症大動脈弁狭窄症とは、どういう病気でしょうか。

左合先生(以下敬称略) 重症大動脈弁狭窄症とは、胎児および新生児の命にかかわる重大な病気で、発生頻度は1万人に3.5人(※)。非常にまれな病気です。
重症大動脈弁狭窄症は、心臓の弁のひとつである大動脈弁の通り道が極度に狭くなる病気です。今回の症例は、左心室の出口が極端に狭いため、左心室に過度な負担がかかることで、左心室内が小さくなる左心低形成症候群が起きたり、心臓の機能が低下して心臓の働きが悪くなったりする可能性がありました。
重症大動脈弁狭窄症は、狭窄の状態にもよりますが、発見や適切な治療が遅れると心不全を起こして、胎児期や誕生直後に亡くなる赤ちゃんもいます。また出生後の治療では、十分な回復が見込めないこともあります。

――国立成育医療研究センターでは、胎児の重症大動脈弁狭窄症の手術は、これまでも行われていたのでしょうか。

左合 今回が初めての手術で、初めて成功しました。国立成育医療研究センターでは2002年のセンター開設時から「胎児治療科」を作り、胎児治療に取り組んでいますが、重症大動脈弁狭窄症については、海外の医療現場の視察を行うなど10年ほどの準備期間を経て2019年より治療の体制が整っていました。その中で1例目が2021年7月に成功したということです。
今後5症例の成功をめざしていきます。

――2019年から手術ができる状態で、2021年が1例目になったのがどうしてでしょうか?

左合 重症大動脈弁狭窄症は非常にまれな病気です。そして、いくつかの条件をクリアしないと胎児治療はできません。
主な条件としては、次の4つです。

1)胎児のうちに治療をしないと病状が非常に悪化するとともに、胎児のうちに治療を行うと病気の進展が予防できる状態である
2)この病気の胎児治療に適している妊娠22週0日~31週6日である
3)胎児治療のリスク説明をして、保護者の同意が得られる
4)胎児がうつぶせなどではなく、手術に適した体の向きである

これまでも妊娠中に重症大動脈弁狭窄症が判明したケースが4例ありましたが、条件が合わず胎児治療ができませんでした。

――胎児の重症大動脈弁狭窄症の手術は、海外のほうが進んでいるのでしょうか。

左合 胎児の重症大動脈弁狭窄症や重症肺動脈弁狭窄症の手術は、アメリカやイギリス、オーストリア、フランスなどでも行われていますが、各国とも治療が行われるのは国内で1施設ぐらいです。アメリカは2000年から始めており、年間で5例ぐらいの重症大動脈弁狭窄症の胎児治療を行っています。

妊娠24週の妊婦健診で、赤ちゃんの心臓に異常が見つかる

今回、重症大動脈弁狭窄症の胎児治療を受けた妊婦さんは、妊娠24週のとき、かかりつけの産婦人科で妊婦健診を受けて、心臓の異常が見つかったそうです。

――重症大動脈弁狭窄症の胎児治療に至った経緯を教えてください。

左合 妊婦さんが通っていたのは、国立成育医療研究センターではなく別の産婦人科です。妊娠24週のとき、かかりつけの産婦人科で妊婦健診を受け、エコー検査で「赤ちゃんの心臓が大きくなっている」と判明。地域の基幹病院ですぐに詳しい検査が行われ「心臓が大きくなっているのは、大動脈弁狭窄症のため」とわかり、国立成育医療研究センターに紹介されました。
こちらでの検査の結果、重症大動脈弁狭窄症で胎児治療の適応があると判明し、妊婦さんとご主人にこの病気の特徴や胎児治療のことをていねいに説明しました。
重症大動脈弁狭窄症の胎児治療は、約70~90%の確率で成功(※)しますが、胎児が亡くなるリスクも10%(※)ほどあります。また術後の経過がよく左右の心室を使って血液の循環を成り立たせることができるのは 30~50%程度(※)です。
そうしたリスクを説明したところ、ご両親ともに「少しでも元気に産んであげたい」ということで、すぐに胎児治療を行うことになりました。妊娠24週の妊婦健診で異常が判明し、25週には胎児治療を行ったので、短期間に大きな決断をされたと思います。

――手術は、かなり難しいものなのでしょうか。

左合 手術時の胎児の体重は約900g。体の大きさは、小さめのキャベツ1個分ぐらいです。
心臓の大きさは、大人の親指の先端ぐらいです。小さな心臓のねらった場所に針やカテーテルを通していくため、かなり難しい手術です。
手術は、胎児の位置や状態を確認したりする産科、手術を行う小児循環器科、麻酔を管理する産科麻酔科、新生児科などの医師がワンチームになって行います。メンバーは10人以上です。

――重症大動脈弁狭窄症の胎児治療の方法について、わかりやすく教えてください。

左合 まずはお母さんと胎児に麻酔をかけ、エコーで観察しながらお母さんのおなかから18ゲージという採血に用いるより少し太い針を刺し、針を胎児の左心室内へ進めます。次にガイドワイヤーと呼ばれる細い針金を狭くなっている大動脈弁(左心室の出口)に通過させ、それに沿ってバルーンつきのカテーテルを通していきます。最後に、大動脈弁でバルーンをふくらませて弁を広げます。
カテーテルを通してバルーンをふくらませるまでは5分ぐらいですが、針を通す位置を決めたりするのは慎重に行うため、かなり時間を要します。

重症大動脈弁狭窄症の胎児治療のイラスト

妊娠25週の胎児の心臓は、大人の親指の先端ぐらいの大きさしかなく、細い針金を狭い大動脈弁(左心室の出口)に通過させるという難易度の高い手術。

重症大動脈弁狭窄症の胎児治療の安全性・有効性が確立すれば、救える命が増える!

この手術は、母体への影響はほぼないので、術後2週間ほどで退院。その後、妊娠38週で出産しています。

――赤ちゃんは、無事に生まれたのでしょうか。

左合 妊娠25週での胎児治療後、妊婦さんが住んでいる地域の近くの病院と国立成育医療研究センターで妊婦健診、経過観察を続け、妊娠38週に帝王切開で無事に出産しました。
当初は経腟分娩の予定でしたが、お産の進み方があまりよくなかったために、急きょ帝王切開になりました。産後お母さんは通常の帝王切開時と同じような経過で、順調に回復し退院しています。
赤ちゃんは心臓の経過観察が必要なので、一般病棟に入院中です。左右の心室を使って血液の循環が成り立つか診ているところです。

――重症大動脈弁狭窄症の胎児手術の今後について、教えてください。

左合 この手術は、まだ研究段階です。国立成育医療研究センターでは、2019年2月から「胎児大動脈弁形成術」の安全性と有効性を評価する目的で研究を行っており、今回の手術は1例目で、目標症例数は5例です。
重症大動脈弁狭窄症の胎児手術の安全性と有効性が明らかになり治療が確立されたら、この病気で亡くなったり、出生後、手術をしても十分な回復が見込めない赤ちゃんたちを救うことが増えていくはずです。

写真・資料提供/国立成育医療研究センター 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

お話・監修/左合治彦(さごう はるひこ)先生

国立成育医療研究センターでは、2019年2月から重症大動脈弁狭窄症の胎児治療の国内唯一の基幹施設として、北海道大学病院、宮城県立こども病院、長野県立こども病院、静岡県立こども病院などと協力しながら研究を進めています。またそのほかの病気については、胎児治療の質の向上のために、全国の大学病院や小児専門病院などと「日本胎児治療グループ」を作り、情報提供を行っています。

※印は、2021年12月 国立成育医療研究センター発表のリリース「先天性の重症大動脈弁狭窄症に対して国内初の胎児治療を実施」より。

「先天性の重症大動脈弁狭窄症に対して国内初の胎児治療を実施」

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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