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子どもとシニアは好相性!子どもがお年寄りを大切にする気持ちも育まれる「グランドシッター」の役割

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定年退職後のシニア世代が保育園で保育補助を行う“グランドシッター”が広がりを見せています。一般社団法人日本ワークライフバランスサポート協会の認定「グランドシッター」資格を60代で取得したのち、神奈川県内の保育園で働く2人のグランドシッターに話を聞きました。

グッピーの世話も、Wi-Fi設定も、頼まれごとはなんでもやる

養成講座で人形で着替えの実習をする木村さん

横浜市在住の木村敬一(68才)さんは、母親の介護のため、それまで勤務していた電子部品メーカーを58才で早期退職。5年間の介護生活を経て母親をみとったあとにグランドシッターとして横浜市内の保育園で働き始めました。

「年金だけで暮らすには厳しいので、長く続けられて人の役に立つ仕事を探していてグランドシッターの研修を知りました。以前の仕事ともまったく違うことをやってみたかったし、介護は母で経験していたので、保育にチャレンジしてみようと思ったんです。独身で子どももいないので未知の世界でしたが、ちょうど待機児童問題などが話題になっていたころで、われわれの世代が手助けできれば、子どもたちももっと育ちやすくなるのではと感じました」(木村さん)

勤務は月曜〜金曜の10〜19時、今年で5年目となります。仕事内容は主に保育補助。保育士さんに頼まれたことはなんでもやるそうです。

「嘔吐(おうと)した子がいればその処理をしたり、具合が悪い子の保護者が迎えに来るまで一緒に過ごしたり、コロナ禍なので園児がトイレをしたあとに便座をふいたり、園で飼っているグッピーやメダカのお世話や水槽の清掃もしています。また、時間が取れない保育士さんたちに代わって、園のインターネット環境の設定なども行っています」(木村さん)

グランドシッターのやりがいは「ありがとう、と言われること」と木村さん。

「ある降園時、お迎えに来たパパにぐずっている子がいました。パパは急いで帰りの準備をしているんだけど、その子はどうしてもその日の出来事をお話したかったようでした。そこで、私が近づいて『そんなことがあったんだね』と話を聞いてあげたんです。するとその子の気持ちも少し落ち着いて、パパから「ありがとうございます、おかげで助かりました」と言われました。私でも役に立てることがあるんだな、と感じた出来事です」(木村さん)

園児たちとの日々の触れ合いや成長にも幸せを感じると言います。

「1才の子でも『キムシェン(木村先生)』と私の名前を呼んでくれることや、子どもたちがよちよちと足元に歩いてきてくれるだけでもうれしいこと。毎日成長を見て感動し続けています。卒園児が街中で会うと声をかけてくれるのもうれしい瞬間です」(木村さん)

初めはエプロン姿も抵抗があった。今は園児の成長を見るのが何よりうれしい

養成講座で絵本の読み聞かせをする加藤さん

東京都在住の加藤真さん(68才)は横浜市の保育園で週3日、8時〜13時のパートタイム勤務をしています。木村さんと同じく5年目となり、毎日1時間半ほどかけて通勤しています。
1人息子の子育ての時にはおむつ替えやおふろに入れることなども経験していたものの、グランドシッターの養成講座を受講したころは受講生の中で保育にかかわろうというモチベーションはいちばん低かったと思う、と言います。

「養成講座を受講したのは、シニア世代が保育の世界に入ることで“みんなで子どもを育てる社会を作る”というグランドシッターの理念に共感したからです。30年以上IT企業の管理職をしていましたが、それ以外の世界を知らない自分が、ほかにもっとできることがあるのでは、という思いもありました。だけど特別子どもが大好きなわけではなかったし、前職の先輩や仲間にも『まさか、一体何を思い立ったんだ』と驚かれました。初めはエプロンをつけて散歩に行くことにも抵抗がありました。園児と一緒に歌ったり踊ったりするのはいまだに苦手です(笑)」(加藤さん)

加藤さんの業務内容は、食事・トイレ・着替えの介助、お散歩の付き添いや昼寝ベッドの用意などさまざまな保育補助です。朝の共同保育(担任が出勤前に全クラス合同で過ごす時間)では、子どもにせがまれて電車遊びやごはん作りの遊び、絵本を読んだりもするそうです。

「朝の園児の受け入れ時間は、忙しい保育士さんに代わって園児と一緒に遊びます。私は折り紙やお絵かきが昔から好きなので、園児にキャラクターを描いてあげることもあります。折り紙の折り方がわからなくなった子は本を持って私に聞きにきます(笑)。私が腰を下ろすと誰かがひざに乗ってきて、ひざの取り合いになることも。園児たちはかわいいし、おもしろいし、毎日違う出来事の連続で、彼らの成長を見られるのは幸せなことです」(加藤さん)

グランドシッターの存在が子どもたちにどう影響する?

イベントの一時保育でお絵かき遊びをしている様子

木村さんも加藤さんも、保育補助の仕事に自分から意見することはない、と言います。心がけているのは、裏方に徹して保育士をサポートすること。

「保育士の先生方はどの園児にも笑顔で接している、その姿を尊敬しています。保育士さんの素晴らしい笑顔が、園児に向けられる時間を1分1秒でも増やしてあげたいと思っています。先生によって保育のしかたやタイミングが違う部分もあるのでそれぞれのやり方に合わせてサポートし、どの先生にも公平にコミュニケーションを取るように心がけています」(加藤さん)

他方で、グランドシッターならではのかかわりが子どもにもたらす影響もありそうです。

「保育士の先生は1人で何人もの子どもを見なくてはなりません。ママもパパも登園時や降園時は大忙し。そういう中で、私とのゆるいかかわりを通して安らぎを感じてもらえたらいいなと思っています。またシニア世代とのコミュニケーションの手助けになればいいなとも思います」(木村さん)

木村さんは、グランドシッターとして働く中で、自身の子育て世代への見方の変化もあったと言います。

「以前は電車の中などで小さい子どもが大声を出すと『うるさいな』と感じることが多かったですが、『大変だな』と思うようになりました。子連れのママやパパたちが電車に乗る時も周囲にすごく気をつかっていますよね。想像だけで考えるのでなく、実態を見ていることがとても大事。そのためには、われわれ世代も子どもたちと触れ合える機会が多いほうがいいんだろうなという気がしています」(木村さん)

【日本ワークライフバランスサポート協会 武市さんより】グランドシッターの活躍でもっと子育てしやすい社会をめざしたい

子どもとシニアの相性はいい事ばかり!子育てには多くの大人の目が必要ですね。幼児期にシニアのゆったりした存在に触れることは、大人になった時、お年寄りを大切する気持ちも育ち、接し方の経験にもなります。グランドシッター養成講座で学んでくださり保育の周辺でお仕事をしてくださるシニアが増えていくと、子育てへの理解も深まりママパパにとって安心な社会につながると思っています。

お話/木村敬一さん、加藤真さん 協力/武市海里さん(一般社団法人 日本ワークライフバランスサポート協会 理事長) 写真提供/一般社団法人 日本ワークライフバランスサポート協会 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

受講当時はモチベーションが低かった、という加藤さん、今ではグランドシッター養成講座の講師も務めています。「せっかくかかわったのだから、グランドシッターの認知度を向上させたい。グランドシッターが保育現場にかかわることで、園児にも子育て世代にもシニア世代にもいい変化が起きるといいなと考えています」と話してくれました。これからの社会を担う子どもたちにとって、多様な世代や人とかかわり、コミュニケーションを取れることが大切なのではないでしょうか。


※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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