フリーアナ・登坂淳一 仕事が多忙で育児との両立に悩む。「これではまずい」と気づいたこととは?
現在50才で、生後10カ月の娘さんのパパでもあるフリーアナウンサーの登坂淳一さん。この連載では、娘さんとの育児の様子や、夫として・パパとしての思いなどを登坂さん本人の言葉でつづってもらいます。連載5回目となる今回は、パパの育児悩みがテーマです。2月に初めての舞台演劇に挑戦したという登坂さん。忙しさが増した仕事と、育児との両立の大変さを痛感したそうです。
「登坂パパ50才 家族ファースト主義」第5回
離乳食が進んで、準備に費やす時間が増えた
2月は舞台出演で、1カ月前から稽古(けいこ)、そして本番と、いつにも増して忙しくなりました。「新たな挑戦」は、ホリプロに所属してからの一貫したテーマですが、今回は一歩踏み出すのに勇気が要りました。しかし、無事に公演を終え、やってよかったと思います。一方で、娘と過ごす時間が少なくなり、子育てでは課題が浮き彫りになりました。舞台の稽古は午後から夜までだったので、娘のことができるのは、必然的に朝からお昼過ぎまでに。今、娘は離乳食が1日3回に進みました。ミルクは朝と寝る前だけなので、「今日は何を食べさせようか」と考えたり、その準備に費やす時間が以前よりも格段に増えました。
前にも書きましたが、わが家では、食事の時間をとくに大事にしています。娘にもそれが少しずつ伝わったのか、「食べる」ことをとても楽しみにするようになりました。妻は、娘の好きなものや、食べられるものを確認しながら、栄養バランスに配慮した離乳食のストック作りを進めてくれていました。私は、稽古に行く前に、その日の1回目の離乳食を娘に食べさせながら、ふと、「これではまずい」と思いました。つまり、自分が考え、準備する部分が激減していたのです。そしてこれは、パパの子育てについて、大きな問いを私に投げかけていたのです。
1カ月の育児ブランクで、おむつ替えに手間取る状態にがくぜん!
舞台の公演が終わった数日後、娘の離乳食、この日はミートソース、を解凍しようと朱色の清水焼の器に入れてレンジで温めようとしたら、なぜか手元が滑り、欠けてしまうという失態。何かにトライしたならまだしも、この手のミスはとても萎(な)えます。別の日には、娘をおふろに入れ、上がったあとのおむつ、パジャマを着せるのに手間取り、娘はご機嫌斜めに。毎日していたことが約1カ月でスムーズにできなくなっていることにがくぜんとしました。
私は、娘が生まれてから、ミルクをあげたり、おむつを替える、沐浴(もくよく)、寝かしつけや遊び相手など、パパができないことはないようにしたいと思いやってきました。しかしここに来て、そうでもないかもと感じます。最大の要因は、食事にまつわること。圧倒的に妻のほうがおいしく手際よく、そして娘に食べる楽しさを伝えていると、側で見ていて実感するからです。食事については、夫婦で役割分担とか、得意なほうがやればよい、ということではないと考えています。妻が仕事に復帰したら、これでは成り立たないと、痛感しています。
お世話前の「セットアップ」からが子育て
間もなく娘は10カ月になります。すくすくと育ってくれて、本当にありがたい限りです。パパとして私のこの10カ月はどうだったのか?ふと気になり、妻に聞くと、真剣な表情で「よくやっているとは思う。ただ…」とその後の言葉を探しながら「準備する部分は、ほぼ私だよね」と。すぐに思い浮かんだのは、離乳食のことでした。確かに、おかゆのストックでも、妻は鯛を湯引きした際のだしを少し混ぜるなど「ひと手間」加えています。同様に娘の好きなものをうまく組み合わせて、楽しくなる演出をしていました。
妻が言うには、準備というのは、家の中で子育てする環境を整えること。たとえば、ミルカーに計量した分の粉ミルクを入れるとか、おむつの在庫を把握する、娘の行動範囲に危険はないかを確認するなど、何かをする前のいわば「セットアップ」。なるほど、うなずいていたら、あとは「片づけも」と声が飛んできました。娘が生まれて、私が最も多忙となったこの1カ月、妻もとても大変だったのだと思い、あらためて「ありがとう」と感謝を伝えました。乳児から幼児へと歩みを進める娘の子育てを、パパはもっといろいろ挑戦していこうと気持ちを新たにしました。
文・写真提供/登坂淳一 構成/ひよこクラブ編集部
お世話する前段階の準備も、片づけも子育てのうちと気づいたという登坂さん。次回も登坂さんのパパ目線での子育てを紹介します。お楽しみに!
登坂淳一さん(とさかじゅんいち)
PROFILE
1971年生まれ、東京都出身。1997年NHK入局、初任地は和歌山放送局。
その後、2003年からは東京アナウンス室へ異動し「おはよう日本」などを担当。35才で白髪染めを中止し話題になる。2018年にNHKを退社し、現在はフリーとして活動し、オフィシャルブログ『白髪のパパ』(https://ameblo.jp/tosakajunichi/)で子育ての様子を発信している。