「昔はもっと大変だった」「眠れなくてあたり前」何気ない実母の言葉がグサリ…私が産後うつになった話【体験談】
出産直後のマタニティブルーズを過ぎても、産後2~4週間以降も憂うつな期間が長引くとされている“産後うつ”。現在8カ月の子どもを育てているAさんも産後うつに悩まされた一人です。不眠や動悸などの体調不調が重なり、何もないのに自然に泣けてくるようになってしまったというAさん。病院に通うまでの経緯や現在の状況をお伺いしました。
実母の何気ない言葉がグサリ
産後は不眠や動悸などの体の症状とは別に、他人の言葉にも敏感になっていました。
実母と仲が良い私は、眠れないことや体の不調を聞いて欲しくて、里帰り中に話をしました。しかし、実母はアドバイスのつもりだったと思うのですが「昔はもっと大変だったから、今の子育ては楽だよ」「今は眠れなくてあたり前」と言われ、甘えている自分が責められているような気がしてしまいひどく落ち込んでしまい、実母に悩みを打ち明けるのもつらくなってしまいました。
普段だったらあまり気に留めなかったと思いますが、当時はそういった言葉に敏感になっていたように思います。実際に実母だけでなく友人から励ますつもりで言われた一言も、マイナスに捉えてしまい傷つくこともありました。
「周囲に気を使わせたくない」すぐに病院に行けなかった
自分は産後うつではないかと疑い始めたのは産後1カ月半ごろ。不眠をはじめ様々な体調不良が続き、気持ちが落ち込んでいたのですが、マタニティブルーズにしては長いと思うようになりました。しかし、「まさか自分が産後うつになるなんて」という思いや「周囲に気を使わせたくない」という思いが強く、すぐに病院に行くことができませんでした。
しかし、体調は一向によくならないので「動悸は心臓が悪いのかも……」と思い、病院で循環器を調べましたが異常なし。不眠もしばらく産科で睡眠導入剤をもらっていましたが、完全には治りませんでした。
血液検査や心電図などいろいろな検査をして、やっと自分のメンタル面をケアしたほうが良いと気づくことができ、産後3カ月半経った頃にようやく心の病院を受診する決意をしました。
産後うつは珍しい病気ではない
病院に通うことを決めたものの、どこのクリニックも予約待ち。「こんなことならもっと早く病院に行く決意をしていればよかった」と思うほどでした。やっとのことで病院を見つけ、産後4カ月で受診することができました。
はじめて受診した時、主治医に「産後うつは珍しい病気じゃないからね」とポツリと言われて、少し心が軽くなったのを覚えています。
実際に治療をはじめると周囲に迷惑をかけるということはなく、むしろ理解が深まり協力的になりました。最初は体調に大きな変化がありませんでしたが、時間が経つにつれて同じ薬でもだんだんと眠れる時間が増えてきました。動悸がするときも「いざという時は薬がある」と思うだけで少し気持ちが楽になりました。
嫌なことからは少し離れることも大切
時間が経つにつれて自分なりに考え方が整理されてきて、少しずつ物事をおおらかに考えられるようになってきました。何をしても子どもが泣き止まない時は、無理に相手をせず、少し別室に行って自分の気持ちを落ち着かせることもできるようになりました。
数ヶ月間は実母とあえて距離を置きましたが、今では普通に話せるようになり、子どもが成長するにつれてどんどん可愛がってくれるので助かっています。
自分の心を守るために、しんどいときは無理につらいことと向き合おうとしなくてもいいということを、身をもって感じました。
自分と他人を比べない
私の場合、「みんなはうまくやれている」「こんなに弱い母親で情けない」と他人と比較してどんどんネガティブな方に考えてしまっていました。
しかし、育児環境や子どもの個性、育児方法も人ぞれぞれです。誰かと比べることなく、自分は自分のペースを維持して育児していけばいいと少しずつ思えるようになりました。
そして「母親なんだから強くならなくちゃ」と頑張りすぎず、弱くてもいい、ゆっくり母親になって行けたらいいなぁと思えるようになりました。
子どもが8カ月になった今も治療中ですが、いつも「1カ月前に比べると良いなあ」という感覚です。わかりにくい変化ではありますが、少しずつ着実に体調が良くなってきているのが分かります。
産後うつは、産後の体調や環境、いろんな原因が積み重なって起こります。特にはじめての育児は赤ちゃんとの生活に必死で自分のことは疎かになりがち。自分の気持ちに耳を澄ませて、しんどいときは医療と繋がってしっかりと心のケアをすることが大切だと身をもって感じました。
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