約6人に1人の子どもが性虐待にあっている!?「被害届は意味ない」という言葉に、やるせない気持ちを抱えた親の本音
保育園・幼稚園・小学校・塾・スポーツクラブ・児童相談所・レジャー施設・公園のトイレ……。これらはすべて、小児性犯罪が実際に起きた現場です。私たち保護者は、どうすれば我が子を守ることができるのでしょうか。
認定NPO法人フローレンス代表室長で、政府「こども政策の推進に係る有識者会議」メンバーでもあった前田晃平さんに、小児性犯罪の現状と対策についてさまざまな角度から話していただきました。全3回でお届けします。
Profile 前田晃平さん
被害者である子どもとその家族の負担が大きすぎる…
小児性犯罪を防止するため、私は今まで何度も、被害を受けた子どもの親に話を聞いてきました。そのなかでも特にショックを受けたのが、「被害者である子どもとその家族の負担が大きすぎる」という話です。
例えば、子どもの心のケア。全身全霊をかけてケアしてあげたいと思っても、そもそもどうやってケアしていいか悩むと思いますし、私たちと同じように被害者の親にも仕事があります。何も言わずに数週間休むのがとても難しいことは、想像に難くないでしょう。
また、被害届けを出すための準備も必要です。まずは弁護士を探し、被害について話します。そして被害者が複数いる場合は、同様に被害にあった人たちに「一緒に被害届を出しませんか」と協力を求めます。それでも証拠不十分で立件にすらに至らず、被害者がますます傷つき、心をすり減らしていくケースが多々あるのです。
大勢の子どもに性被害を加えた容疑者が野放しに
一方で加害者は、さまざまな制度に守られています。日本には、「刑事裁判で有罪判決を受けるまでは、被疑者や被告人を無罪として扱わなければならない」という原則があるからです。
ある小学校で3年生の担任教師が、男女関係なくクラスの生徒ほぼ全員に性被害を加えていた事件がありましたが、複数の児童の証言があるにも関わらず、それでも、有罪どころか立件すら危ぶまれている状況です。
子どもたちは検察官による司法面接を受け、勇気を出して、思い出したくもない当時の状況を大人たちに話してくれました。それでも、その証言のみでは証拠不十分になる可能性があります。
この教師は懲戒免職で学校を追われましたが、その後また子どもと関わる施設で働いていたことが発覚しています。
学校に防犯カメラがあれば、証拠がそろったかもしれない
保育園や幼稚園、学校で性犯罪が起こったとき、最初に対応するのは園長や校長、教育委員会です。そこで適切な対応がなされれば言うことはないのですが、残念ながらそうではないケースが多く見受けられます。
先ほどの3年生の担任教師の件でも、学校や教育委員会の対応は十分とは言えませんでした。同じ職場で勤務している教員が加害者だからなのか、事態を過小評価し、穏便に処理しようとする姿勢が感じられました。
そうして証拠がそろわないという理由から、被害者の親は警察から「被害届を出してもいいことない。子どもの証言だから立件できないかも。他の子の目撃証言があっても弱い。親御さんだけ頑張っても、よい方向に向かうのをあまり見たことがない」と言われてしまったのです。
今回の事件では、学校の教室にビデオカメラ等が設置されておらず、物的証拠を得るのは困難な状況でした。防犯カメラの設置は、保育者や教員を冤罪から守ることにもつながります。しかし、プライバシー保護の問題や学校現場からの反対があり、実装には至っていない学校が大半です。
もし性被害にあっても、親子だけで抱え込まないで
小児性犯罪は許されるものではありません。13歳までに女の子の6.4人に1人、男の子の17.5人に1人がなんらかの性被害にあっているというデータ(日本性科学情報センター「子どもと家族の心と健康 調査報告書」1999年)もありますが、これはあくまで声をあげられた数であって、数値にあらわれている以上に被害にあっている子どもが存在すると考えられます。世の中には、やるせない思いを抱えた保護者が数えきれないほどいるのです。
子どもたちが性暴力を受けたときは、すみやかに司法や警察に接続することが重要です。もしも身近な子どもが性被害にあっていることに気づいたら、各都道府県の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」に連絡してください。専門の支援員が必要に応じて、病院や警察等への付添い、精神的ケアなどを行ってくれます。
保護者の皆さんに声を大にして伝えたいのは、「ひとりで抱えないでほしい」ということです。子どもと親の心身を守るためにも、適切に加害者を処罰するためにも、いざというときに頼れる場所があるということを、ぜひ覚えておいてください。
参考:性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html
