もし子どもが性被害にあったら、まず何をすればいい?男の子も女の子にも可能性が
保育園・幼稚園・小学校・塾・スポーツクラブ・児童相談所・レジャー施設・公園のトイレ……。これらはすべて、小児性犯罪が実際に起きた現場です。私たち保護者は、どうすれば我が子を守ることができるのでしょうか。
認定NPO法人フローレンス代表室長で、政府「こども政策の推進に係る有識者会議」メンバーでもあった前田晃平さんに、小児性犯罪の現状と対策についてさまざまな角度から話していただきました。全3回でお届けします。
Profile 前田晃平さん
男の子も女の子も。すべての子どもが被害者になりうる
小児性犯罪は、さまざまな場所で起きています。家族から性暴力を受けて児童相談所に保護された少女が、児童相談所でまた性被害を受けるという、目も当てられないような事件もありました。
子どもと関わる施設で働く人のほとんどは、自分の仕事に情熱と誇りを持ち、子どものために日々尽力しています。しかし、ほんの一部の人が立場と権力を利用して犯罪を犯し、子どもたちの心に一生消えない深い傷を負わせています。
ニュースでは女の子が被害者になるケースが多く報道されていますが、男の子も例外ではありません。過去には、小学校3年性の担任教師が、ほぼ毎日、朝の授業開始前や休み時間の教室で、他の児童もいるなか、担任の机付近に生徒を呼び、下着の中から直接性器を触るという事件がありました。女児も、男児もです。
小児性犯罪は、指導的立場にある大人が権力を悪用するケースが大半です。相手は、反抗する手段を知らない子どもたち。加害者に脅され、誰にも言わないよう口封じをされるため、被害が長期化し、被害者が増えてしまうケースが後を絶ちません。
子どもから相談を受けたとき、親はどうするべき?
もし自分の子どもに「性被害にあっている」と相談を受けたら、親はどのように対応すればよいのでしょうか。実際のところ、適切な対応方法を知っている親はごくわずかです。
子どもと同じように親も気が動転し、「なんでもっと早く言ってくれなかったの!」と叱ってしまう親もいます。あるいは、自分の子どもが性被害にあったことを周囲に知られないよう、「なかったことにしよう」と子どもに言い聞かせる親もいます。子どもの将来に影響してしまうと考え、被害届を出さない親も大勢います。
僕自身も子育てをしているので、なかったことにしたくなる気持ちもわかります。しかし親が適切な行動をとらなかった結果、子どもの心に、さらに深い傷が残ってしまうこともあるのです。
まずは「ワンストップ支援センター」へ連絡を
自分の子どもが被害にあったときは、まず各都道府県の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」に連絡してください。専門の支援員が必要に応じて、病院や警察等への付添い、精神的ケアなどを行ってくれます。
参考:性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html
正しい対処法を知っていれば、最悪な事態のなかで最善手を打つことができます。子どもたちの心の傷や被害を最小限に食い止めるためにも、ぜひ多くの保護者の方に、いざというときの対処法を知っておいてもらえると幸いです。
「イヤ」と言えない子どもたちを守るために
性被害にあう子どもの多くは、プライベートゾーンすら知らない未就学児や、小学校低学年の児童です。そのため、被害を被害として認識できていないケースが多々あります。また、「イヤなことはイヤと言っていい」という認識がない場合もあります。
大切なのは、異変が起きたとき、子ども自身が「これはおかしい。話がわかる大人に伝えなきゃ」とすぐにSOSを出せるようにしておくことです。
現在、文科省は「生命(いのち)の安全教育」という名称で、学校現場での性教育を推進しています。しかし、導入できていない教育現場が多いのが現状です。正しい性の知識は、子どもが幸せに生きるために必要なもの。子どもたちを守るためにも、幼少期から家庭での性教育に取り組んでおくと安心です。
とはいえ、自分自身も性教育を受けた経験がなく、どのように進めればいいのかわからない方も多いでしょう。文科省をはじめ、さまざまな団体が性教育で使える資料や動画を無料で公開しています。ぜひこの機会に目を通してみてください。子どもを性犯罪から守るためのヒントがちりばめられています。
参考:プライベートゾーンについて学べる絵本『おしえて!くもくん』
https://kumokun.themedia.jp/pages/3512442/ehon
参考:文科省が公開している資料や動画教材
https://www.mext.go.jp/a_menu/danjo/anzen/index.html
取材/文・華井由利奈
