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あぶら取りフィルムで低月齢赤ちゃんのアトピー性皮膚炎がわかる?広く普及すれば、食物アレルギーが減少する可能性も【専門医】

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生まれたばかりの赤ちゃんの顔にアレルギー
※写真はイメージです
Kwangmoozaa/gettyimages

アトピー性皮膚炎は早期治療が大切といわれますが、診断が難しいことや親が気づかずに受診が遅れることなどから、症状が悪化してしまうことも。
2018年ころから花王が研究している“皮脂RNAモニタリング技術”では、赤ちゃんの皮脂の遺伝子情報からアトピー性皮膚炎の可能性があるかどうかを調べることで、診断に役立つと期待されています。花王と共同研究を進める、国立成育医療研究センターアレルギーセンター総合アレルギー科医長・山本貴和子先生に話を聞きました。

授乳時などに顔をこすりつける動作があったら、赤ちゃんはかゆい可能性がある

――乳児期の赤ちゃんは湿疹(しっしん)ができることが多いですが、乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は違うものなのでしょうか?

山本先生(以下敬称略) 乳児期の赤ちゃんは肌のトラブルが起きやすく、アトピー性皮膚炎以外にも脂漏(しろう)性皮膚炎や新生児ざ瘡(ニキビのようなもの)、おむつかぶれやよだれかぶれなどがよく見られます。これらの乳児期にできる湿疹をまとめて「乳児湿疹」と言います。
赤ちゃんに皮膚炎ができて受診し、医師から「乳児湿疹です」と言われると、「アトピーじゃないんだな」と勘違いされることがありますが、実はアトピー性皮膚炎の可能性もあるということなんです。

――どういう状態の時にアトピー性皮膚炎と診断されるのでしょうか。

山本 世界的に使われているアトピー性皮膚炎の診断基準は「赤ちゃんや子どもの皮膚がかゆい状態である。または、両親から子どもが皮膚を引っかいたり、こすったりしているという報告がある」ことがいちばんのポイントです。
ただ、生後1〜2カ月の赤ちゃんは、自分の指や手でかゆいところをかく、というようなはっきりしたかく動作がみられず、もちろん「かゆい」と言葉で表現できるわけはありません。「かゆみがある」かどうかがわかりにくいんです。ママやパパに「赤ちゃんがかゆがっていますか?」と聞いても、よくわからないことが多いです。

私たちは受診した親に、赤ちゃんを抱っこした時に服に顔をこすりつけたりするか、顔などの皮膚につめの跡がついているかどうかを聞いて診断しますが、かゆみの評価が適切にされないことがあります。血圧や心拍数などのように客観的に状態を評価できる目安となる指標がないために、乳児期のアトピー性皮膚炎の診断はとくに難しいといわれています。

――アトピー性皮膚炎は生後何カ月くらいで発症することが多いのでしょうか。

山本 海外の診断基準でみると、早い子は生後1カ月ころには発症していることもあります。国立成育医療研究センター(以下成育医療センター)で出生した赤ちゃんを調査した結果、約3人に1人が乳児期に湿疹を発症していて、約10人に1人が小学生になっても持続して湿疹に困っていることがわかっています。早めに治療を開始すると効果が高いことはわかっている一方で、早期に治療を開始しても症状が改善せずに持続してしまう子もいます。
また、赤ちゃんの皮膚がざらざらして乾燥の症状が強くても、初めてのお子さんだとそれが普通なのかと思ってしまって、受診が遅れ、症状が悪化してしまうということもあります。

あぶら取りフィルムでアトピー性皮膚炎の可能性がわかる

――今、花王と共同研究している“皮脂RNAモニタリング技術”について教えてください。

山本 花王が開発したのは、市販のあぶらとりフィルムで人の皮脂を採取して皮脂RNAの分子を解析し、肌の状態を可視化する技術です。これを赤ちゃんのアトピー治療にいかせないかということで、成育医療センターで生まれた赤ちゃんの皮脂を採取してRNA情報を比較しました。

すると、生後1カ月のアトピー性皮膚炎の赤ちゃんの皮脂は、肌が健康な赤ちゃんと比べて、アトピーと関連性のある分子の量に差があるということがわかりました。そして皮脂のRNA発現情報からもアトピー性皮膚炎の診断ができる可能性があることもわかりました。また、新生児ざ瘡があり生後2カ月でアトピー性皮膚炎と診断される赤ちゃんは、生後1カ月の時点ですでにアトピー性皮膚炎と似たRNA発現パターンを持つ可能性があることもわかりました。

このことにより、症状が軽くて診断が難しい赤ちゃんにも、皮脂RNAを解析してアトピー性皮膚炎の可能性がありそうだとわかった場合には、早めにアトピー性皮膚炎として治療を開始することができるようになると考えています。

アトピー性皮膚炎の早期治療がアレルギーマーチを防ぐ?

――アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは深く関係しているといわれるようです。アトピー性皮膚炎の治療開始が遅れると、その後どういうリスクが高まるのでしょうか?

山本 以前はアレルゲンとなる食物を食べるからアトピー性皮膚炎が悪化すると言われたこともありましたが、現在の研究では、アトピー性皮膚炎の症状で皮膚のバリアー機能が低下している皮膚や、かいて傷ついた皮膚からアレルゲンが体内に入り込むことによって、食物アレルギーが発症するというしくみがわかってきました。

臨床の経験やこれまでの研究結果から、生後1〜2カ月くらいの早い時期からアトピー性皮膚炎を発症している子は、その後の食物アレルギーのリスクも高いということがわかっています。海外の研究からも乳児期早期発症のアトピー性皮膚炎は、食物アレルギーや気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎など、アレルギーマーチといわれるように次々とアレルギー疾患が出現するリスクが高いこともわかっています。それを防ぐためにも、早期に治療を開始することが大切ではないかと考えています。

日本のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン(※1)では、乳児では2カ月以上慢性経過とされています。かゆいしっしんが2カ月以上続かないと診断を満たさないということもあります。アトピー性皮膚炎の状態を把握する手がかりとして血液検査をすることもありますが、血液検査ではどの物質に対しての炎症が高いか低いかといった重症度を見るものなので、血液検査だけでの診断はできない状況もあります。

今後、あぶらとりフィルムで皮脂を分析する技術が実用化されれば、診断が難しい場合にも発症早期にアトピー性皮膚炎と診断して、治療が必要なお子さんに早くから治療介入することができ、その後の食物アレルギーなどの発症を減らせると考えています。

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

お話・監修/山本貴和子先生

あぶら取りフィルムを使った“皮脂RNAモニタリング技術”は特許を取得した花王独自のものなのだそう。早期にアトピー性皮膚炎を治療することで、食物アレルギーなどの症状を予防できることが期待されています。
山本先生は「これが広く使われるようになったら、食物アレルギーは激減するかもしれません」と言います。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※1 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021

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