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【医師監修】小児科医に聞く!子どもが風邪をひいたときのホームケア

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「風邪」を治す薬はありません

 実は風邪は正式な病名ではありません。いろいろな病原体が鼻やのどなどに取りついて起こるさまざまな症状を、ひとくくりにして「風邪」と呼んでいるのです。

 風邪をひく原因には大きく分けて「ウイルス」と「細菌」の2種類があり、ほとんどはウイルスによって起こります。ウイルスには数百もの種類があるといわれ、どのウイルスがどこに取りつくかによって、鼻水から始まるもの、おなかの症状が出てくるもの、熱が出るものなど、症状の出方が異なります。

 多くの場合は体がだるくなり、せき、くしゃみや鼻水、のどの痛み、熱など、いくつかの症状が出てきます。おなかの風邪の場合は、下痢が伴うこともあります。

 このように複雑な風邪のウイルスを殺す薬は、まだできていないのが現状です。つまり、風邪は薬で治すことができないんです。そのため風邪のケアは、体に免疫ができて自然治癒するまでの間、症状を軽くして少しでも楽にしてあげることが中心になります。

 子どもが病気でつらそうにしているのを見ると、家族もつらく心配になりますね。風邪とホームケアのことをきちんと知って、上手に乗りきりましょう。

熱は下げなければいけないと思わないで

 体内にウイルスや細菌が入ると、体は温度を上げてそれらの増殖を抑え、体を守ろうとします。これが熱が出る原因です。発熱は重要な体の防御反応なのです。

 熱の高さと病気の重さは、必ずしも比例しません。熱が高くても子どもが元気なら心配はなく、解熱剤を飲ませる必要もありません。解熱剤を使わないほうが早く治るというデータもあります。熱はすぐに下げなければいけないものではない、ということを覚えておきましょう。

 とはいえ、38.5度以上の高い熱が出て頭が痛いなど、子どもがつらそうなときは、解熱剤で早く症状を緩和してあげることが大切です。こういうときは、処方してもらった解熱剤を使ってみてもいいでしょう。

 熱があるときの服装は、通気性がよく涼しいものを選びます。そしてこまめに水分補給をして、脱水症状を予防することが大切です。飲ませるものは赤ちゃんならミルクやおっぱい、白湯(さゆ)やイオン飲料。大きい子どもなら水やスポーツドリンク、ジュースなど、子どもが飲みたがるものを与えます。

 よく「体を温めて熱を出しきったほうがいい」と、厚着をさせたり何枚も布団をかける方がいますが、これは大きな間違い。過度に温めると体内に熱がこもり、熱中症のような症状になってしまう場合があるので気をつけてください。

 また、市販のはるタイプの冷却シートには、熱を下げる効果はありません。はるとヒンヤリするので、その感触を子どもが好むならはってもいいでしょう。しかし、はるのを嫌がるお子さんも少なくないので、そういう場合はやめましょう。

せき、鼻水、鼻詰まり。薬は最後の手段

 せきや鼻水も、熱と同じく防衛反応の一つです。体内に入った細菌やウイルスなどを、外に追い出そうとする働きです。子どもの鼻の粘膜は敏感なため、鼻水が出やすくなります。大人よりも鼻腔(びくう)が狭いため、鼻詰まりも起こしやすいのです。

 せきや鼻水を薬で止めようとするのは、体がウイルスを追い出すのを止めさせることなので、あまりおすすめできません。また、せき、鼻水、鼻詰まりの薬はいずれも中枢神経に作用するため、どうしても副作用のリスクを伴います。鼻の薬は水分の分泌そのものを抑えるので、鼻水が減る代わりにのどが渇いたり、鼻水が粘っこくなって詰まったりすることもあります。

 このことからうちのクリニックでは、できるだけ薬に頼るのではなく、ケアで症状を緩和するようにおすすめしています。鼻がグズグズするとき、大きいお子さんならティッシュなどで鼻をかめますね。それができない小さいお子さんの場合、いちばんのおすすめは鼻吸い器を使うことです。単純ですがとても効果的な方法です。おふろに入ったあとは鼻水がやわらなくなり、吸いやすくなります。

 たんがからんだせきは鼻水がのどへ落ち込んでいることが多いので、鼻水を吸い取ればせきも楽になります。水分でのどを湿らすとのどの浄化作用が活発になるので、よりタンが切れやすくなります。部屋を加湿したり、白湯(さゆ)や麦茶などで水分補給するといいでしょう。

環境づくり、食事、おふろ、そして受診の目安

 風邪のウイルスは空気が乾燥しているとどんどん増えていきます。室温はお母さんが快適と思える温度で大丈夫ですが、目安として冬場だと室温を20〜22℃、湿度を50~60%くらいにするといいでしょう。適度に換気をして、空気の入れ替えをすることもおすすめです。

 食事は普段と同じで問題ありません。子どもに食欲がない場合、あまり栄養にとらわれずに子どもの食べたがるものを与えましょう。それでも食べたがらないときは、水分がとれていれば心配ないので、無理強いする必要はありません。水分は赤ちゃんならおっぱい、ミルク、大きなお子さんなら白湯(さゆ)、お茶、スポーツドリンク、ジュースなど飲めるものを与えます。

 おふろは子どもが元気ならば、少し熱があっても入れて大丈夫です。湯につかることで血行がよくなりますし、温かい蒸気が吸えるのでのどが潤い、呼吸も楽になります。

 基本的に生後3カ月を過ぎていて、熱やせき、鼻水などの症状があっても子どもが元気で機嫌がよく、水分もしっかりとれているなら過度な心配はいりません。生後3カ月未満の小さい赤ちゃんや、3カ月以上のお子さんでも苦しそうなせきが長く続く、夜も眠れない、吐く、下痢がひどい、グッタリしている、水分もとれないなどの症状があるときは、小児科の診察を受けるようにしましょう。

 「風邪」は治療しなくてはいけない「病気」ではありません。自然に治っていくものです。せきや鼻水の症状がつらいときは治るまでの間、少しでも楽に過ごせるようにしてあげるのがホームケアです。

 風邪をひいたら早めのお薬、ではないことを知っておきましょう。

監修/【小児科医】片岡正 先生

※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。

初回公開日 2015/10/09

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