知ってお得!子どもがいるからこそ利用したい数々の制度
出産・産後に役立つ制度
近年、特に少子化対策に多くの関心が寄せられています。今回は子どもがいるからこそ役立てたい公的制度をご紹介しましょう。
子どもを産むことを想定して、最初の就職先や住居を考える方はほとんどいないと思います。これから、自分のライフプランを考えるときに、結婚して子どもを産むという選択肢があるのであれば、「育児と仕事を両立しやすい職業と住まい」を想定しておくと、計画的に公的制度を利用していくことができます。
たとえば、健康保険に加入していれば、出産後にだれでも、子ども1人につき50万円の出産育児一時金が受け取れるのは、これまでのコラムでも触れています。実はこの金額に上乗せされるケースがあるのです。すべての自治体ではありませんが、さらに出産費用の一部を助成してくれるケースや出産祝い金のような給付が受け取れるケースがあります。ご自身がお住まいの自治体に、そのような制度があるか確認しましょう。ある場合1年以上の居住要件や所得制限があるかも併せて確認しましょう。
また、企業の健康保険組合などでは、出産育児一時金に付加給付が規定されている場合もあります。本人か配偶者かによって金額が異なることもありますので、こちらも確認しておくといいですね。
保育に関する制度
自治体独自の取り組みで、子どもを産んですぐの不安定な状態の母親のために、保育園での一時預かりや、母子一緒に利用できるデイサービスおよびショートステイ、保健師の訪問サービスなどが利用できることがあります。保育園の一時預かりやデイサービスなどについては利用料がかかりますが、比較的安価に利用できるのが特徴です。
また、共働きの世帯にとっては保育園に入園できるかがいちばんの関心事ですが、複数の子どもがいる世帯に対しては、保育園入園の優遇および減免が、多くの自治体で規定されるようになってきています。ただ自治体によっては、優遇や減免が「同時期に複数の子どもが在園しているとき」などの要件がある場合があり、子どもの年齢差によっては利用できないことを覚えておきましょう。
働いている人が利用できる制度
産前産後休業や育児休業期間中の社会保険料の免除、雇用保険から支給される育児休業給付、3才未満の子どもを育てている場合の養育期間の特例など、「働いているからこそ」使える制度があります。ここでは、育児休業給付の実際の取得例、そして養育期間の特例について取り上げてみます。
育児休業は母親が取得することが多いですが、父親ももちろん取得できます。ただ、1年も休めるかどうか職場の目が怖い男性の気持ちもわかりますので、下記のような取り方はいかがでしょうか。
次に養育期間の特例の申し出という制度を説明しましょう。子どもが小さいうちは残業ができなかったり、短時間勤務にするなど、働き方を調整したくなる時期があると思います。短時間勤務を申し出ると給料が下がり、それに伴って社会保険料も下がるのですが、それは将来もらえる年金が下がるということにつながります。ところが、事業主を通じて日本年金機構に申請すると、子どもが3才未満の間だけ、年金の算定に関しては元の給料のままで計算されるという制度なのです。給与から天引きされる保険料は下がった給料額で計算されるけれど、将来もらえる年金は下がらないという特例措置なのです。
住宅取得を考えている方にお得な制度
子育て中は、どんな情報であろうとタイムリーな情報を収集することが欠かせません。ここでは住宅取得で得する情報をご紹介しましょう。
住宅を取得する際はローンを組むことになると思いますが、この住宅ローンに関して子育て勤労者を支援するための制度もいくつかあるのです。
勤務先で財形貯蓄に加入していれば、「財形持家融資の申し込みをする場合、当初5年間の貸付金利を通常から0.2%引き下げ」(*)の特例措置が利用できます。自治体の制度としては、市内に子育て世帯が定住することを促進する「分譲住宅購入融資利子補給制度」(大阪市)、住宅を取得した子育て世帯を対象に、住宅取得と合わせて購入した家具や家電の購入費用助成と子育て世帯住宅ローン優遇措置(日立市)などがあります。
財形の制度を利用するには、勤務先の財形制度に加入しているか、自治体の場合には、ご自身のお住まいの自治体にどのような助成制度があるのか、その制度はいつまでに家屋を建築するのか、もしくは転入で利用できるのかなど、対象者の要件を確認してみるといいでしょう。
住宅取得を検討する際は、まず間取りからでなく、「ローンを最後まで返済できるかどうか」が非常に重要なポイントです。子どもが中学生以上になってくると、まさにお金は「右から左」の様相を帯びてきます。住宅取得を計画しているのであれば、子育て世帯だからこその優遇制度を組み合わせて、住宅ローンを組んでいただきたいものです。
*平成30年3月31日までの申し込みが必要
子育て世帯にとって大切なのは、ライフプランを長期に立てるというのはもちろんですが、見直しを随時しながら、いかにお得な情報・制度を組み合わせて利用していくかという点です。これからも子育て世帯への新制度がつくられることもあるでしょう。世の中の流れに敏感になってお得な情報を逃さないようにしておきたいものですね。
※申し込み状況によっては、申し込み期間内であっても当該特別借置の受付を終了することがあります。
當舎緑 先生
社会保険労務士 行政書士 CFP®
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は一般消費者向けのセミナーや執筆活動を精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組みなど。
※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。
●制度改正により、出産育児一時金の金額を修正しました(2023年4月)