SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 赤ちゃんの病気・トラブル
  4. 小児救命救急センター24時【気道異物(きどういぶつ)】

小児救命救急センター24時【気道異物(きどういぶつ)】

更新


いとこたちと一緒に遊んでいると、急にせき込みが始まりました

 「熱も出ていないのに急にせき込んで苦しがっている」。20時ごろ、救急受付に1才10カ月の男の子を連れた母親が徒歩で来院していると連絡があり、救急室に急いだ。

 すぐに診察すると男の子は顔色も悪くなく、ケロッとしているが、せきが出だすと確かにせき込んで苦しそうな表情をする状態であった。咽頭(いんとう)の赤みはなく、鼻水や発熱もなく、確かにせきだけである。すぐに血液検査と胸部X線検査を行うように研修医に指示して、母親から話を聞くことにした。

 いとこたちが家に遊びに来ていて、5才の姉と一緒に遊んでいるうちに、せき込みが始まったとのことであった。遊びはトランプであり、口に入れるようなものは散乱していなかったと母親は部屋の状況を話してくれた。「子どもたちは遊びながらお菓子とか食べていませんでしたか?」の質問には、「夕食のあと、小学生のいとこたちがピーナツを食べながら遊んでいたので、"この子にはあげたらダメよ"と最初から言っておきました。なので、おそらく与えていないと思います」と答えた。

 研修医がすぐに胸部X線写真を持ってきたが、左側の肺がわずかに膨張しているように見えた。発熱はなく、風邪症状もなく、突然のせき込みの出現であるので、気道異物が最も考えられることを説明し、「ピーナツのようなものを食べた可能性があります」と話をすると、母親は一瞬顔を曇らせて、家に電話して念のために確認してみますと言ってくれた。夜間ではあったが放射線科技師に頼み込んで、肺のMRI検査を行ってもらう段取りをしていたところ、母親が、「小学生のいとこが、"この子が欲しがったので、少しあげた"と言っているようです......」と電話の結果を教えてくれた。

 点滴を確保して、鎮静下にMRI検査を行うと、左側の肺の気管支にピーナツと思われる白く映る物質を確認できた。すぐに耳鼻科医に連絡をとり、「翌日、男の子に全身麻酔をかけて、気管支鏡を使って摘出を行いましょう」との回答を得た。ピーナツは水分を吸収して膨張し、気管支を詰まらせてしまうので、呼吸すると空気は入るものの出すことができない状況(チェックバルブ状態)になって呼吸障害が起こりやすい。さらに油脂成分が多いため、それが化学反応を起こして、化学性の肺炎(はいえん)を起こしやすいことも知られている。このようなことを説明して、今夜は入院して明日の摘出手術に備えることとし、早くピーナツを取り出してあげましょうとの説明に、母親は納得してくれた。

 翌日昼からの手術でなんとか1/4個ほどのピーナツを摘出することができ、残存するものはないことが確認できた。肺炎予防のために3日間ほど入院したが、退院のときに母親が、「ちょっとしたことがこんな大ごとになって……。もう少し注意して子どもたちを見ていないといけないですね。反省しました」と私に話してくれた。

【気道異物って?】
気道に異物が入ることを気道異物といい、有機物ではピーナツなどが最も多く、奥歯が生えそろわない3才代未満が圧倒的に多い。保護者が現場を見ていないことが多く、肺炎を繰り返し何カ月も診断がつかないことも。アーモンドやピーナツなどは奥歯が生えそろう前の子には与えないこと。

■監修:(故)市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます。

【市川先生から…】
乳幼児の場合、なんでも口に入れたがるため、直径が39mm未満のものは喉頭(こうとう)異物、気管異物などで窒息を起こし、生命にかかわる可能性も。こんにゃくゼリーなども含め、窒息誤飲を起こしやすい小さな物や食材に注意を。こうしたものは子どもの手が届かない場所に整理しておきましょう。

イラスト/にしださとこ

【お知らせ】
市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくださった「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で17年間212回続いた人気連載でした。2018年10月市川光太郎先生がご逝去され、連載は終了となりました。市川先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます(構成・ひよこクラブ編集部)。

※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。