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「ひよこクラブ」人気連載!小児救命救急センター24時【肘内障(ちゅうないしょう)】

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娘の右手を“危ない!”と引っ張ったあとで、急に腕を痛がりだして…

 昼過ぎから突然右腕を痛がって動かさなくなったと、1才2カ月の女の子を連れた母親が徒歩で救急受診したとの連絡が仕事用の携帯電話に入った。

 急いで救急室に行くと、「顔色も様子も普通ですが、右腕を触ると痛がって泣き、動かさないんです」と母親が心配そうに切りだした。触らないように診察すると、右腕は腫(は)れもなく、赤くもなかったが、腕を触ると激しく泣いて嫌がった。母親に抱っこしてもらうと、女の子の左腕は母親の体に巻きつけようとするが、右腕はだらーんとしたままであった。「バンザイ」の動きをさせても左腕だけで、右腕は上げることができなかった。診察しながら、母親にこのようになったきっかけを詳しく聞いた。

 女の子は歩き始めてから1カ月半がたち、自ら好んで歩くのだが、まだふらつきも少なくないとのこと。今日はお散歩中、女の子の右手をつなぎ、母親の左側を歩かせていたという。

 「道路の側溝のふたが割れた個所があり、犬の散歩の人とすれ違うときに少し怖がって、ふたが壊れている側溝のほうへ逃げるように足を踏み出したんです。私は娘が落ちないように、"危ない!"と腕を引っ張りました。その瞬間は何事もなかったのですが、すぐあとに、娘はつないでいるほうの腕を痛がる感じで私の手をはずし、まったく腕を動かさなくなってしまって...。ちょっと痛かったのかなと思ってお散歩を切り上げ、家に帰って様子を見ることにしました。すぐに痛みは治まり、よくなるだろうと思っていたのですが、1時間ほどたってもまったく動かさないし、触ると痛がって泣くので、何かがおかしいと思って救命救急を受診しました」と話した。

痛がる女の子のひじを持って整復を行うと…


 母親の話を聞いて、女の子の腕の状態からも“肘内障”に間違いないと確信して、整復することとした。女の子のひじに手を当てて、手のひらが上になるように前腕を保持して、外転させてひじを曲げると、クリック音と呼ばれる「コクッ」という音がする。ひじ関節が元に戻る様子を、支えているほうの手で確認でき、整復は終了となる。このことを説明して、痛がる女の子のひじを持って整復を行うと、容易に完了した。確認のため母親に抱っこしてもらおうとすると、女の子は両手を上げて抱っこをせがんだので整復完了が確認できた。10分後に“バンザイ”のポーズをお願いしたら、しっかり両手でバンザイできて、触っても痛がらないことを確認した。

 「もう家に帰っても大丈夫ですよ」と母親に説明すると、整復直後は「大丈夫かな…」というような疑心暗鬼の表情だった母親がわれに返ったように、「ありがとうございました。急に引っ張ったりしてはいけないんですね。今後は気をつけます」と言い、診察室をあとにした。「一度起こすと繰り返し起こすことが多いので、注意してください」と後ろ姿に声をかけた。

【肘内障とは?】
ひじ関節の亜脱臼(あだっきゅう(ねんざ))であり、前腕を急に強く引っ張るような行動で生じやすい。本人の体重と腕を引っ張られるエネルギーでひじ関節が伸びて亜脱臼するしくみだ。引っ張る力が弱いと発症はしないが、患部は腫れたり、色が変わったりすることもないので気づきにくく、注意が必要だ。

監修/市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます

【市川先生から…】
乳幼児は関節を包んでいる組織や腱(けん)が弱いため、急に腕を引っ張ると脱臼し、肘内障になることがある。肘内障は4~5 才までの間に繰り返しやすく、一度発症した子どもは注意が必要である。腕を引っ張る力ではなく、打撲や下敷きになるなどの力が加わったあとで腕を動かさなくなった場合には、骨折の可能性があるので注意して。

イラスト/にしださとこ

【お知らせ】
小児救命救急センター24時は、ひよこクラブで好評連載中!
長年、救急医療の現場に携わる市川光太郎先生。病気やけがで小児救命救急センターにやって来る赤ちゃんと家族の姿を通して、赤ちゃんがかかりやすい病気やけがの予防・治療法の提案と、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスを送ります。

【ひよこクラブ最新号はこちら】

※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。

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