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小児救命救急センター24時【ヒトメタニューモウイルス(hMPV)】

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発熱2日目の夜から喘鳴が現れ、寝ていても呼吸がゼイゼイして…

 真夜中3時ごろにホットラインが鳴った。「8カ月の男の子がせき込んで吐き、顔色が悪くゼイゼイした呼吸(喘鳴(ぜんめい))で眠れないとの救急要請です。確かに喘鳴がひどいので、救急搬送してもいいでしょうか」との連絡に受け入れ可能と返事をして、救急室に急いだ。

 母親に抱っこされて救急車から降りてきた男の子は、グッタリとした感じだった。抱っこの状態で診察すると、少し顔色が悪く、聴診器なしでもゼイゼイ音が聞かれ、肋骨(ろっこつ)の間や左右の鎖骨の間のくぼみが息を吸うときに陥没する様子が認められた(陥没呼吸(かんぼつこきゅう))。すぐに点滴・採血・胸部X線検査の指示を出して、血液中の酸素濃度を調べると92%と著しく低下しており、3リットルの酸素のマスク投与を開始した。10分後に酸素濃度が97%まで回復したので、この時点で点滴・採血を行ってX線撮影を開始した。母親から話を聞くと家族歴では母親が幼少期に小児ぜんそくと言われて治療を受け、中学生以降は症状は治まっているとのこと。男の子は3日前の朝から発熱して、同時に鼻水とせきが現れたため、かかりつけ医を受診し、風邪として内服薬の処方を受けていた。発熱は解熱剤で多少下がるもまた上がるといった繰り返しであったが、少し下がると元気は戻るので大した風邪ではないと思っていたようだ。

 「発熱2日目の夜からゼイゼイして、いったん眠ったのですが、寝ていてもゼイゼイして...。急にせき込みがひどくなり、発熱も39度を超え、解熱剤でも熱が下がりにくくなりました。眠れなくてぐずり、せき込んで嘔吐(おうと)して顔色が悪くなってきたので、怖くなって119番通報をしました」と一気に話してくれた。保育園に通園しているとのことで、園で何か流行していないか母親に尋ねると、「聞いていないけれど何人かはお休みしている」と答えた。

入院はさせたくないと拒んだ母親が…


 検査結果を看護師が持ってくると、白血球と発熱などの炎症反応が少し上昇しており、胸部X線検査では気管支炎(きかんしえん)が見られて、男の子は「気管支肺炎(きかんしはいえん)」の状態であった。この結果から、病原体の検索としてRSウイルスとヒトメタニューモウイルス(hMPV)の迅速診断キットを行ったところ、RSウイルスは陰性であったが、hMPVがしっかり陽性となり、hMPV気管支肺炎と判断した。RSウイルスと同じ程度に呼吸障害を来すウイルスで、二次感染症も少なくない。酸素が十分に供給され、せきと喘鳴が少しよくなるまでは入院治療が必要であることを説明したが、「仕事がありずっとつき添えないので入院はちょっと…。外来通院ではダメですか?」と懇願された。「酸素投与を手放せない状態です。そんな危険は冒せません」と再三説得し、ようやく入院治療に納得してくれた。入院2日目まで高熱が出てせき込みと喘鳴がひどく、酸素量を多くしたり、吸入回数を増やしたりと濃厚な治療が必要であった。入院3日目から改善の兆しが見られ、この時点で母親は「入院してよかったです。この間みたいになったらとても家では対処できませんでした。ありがとうございました」と言ってくれた。

【ヒトメタニューモウイルス(hMPV)とは?】
RSウイルスと似たウイルスで、晩春から夏前に流行しやすく、鼻水、せき、喘鳴が出て呼吸障害を来しやすい。ぜんそくなどの家族歴がある場合、呼吸障害を起こしやすい病原体(hMPV、RSウイルスなど)にかかると乳児期でも喘鳴が出て、せき込みがひどくなるので注意しましょう。

■監修:(故)市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます。

【市川先生から…】
喘鳴が強く、せき込みがひどい場合、あお向けに寝ると苦しいことが。バスタオルなどを使い、上半身を起こして寝かせましょう。せき込んで眠れない場合は救急受診を。血中の酸素量が低い場合は入院治療を行い、重症化を防ぐことが鉄則と考えましょう。

イラスト/にしださとこ

【お知らせ】
市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくださった「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で17年間212回続いた人気連載でした。2018年10月市川光太郎先生がご逝去され、連載は終了となりました。市川先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます(構成・ひよこクラブ編集部)。

※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。

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