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「産後パパ育休」の法改定で男性育休が進む!?家事や育児をしない「とるだけ育休」にならないためには【経済学者】

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育児や家事を分担する若い家族
maroke/gettyimages

改定「育児・介護休業法」が、2022年4月から23年4月にかけて段階的に施行されます。中でも男性の育休を後押しする「産後パパ育休」(出生時育児休業)が注目されています。その一方で、いわゆる「とるだけ育休」という、育休中に家事や育児をしない男性の存在も…。男性の育休取得のポイントを、自身も育休を経験し、結婚、出産、子育てなどを経済学から研究する、東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎先生に聞きました。

産後じゃ遅い。産前に夫婦で育休計画を立てよう

――男性の育休が広がりつつありますが、育休をとるだけで育児も家事もしない「とるだけ育休」の男性が少なからずいるのではないかともいわれています。このままでは女性への負担が増え、本末転倒になってしまわないでしょうか。

山口先生(以下敬称略) 男性がなんの準備もせず、なんの心構えもなく、いきなり育休に突入してしまうと、なにをやったらいいかわからずに終わるということが生じやすいのだろうと思います。
したがって子どもが生まれてくる前の段階で、自治体が行っている両親学級や「たまひよ」などの育児雑誌で情報を得て、どういうふうに育休を過ごすのか、まずは男性自身に考えてもらうのがいいと思います。
育休の取得計画書を会社に提出しなければならない人もいると思うのですが、計画を練る際に夫婦でシミュレートしながらやっていくといいのかなと思います。

――「とるだけ育休」にならないためには、赤ちゃんが生まれる前に夫婦で計画を立てておくといいということでしょうか。

山口 男性は産後すぐの段階から育児を始めないと、その後に入り込めるチャンスってなかなかないと思うのです。その意味でも今回の法改正でとりやすくなった育休を、男性は積極的にとってほしいですね。第一子の場合は母親も父親も子育ての初心者。下手でも一緒に学んで、難しい時期を乗り越えていくことで、夫婦の連帯意識も高まっていくはずです。
生まれてから1年、2年以上がたって、母親と子どもの関係性ができあがったあと、急に「俺も子育てやる」といっても、危なっかしくて任せられないのではないでしょうか。

男性が子育てをすることは少子化解消や経済成長にもつながる

――男性の中には、男女が家事・育児を分担するものだという考えの人もいれば、そうでない人もいます。育休に向かない人の傾向はありますでしょうか。

山口 私もそうだったのですが、そもそも男性全員が子ども好きというわけではないと思うのです。最初は「育児なんて向いていない」と感じるかもしれませんが、男性でも子育てをすることで脳内にオキシトシンが出て、子どもが「かわいい」と思えるようになるのですね。これは科学的な裏づけがあるので、取りあえず子どもを抱っこしてみてください、お世話をしてみてください。できれば1カ月くらいまとまった期間がいいのですが、できる範囲で育休をとってやってみてください。やれば変わります。
したがって、育休は全員とったほうがいい、とらなくていい男性はいないということになります。

――経済的な理由で育休をとらない選択をする男性もいるようです。

山口 経済的に事情がある場合でも、育児休業給付の制度がありますので、給付金を利用すれば実質的な経済的ダメージはかなり抑えられると思います。給付金は雇用保険の「育児休業給付事業」から払われていますので、会社が負担するわけではありません。お金のことも含め、会社から育休について説明があると思いますので、うまく制度を活用してほしいですね。

――「育休」というとどうしても「休む」というイメージが強いため、実際は育児で休む暇がないことが伝わりにくいのかなと思います。東京都は「育業(いくぎょう)」という愛称を打ち出しました。

山口 とてもユニークな試みですね。愛称そのものよりも、愛称を募集することによって多くの人が課題として意識したり、話題をつくったり、ニュースなどを通じて広く発信されていくという意味で、とてもいいことだと思います。

――そもそも、どうして国や自治体は男性の育休をこれほど後押ししているのでしょうか。

山口 日本は少子化の問題を抱えていますが、最近の研究では少子化の理由として「女性だけに子育て負担を押しつけているから」という話があります。子育て負担を男女でうまくシェアしていくことができれば、少子化の解消にもつながると考えられています。ほかにも、女性が社会でより活躍することで経済成長につながったり、子どもの発達にもいい影響を与えたりと、長期的にみていい方向につながっていくと思います。

――男性の育休はいいことづくしなのですね。

山口 育児って、すごく楽しいんですよね。やらないと損です。私も育児より楽しいものは、人生にないと思っています。ぜひ、男性も育休をとることをおすすめしたいです。

男性の育休制度がどうしてあるのか、その目的を知れば単なる休暇ではないことがわかります。大変なこともあるけれど、素晴らしい体験が待っている特別な休暇、それが育休。負担を押しつけあうのではなく、夫婦が協力しあって充実した育休にしたいですね。

お話・監修/山口慎太郎先生

取材・文/一乗梓、たまひよONLINE編集部

産後すぐの生活は、想像よりも数倍大変なもの。夫婦で育休中の家事・育児分担の計画を練っておいても、計画通りにいかないこがあるかもしれません。なにか問題が起きたときに「自分の大変さを察してほしい」ではなく、気軽に話し合える関係性をつくっておくことも大切だと感じました。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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