22世紀まで生きるあなたの子どもが今、身に付けるべき力とは?
2015年生まれの子どもたちの約 7割 は、22世紀まで存命だといわれています。科学技術や産業構造がどんどん変化していく現代の子どもたちにとって、本当に必要な力とは何でしょうか。ベネッセ教育総合研究所 渡邊直人の講演内容を紹介します。
今の小学生の65%は、これまでになかった新しい職業に就く!
現時点で国が公開しているデータを基に計算すると、2015年に生まれた子どもたちの最大約69.9%が、22世紀まで存命という結果になりした。親世代の未来は「21世紀」でしたが、子どもたちにとっての未来は「22世紀」が射程に入るのです。各種の未来予測の資料を基に100年先までの社会変動を眺めてみると、今の子どもたちが30~40才代になる2050年ころにはアジアの人口が頭打ちになってアフリカの時代へと移行し、ほぼ同時期に、人工知能が人間の能力を超える「シンギュラリティ(特異点)」が訪れるといわれています。
産業構造や労働環境のさまざまな変化に伴い、今後は仕事の概念も大きく変わってくるでしょう。米国デューク大学のキャシー・デビットソン教授は「現在の小学生の65%は、これまで存在しなかった職業に就くだろう」と述べています。また、英国オックスフォード大のマイケル・A・オズボーン准教授は「あと10~20年のうちになくなる職業は全米702職種のうち47%になる」と分析しています。
親時代の常識は通用しない! 多様化する進路選択ルート
こうした将来予測を受けて、日本ではどのような教育改革を行おうとしているのでしょうか。現在「戦後教育の総決算」が本格始動しようとしており、学力観や教え方、入試、教育制度自体を変えていこうという動きがあります。
まず、学校で使う教科書の内容や、先生の教え方の基準となる学習指導要領が2020年に改訂されます。子どもたちが主体的に参加して学ぶアクティブ・ラーニングの導入や、英語教育の充実、教科を横断する新科目の新設、プログラミング教育の必修化など、皆さんのお子さんが小学生になったときには大幅に授業内容が変わるはずです。
また、これまで日本の学校制度は、多くの人が小学校から中学校、そして高校、大学へと進む単一ルートが当たり前でした。しかし、近年は進路選択ルートが多様化しています。各自治体の判断で小中一貫の「義務教育学校」が設置され始めているほか、海外進学を視野に入れた「スーパーグローバルハイスクール」や「国際バカロレア認定校」、保護者の高校生時代には存在しなかった「総合学科」「単位制」「中高一貫」の制度を導入する高校はすでに全体の10%を占めます。保護者の経験を基にした進路観は通じなくなっているといえるでしょう。最新動向を把握するためにも、ぜひお住まいのエリアの教育ニュースをチェックしてみてください。
幼児期の「遊び込む」体験が、学びの力に大きく影響する!
では保護者として、幼児段階の今のうちから何をすればよいのでしょう。近年の研究結果によると、目標達成や他者との協働、情動抑制といった「社会情動的スキル」(学びに向かう力)が、とくに幼児期に伸ばすべき能力として重要なことがわかってきました。
社会情動的スキルは、生活環境の中で見つける力です。とくに幼児段階で意識すべきなのは、豊かな遊びや生活体験をすること。創意工夫したり、友だちと協力しあったり、困った人を助けたり、自分に自信を持つといった「人として重要な資質」は、多様な遊びの経験を通じて伸びることがわかっています。こうした遊びによって培われた社会情動的スキルは、小学生以降の学力にも大きく影響します。
ただ、そんな子どもたちを育てる立場の大人の意識には気になる点も見られます。OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本の大人は世界的にトップクラスの知的能力を持つにも関わらず、「新しいことを学ぶことが好きだ」と答える割合が著しく低いそうです。いろいろな体験を子どもにさせるには、まずは大人がワクワクして積極的に楽しもうとする姿勢が大切です。この機会に、ご夫婦でよく話しあってみてください。
この記事は、2016年9月に開催されたイベント「ママtomoパパtomoカレッジ」で行われたベネッセ教育総合研究所 研究員・渡邊直人の講演「パパと子ども講座 子どもが大人になる未来予想、求められる能力」の内容を抜粋してご紹介しました。
※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。