ワーママの人生に「リスクマネジメント」を応用しよう
近年ますます重要性が増すリスクマネジメント
リスクマネジメントの専門家である立教大学の指田朝久先生が、育児中のママに向けて「ワーキングマザー必修 予測される未来から考えるリスクマネジメント」の講演を行いました。子育てやビジネスに今すぐ役立つワークショップの模様をお伝えします!
一般的にリスクというと、災害や事故といった悪いイメージがあります。しかし国際標準規格(ISO)では、「目的に対する不確かさの影響」と定義されています。これは悪いとか良いという意味ではなく、「決まっていないことは全てリスク」という意味です。
リスクマネジメントとは、リスクに対する日常の予防策と、リスクが現実化して事件・事故が起こった場合の直後対応、そして復旧するまでの流れを意味します。リスクは何なのかを特定して分析し、評価して対応策を考える。それから実際にやってみて、うまくいくまでくり返す。これが主なリスクマネジメントのプロセスです。
会社法では、リスクは「組織目標の達成を阻害する要因」と定義され、全ての企業はリスクマネジメントをしなければいけないと定められています。新規事業や設備投資、金利変動、自然災害、法令違反といったリスクを洗い出して(特定)、リスクの頻度やリスク発生に伴う影響度を考え(分析)、優先順位をつけます(評価)。そしてリスクの優先順位の高いものから対策を行います。
そして、企業のリスク対策には主に次の4つがあります。
・回避......現在の状況から逃れるための方策を取る
・低減......事件や事故などの発生頻度を下げたり、発生した場合の損害の程度を下げる
・移転......所有権の移転や契約など、主に金銭に換算して企業の負う損害の限界を定める
・保有......リスクがあることを把握した上で、予防策は取らずにリスク発生時のみ対応
例えば「工場が火災になる」というリスクなら、「建物の不燃化」「火災保険をつける」「スプリンクラーの設置」「爆発危険のある製品の作成中止」「自衛消防隊の訓練」「警備員の常駐」といった対策を検討します。
仕事や育児、人間関係……適切なリスクマネジメントでスマートに生きよう
さて、このリスクマネジメントのプロセスは、自分の人生にも応用することができます。
先ほどお話したように、リスクは「目的に対する不確かさの影響」または「目標の達成を阻害する要因」のことです。まずは自身の目的や目標を決めて、それを阻害する要因をリスクとして書き出してみましょう。そして優先順位の高いリスクから「リスクが起きないようにする対策」と「リスクが起きた時の対策」をそれぞれ考え、実践に移していきます。
ある先輩ママさんに、リスク対策として次のことを書き出していただきました。
(目的)
子どもとの時間を確保しつつ、仕事もしっかりやる
(リスク)
残業が多くなり、平日に子どもとの時間が持てない
(リスクが起きないための対策)
・前倒しで仕事をすることを意識して、常に時間的に余裕のある状態で仕事するようにする
・上司と業務量の調整をする
(リスクが起きた後の対策)
・残業になった場合は夕飯を買ってくるなど、家事を効率化する
・夫が自分より早く迎えに行けそうな時はお迎えを代わってもらう
・週末にいつも以上に子どもとの時間を設ける
リスクマネジメントは、実は私たちの人生において身近で重要なものです。一つアドバイスさせていただくなら、特にリスクが起きた後の対策では、頼れる人には徹底的に頼るのがコツです。ご近所の方々やママ友など、ギブアンドテイクの関係で遠慮なく頼める人をたくさん作っておきましょう。ぜひ仲間と積極的にリスクマネジメントをしていただければと思います。
この記事では、2016年9月に開催されたイベント「ママtomoパパtomoカレッジ」で行われた立教大学大学院 特任教授・指田朝久先生の講演「ワーキングマザー必修 予測される未来から考えるリスクマネジメント」の内容を抜粋してご紹介しました。
※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。