子どもの力は「遊び」の中でこそ伸びる。子どもが夢中になるおもちゃとは?選ぶポイントは?【専門家】
忙しい日常では、つい子どもにスマホをおもちゃ代わりに与えてしまうことがあるかもしれません。しかしシンプルなおもちゃこそ、子どもが「遊び」に夢中になり、親も子どもの成長を見つけることができるのだそうです。子どもが夢中になれるおもちゃはどんなものか、子どもの成長発達とおもちゃを選ぶポイントなどについて、福岡おもちゃ美術館館長の石井今日子さんに話を聞きました。
子どもの興味を観察し、一緒に楽しめるおもちゃを
子どもが好きなアニメやゲームのキャラクターのおもちゃもたくさんありますが、そうでないシンプルなおもちゃのいいところは「子どもの遊びを主体にしているところ」と石井さんは言います。
「本当に子どもの遊びを大事にしたおもちゃは、キャラクターの絵がついていなくても十分楽しめます。子どもにおもちゃを与えるときには、その子が今ちょうど遊びたいことは何かを観察してみましょう。『引っ張ることにハマってる』『押すことが好き』『音の鳴るものに興味がある』など、子どもがやりたいことを基準におもちゃを選ぶと楽しいと思います。
あるいは、ママやパパが子どもと一緒に遊びたいな、と思うおもちゃを選ぶのもいいでしょう。ママやパパがインテリアに合わせて選んだ積み木やモビールなど、大人の気分が上がるもので一緒に遊んだり、一緒に見たりすることも十分に遊びです。
子どもを発達させるおもちゃ、能力を高めるおもちゃを選ばなきゃ、なんて思わなくて大丈夫。『一緒に遊ぼ!』と楽しむ気持ちで選んでいいと思いますよ。もちろん安全面には気をつけてください」(石井さん)
【年齢別】おもちゃの選び方のヒント
おもちゃを選ぶときのヒントとして、年齢や成長によって子どもがおもちゃでどんなふうに遊ぶようになるのかを石井さんに教えてもらいました。
【0才代】五感をたっぷり刺激するおもちゃを
0才代の赤ちゃんには、なめても安全なものや五感で感じられるものを選ぶといいのだそうです。
「私たち大人は、見たり触れたりして物を認識しますが、0才児の赤ちゃんは、手に取ったものを『これはなんだろう?』と口に入れて舌で認識します。このころは『かたいな』『ザラザラしているな」と感触を知り、ものを確かめる発達段階です。『なんでも口に入れて汚くないですか?』とよくママ・パパに質問されますが、むしろ好奇心が強い証拠。周囲の環境を安全に整えて、たっぷり『なめなめ』して遊ばせてあげましょう。また、見た目がカラフルで興味をそそるもの、耳で聞いて音が美しいもの、など五感で感じられるおもちゃがいいでしょう。
なんでも口に入れてしまう0才代の赤ちゃんのおもちゃを選ぶときに、いちばん大事なのは安全性です。
0才児向けに販売されているおもちゃは安全性の基準をクリアできているSTマークがついているものがいいでしょう。赤ちゃんが興味があるからといって、こまかい形のものやプラモデルのような小さいものを与えるのは誤飲の危険があるので避けましょう」石井さん
【1〜2才】見立て遊びが上手になる
1〜2才ころにつかまり立ち、あんよができるようになってくると、目で見て物事を理解することが少しずつできるようになってきます。
「このころから、自分で働きかけたり操作したりした結果、面白い動きをしたり変化するおもちゃを楽しめるようになってきます。たとえばボールを自分でつかんでポイッと投げると、コロコロ〜と転がって向こうにいるママが取って自分のほうへ送り返してくれる、といったアクションが起こることが楽しい時期です。
また、この時期には見立て遊びが上手になってきます。たとえば長い積み木をにんじんに見立て、トントン、と包丁で切るまねをして『はい(お料理が)できました〜』と出して見せる、といった遊びが始まる時期。親子でおもちゃを通してのやりとりを楽しむことで、親子の愛着関係や信頼関係が築かれます。ママやパパはぜひつきあって一緒に遊んであげてほしいと思います」(石井さん)
【3〜5才】おもちゃは友だちと一緒に遊ぶためのツールに
3〜5才くらいになると、保育園や幼稚園でお友だちと遊ぶ機会が増え、おもちゃの遊び方が変化します。
「自分1人と周囲の大人だけの関係ではなく、別のお友だちと一緒に遊ぶことで社会性が豊かになる時期です。
これくらいの年齢では、おもちゃをメインに遊ぶというよりは、友だちと一緒に遊ぶためのツールとしておもちゃを使うことが増えるように。たとえばごっこ遊びならママ、パパ、赤ちゃん、ペット役など役割分担をして、おもちゃのキッチンセットを使って遊ぶ、という具合です」(石井さん)
おすすめのおもちゃ2種類
シンプルだからこそ長くいろんな遊び方ができる、石井さんおすすめのおもちゃと、そのポイントを教えてもらいました。
「『できた!』喜びを子どもとママやパパが共有できて、ママやパパが目に見えて子どもの成長がわかるのもいいおもちゃを2種類紹介します。『数カ月前までおもちゃをなめてばっかりだったのに、こんなことができるようになったんだ』と、遊びの中で子どもの成長がわかり、ママやパパの喜びや自信にもつながると思います」(石井さん)
0才から長く使えるプルトイ
プルトイは、ひもがついていて引っ張って遊ぶおもちゃです。シンプルながら長くいろんな遊び方ができるのがいいところなのだとか。
「ねんねの時期の2〜3カ月の赤ちゃんのころなら、ベッドサイドで動かして見せてあげて、赤ちゃんがそれを目で追うだけでも楽しい遊びになります。おすわりをするころになると、ママやパパが赤ちゃんの後ろに座り、一緒にひもを持って手繰り寄せる遊びをすると、『自分の力でこっちに動いてきた!』と自分でものを動かす驚きや喜びを感じられる楽しさがあります。
はいはいをする時期には、親が引っ張って赤ちゃんが追いかける、追いかけっこも楽しいです。立って歩けるようになれば、子ども自身がおもちゃを引っ張り歩き回って遊べるようになります。
2才くらいになると、プルトイを連れて『いってきます』と1人旅に出るまねをする遊びも始まります。プルトイを引っ張りながらリビングを1周して『ただいま』と帰ってきたら『おかえり』と言って迎えてあげましょう。親子のコミュニケーションにも役立ちます」(石井さん)
玉入れ、玉転がし
上の写真の玉入れおもちゃは、シンプルな木の箱に木のボールを入れるもの。
「初めはボールをうまくつかめなくて、穴に入らずにコロコロ転がってしまったりします。ボールを握る・はなすを何度もトライして穴の中に落とすことができた喜びは、シンプルだからこそわかりやすく『できたね!』と大人も一緒に喜んであげられます。
2才くらいになると、もっとバリエーションに富んだ玉入れおもちゃで遊ぶことができます。よく見るものには、ペンギンの形をした入れ物に、上から卵のボールを入れるとくるくる回転して降りてきて、下にある穴からボールが出てくるようなもの。ほかには、交互になったスロープを車の形のコマが降りてくる玉転がしなどもあります。ボールやコマを置くと、何かアクションが起こって出口から出てくる、こういう動きのあるおもちゃは、シンプルですが何度も繰り返し遊べ、多くの子どもが必ずといっていいほどハマる時期があります」(石井さん)
お話・監修/石井今日子さん 写真提供/特定非営利活動法人芸術と遊び創造協会 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
子どもの成長にいいおもちゃを選ばなきゃ!と気負わず、子どもが楽しめるもので親も一緒に遊びながら、子どもとたっぷりスキンシップやコミュニケーションを取ってあげるといいのかもしれません。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
石井今日子さん(いしいきょうこ)
PROFILE
NPO法人芸術と遊び創造協会運営 福岡おもちゃ美術館(2022年オープン)館長。保育士・幼稚園教諭の経験を生かし、2008年東京おもちゃ美術館立ち上げ、赤ちゃん木育ひろば運営に携わる。おもちゃを活用した子育て支援事業「おもちゃの広場」「赤ちゃん木育寺子屋」開催。企業のコラボにより無印良品「木育広場」。日本財団との共同事業 難病児向けおもちゃセット「あそびのむし」など。Eテレ「まいにちスクスク」出演。
福岡おもちゃ美術館
2022年4月、福岡市内の大型ショッピングモールにオープン。日本の木のよさを伝える「木育」をテーマに、福岡県産材のヒノキやスギをふんだんに使った床やオリジナルの木育おもちゃなどで大人も子どももゆったりと遊ぶことができる。ボランティアスタッフ「おもちゃ学芸員」がおもちゃの遊び方を来館者に伝える。幅広い年代が交流する「市民参加型美術館」である。