新型コロナウイルス感染症の弊害。育児の孤立化やワクチン接種の遅れが。【小児科医】
新型コロナウイルス感染症の流行により、それまでの生活スタイルから変化せざるを得なかったことが多々あります。「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」連載の#25は、「新型コロナによって変わってしまったこと」について。日々の診察の中で心配していることを教えてくれました。
子どもたちにとって、素顔を知っている大人はママとパパだけになってる!?
新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)が登場後、診療の際は医師も患者さんもマスク着用が当たり前になっています。感染状況を見ていると今しばらくこの状態を続けることになりそうです。
乳児を除けば、子どもたちもマスクをつけて受診しますが、口の中やのどの奥の診察時にはマスクははずしてもらうので、医師は子どもたちの素顔を見ることができます。しかし子どもたちは医師の顔はマスク姿でしか見ることがありません。これが続くといったいどうなるのでしょう。
コロナ以前から受診していれば、ママ・パパとはお互い素顔を知っていますが、子どもたちはどうでしょうか。素顔を知っている大人はママとパパだけ?人類は、相手のしゃべる言葉や、こまかい表情や身ぶり手ぶりから相手の意図と組む能力を培ってきたのに、マスク越しやオンラインでのやり取りだけでは、表情を読み取る能力が劣ってしまうのではないか、と心配しています。
あいさつもできず、声もかけられず、 孤立化が進んでいる
新型コロナ流行後は、知らない人に気軽に声をかけるということができない世の中になってしまっています。これは小さな子どもがいる家庭にも言えること。
以前だったら、公園や買い物でよく顔を合わせるママ・パパ同士だったら、気軽に話しかけたりしていたと思いますが、それさえできなくなっています。
コロナ禍で乳幼児健診や予防接種で受診された方に、「お友だちはできましたか」と質問をしても「まだです」とか「それが、全然・・・」という返事を聞くことが増えました。
当地では数百家族が入居するような新築マンションがいくつも建っているのですが、遠方から入居してこられる方も多く、そういう方にはとくにその傾向が目立つようです。
「本当は声をかけたいけど、もし新型コロナをうつされたら、もしうつしてしまったら、と思うと声をかけられないんです」と話す方もいます。
1年間の育児休暇を取っているママも、この間の孤立感はとてもつらいと・・・。こんな人たちを救う手だてを見つけないとますます少子化が進んでしまいそうです。これはと思う人が見つかったらせめてSNSでつながれるようにしておいてはいかがでしょうか。
そうしておけば新型コロナの流行が落ち着いてきたら、一緒におしゃべりしたり、お出かけしたりもしやすくなるかもしれません。
コロナ流行で、子育て事情にも変化が。 予防接種は忘れないで
妊娠早期から地元にいれば、コロナ禍で縮小されているとはいえ母親・父親教室で顔見しりになっておくこともできますが、出産後に転居してきたような場合にはその機会もなく寂しい思いをされる方も多いようです。
知り合いもいないところよりは親元なら安心と思われるからか、出産後の里帰り期間を長めに取られる方もいるようです。しかし、長く里帰りをしたために大事な赤ちゃんのワクチン接種が遅れてしまっている方もチラホラ見うけられます。中には初回接種が生後3カ月を超えてしまい、ロタワクチンの接種機会を逃してしまった人もいました。
予防接種は住民票がある市町村が責任をもって行うことになっています。しかし、里帰りが長くなる場合に未接種のままにしておいてはいけません。里帰り先の自治体に相談すれば救済策はあります。生後2カ月から接種が始まるワクチンこそ、赤ちゃん・子どもの命にかかわるような感染症にかからないようにするための大事なものばかりです。接種開始時期が来たら1日も早く済ませましょう。
充実した育児をするためには受け身にならず仲間をつくり、ワクチン接種も積極的にして子どもたちを守ってください。
構成/たまひよONLINE編集部
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